スクールカースト、いじめ、中二病邪気眼妄想戦士、思春期特有なんちゃらかんちゃらエトセトラエトセトラ
それはそれで重要なテーマなんだけど、あくまでもディテールのひとつに過ぎないんじゃないかな。
これは「あるがままの世界と自分(現実)」と「あるべき世界と自分(理想)」の対立というか…
うまく言えないけど、ありもしない妄想って意味なら、昔から人間は天国とか極楽浄土とか黄金郷とか千年王国とか未来の共産主義ユートピアとか大東亜共栄圏とか、ありもしない「異世界」を夢見てたんだよね。
「そこ」に行くためなら死をも辞さないっつーか、むしろ「俺と同じ妄想を抱かないやつは異教徒or非国民だから死ね」くらいの勢いで。
さらに身近に目線を落とせば、そこらの弱小校の万年補欠の体育会系男子が「俺、甲子園に行くんだ」とか真顔で言ってたら、これもまた妄想だし、「俺、作家になる」「僕、宇宙飛行士!」「音楽で食っていくんだ」とかも妄想じゃん?
まー、人はそれを夢と言いますが。
そしてたいてい叶わないんですが。
だからみんな「向こう側」に行きたい。
嘘と苦しみだらけの現実から逃れて、夢の世界に行きたい。
だから、他の投稿者さんの「こんなにひどい中二病患者、高校にいない」とか、逆に「スクールカーストの実態をよく表現している」とか、「中二病だった人は傷つくから見ない方がいい」ってコメントは的外れってわけでもないけど、ちょっと狭いように思う。
誰だって一度くらい「向こう側」に行きたいと思ったことあるでしょ。
それは自分ちと違って幸せでアットホームなお隣のお家かもしれないし、それこそスクールカースト上位のグループのリア充ワールドかもしれないし、変な感じに美化されちゃった外国や過去かもしれず、とことん楽観的に考えた夢をかなえた未来の自分かもしれない。そして上でも書いたように天国、というか、死の世界かもしれない。
今ではないいつか、ここではないどこか、自分ではない何かになりたいと一度も思ったことのない者のみ、作中のW佐藤に石を投げなさいってことですよ。
まあ、仮にW佐藤の「妄想」が全部うまく行ったと考えようや。
メンズ佐藤くんは無事に高校デビューして幸運にも一軍にヘッドハンティングされてリア充高校生ライフを送る(※これだって立派なな「妄想」でしょ?)。ヒャッホー!
レディス佐藤ちゃんの場合は探してた「竜端子」は本物でマジの異世界に帰還して中央なんとか機関に認められ超クールでオサレな異能バトルライフを送る。ヒャッハー!
そんで2人に尋ねる。「幸せになれた? 夢はかなった?」
……うなずくとは到底思えねえな。
メンズ佐藤くんは慣れない一軍生活の中、本当の自分を出せないまま高校生活を送り、レディス佐藤ちゃんは自分の妄想と異世界の現実が一致しただけで他は何の代わり映えのしない殺伐とした生活を送る。
2人とも孤独のまま人生を送る。誰も自分の事をわかってくれないし、気づかってもくれないまま。
クライマックスでメンズ佐藤くん(魔竜院光牙)がレディス佐藤ちゃん(リサーチャー)に問いかける魂の叫びって、ずばりそれじゃん。「さびしいんだろが」って。
演劇の「ラ・マンチャの男」で、宿屋の下女アルドンザのことを、田舎の郷士アロンソ・キハーナが「正義の騎士ドン・キホーテ」を名乗って、「憧れの麗しき姫ドルシネア」として慕う。それでアルドンザの心は救われる。それと同じような感動を本作では味わいましたよ。
かたや16世紀末のスペインが舞台の演劇、かたや現代日本が舞台のライトノベル。
だけど、扱ってるテーマは同じなんじゃないんですかね。

AURA~魔竜院光牙最後の闘い~(ガガガ文庫): (小学館)
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©ROMEO TANAKA 2012 (P)小学館
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登録情報
再生時間 | 9 時間 15 分 |
---|---|
著者 | 田中 ロミオ |
ナレーター | 近衛 秀馬, 茜屋 日海夏, 中島 ヨシキ, 天海 由梨奈, 中井 美琴, 荻野 葉月, 植木 慎英, 内野 孝聡 |
配信日(Audible.co.jp) | 2019/12/20 |
出版社 | 小学館 |
プログラムタイプ | オーディオブック |
バージョン | 完全版 |
言語 | 日本語 |
ASIN | B081NBGGPK |
Standard Japanese | |
Amazon 売れ筋ランキング |
- 3,801位Audible オーディオブック (の売れ筋ランキングを見るAudible オーディオブック)
- 409位ティーン向け: ライトノベル(ラノベ) - 17,407位ライトノベル (本) |
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.1
星5つ中の4.1
66 件のグローバル評価
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年6月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
そんなにラノベを詳しくないのですが、ラノベというジャンルの系譜を調べると結構名前の挙がりがちな作品であるというそんな不純な動機からこの作品に興味を持ち「いまごろ」この作品を読みました。
作者が「人衰」の人だとか結構前から知っていたのですけど、いやでも1冊しか出てないじゃんとか(ラノベってのは人気があると結構続くものだという先入観)そんな理由などもあり最近まで読んでいなかったという感じでした。
最初の数ページをスルー、何かあるかもしれないがこういうの苦手、理解してからの方が読みやすいとの判断は今でも間違いではないと思っている。
で全部読んだ感想。
何で一冊しかないのか、というより何で一冊でやっちゃったのかの方に疑問が移る感じだったかもしれない。
その後に影響与えたんじゃねーかって思う様々な要素が、さらりと扱われていることに驚かさせていただいた。
ここでばらまかれた要素をもったいないと思って、その後の他の作者の小説ができている気すらさせてしまう、斬新さがあったことを感じさせた。
それは単純に作品発表の時系列のことだけではなくて、さらりと扱われて洗練されすぎていなさ…と悪口に聞こえてもらっては困るのだけど、新しいことをやった感が残る書き方に見えるという感じ。
凄い外形的な感想から書いてしまったが、まずそっちに感心しながら読んだので。
物語は、現実と空想のはざまと読んでいる最中様々な分岐でどっちに触れるのか分からない緊張感がたまらなかった。
終わらせる選択肢、諦める選択肢、自分を守る選択肢…大概こういうのを否定する選択肢を選ぶのが動力になったりするのだけど、この作品はまさにそのバッドエンド的選択肢を自然に選んでいく感じが納得でき、でも物語が続くところが面白かった。
惜しむらくはモブモブしい人物たちをもっと見たかったというところか。この世界観をもっと楽しみたいと思いながらも、エンディングを見て改めて読んでよかったと思いました。
ちなみに自分は、嫌いなキャラはいないけど取り立ててやはり大島さんのキャラは結構好きな感じの変人だったり。
いい作品はいい、そう思いました。
作者が「人衰」の人だとか結構前から知っていたのですけど、いやでも1冊しか出てないじゃんとか(ラノベってのは人気があると結構続くものだという先入観)そんな理由などもあり最近まで読んでいなかったという感じでした。
最初の数ページをスルー、何かあるかもしれないがこういうの苦手、理解してからの方が読みやすいとの判断は今でも間違いではないと思っている。
で全部読んだ感想。
何で一冊しかないのか、というより何で一冊でやっちゃったのかの方に疑問が移る感じだったかもしれない。
その後に影響与えたんじゃねーかって思う様々な要素が、さらりと扱われていることに驚かさせていただいた。
ここでばらまかれた要素をもったいないと思って、その後の他の作者の小説ができている気すらさせてしまう、斬新さがあったことを感じさせた。
それは単純に作品発表の時系列のことだけではなくて、さらりと扱われて洗練されすぎていなさ…と悪口に聞こえてもらっては困るのだけど、新しいことをやった感が残る書き方に見えるという感じ。
凄い外形的な感想から書いてしまったが、まずそっちに感心しながら読んだので。
物語は、現実と空想のはざまと読んでいる最中様々な分岐でどっちに触れるのか分からない緊張感がたまらなかった。
終わらせる選択肢、諦める選択肢、自分を守る選択肢…大概こういうのを否定する選択肢を選ぶのが動力になったりするのだけど、この作品はまさにそのバッドエンド的選択肢を自然に選んでいく感じが納得でき、でも物語が続くところが面白かった。
惜しむらくはモブモブしい人物たちをもっと見たかったというところか。この世界観をもっと楽しみたいと思いながらも、エンディングを見て改めて読んでよかったと思いました。
ちなみに自分は、嫌いなキャラはいないけど取り立ててやはり大島さんのキャラは結構好きな感じの変人だったり。
いい作品はいい、そう思いました。
VINEメンバー
Amazonで購入
ラノベというジャンルは
非リアルでのカタルシスやサクセスストーリーを楽しむ媒体なんだと思います。
異世界の美少女たちから急にモテたり、世界を救う為の熱い冒険談など…。
この作品も、非リアルなヒロインとの出会いで
主人公を取り巻く世界がガラリと変わる部分はラノベのお約束なんですが
なぜか逆に重いリアルを背負わされるハメに陥る展開が斬新ですね。
非リアルヒロインと出会わなければ
波風が立たない普通の高校生活を送れたはずの主人公。
世界を救う使命を与えられたわけでなく、傷付かないわけでもないのに
放り出してしまうことなくヒロインと自分の過去を背負って
リアルな着地点を模索し続ける姿は青春小説と言っても良いでしょう。
ラストのクライマックスはやや大仰にも見えましたが
主人公達のリアルから非リアル、そしてリアルへの再出発は
とても清々しく感じられました。
非リアルでのカタルシスやサクセスストーリーを楽しむ媒体なんだと思います。
異世界の美少女たちから急にモテたり、世界を救う為の熱い冒険談など…。
この作品も、非リアルなヒロインとの出会いで
主人公を取り巻く世界がガラリと変わる部分はラノベのお約束なんですが
なぜか逆に重いリアルを背負わされるハメに陥る展開が斬新ですね。
非リアルヒロインと出会わなければ
波風が立たない普通の高校生活を送れたはずの主人公。
世界を救う使命を与えられたわけでなく、傷付かないわけでもないのに
放り出してしまうことなくヒロインと自分の過去を背負って
リアルな着地点を模索し続ける姿は青春小説と言っても良いでしょう。
ラストのクライマックスはやや大仰にも見えましたが
主人公達のリアルから非リアル、そしてリアルへの再出発は
とても清々しく感じられました。
2018年8月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
うっかり捨ててしまったので買い直しました。
田中ロミオさんは好き嫌いがはっきり分かれる方が多い様ですが、僕は全く持って気にならずシリアスになったり笑えたりで、内容に関しては大満足です。「PC Angel」の元ネタのコラムもお気に入りでした。
星一つマイナスなのは題の通りで、帯無しは分かり切っていたのに「1円」につられて購入後、ちょっぴり後悔してしまっているからです。数百円をケチるものではないですね。
田中ロミオさんは好き嫌いがはっきり分かれる方が多い様ですが、僕は全く持って気にならずシリアスになったり笑えたりで、内容に関しては大満足です。「PC Angel」の元ネタのコラムもお気に入りでした。
星一つマイナスなのは題の通りで、帯無しは分かり切っていたのに「1円」につられて購入後、ちょっぴり後悔してしまっているからです。数百円をケチるものではないですね。
2012年10月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ラノベを読むのは初めてでしたが最後までノンストップで読むことができました。
よくよく考えると妙である現実に拒否反応を覚えるヒロイン他、妄想戦士達は非現実的といえるほど過剰に誇張されていたので「オタク」や作家?のメタファーだと解釈しました。
妄想戦士(現実を見ずに妄想に依存するタイプのオタク)はかっこよくなんてなく、更正して現実に適応するべきであるというのが作品のメッセージではないかと。しかしオタクに限らず人間が特定の世界に依存して性格が通常よりずれていくのはよくあることで普遍性があるので色んな人が共感できそうですね。
最終的には「オタクの妄想批判なんじゃないの?」とも思えるシナリオも妄想は人生を豊かにする素晴らしいものとして肯定されましたし、主人公のクラスに妄想戦士が多く集まる謎のネタばらしなどもあり読後感スッキリです。中盤から終盤にかけて鬱展開が来て最後の最後にすべてが解決するシナリオはカタルシスを最大限に味わえる構成であり、さすが田中ロミオは作家として熟練だ、と唸らされた。
よくよく考えると妙である現実に拒否反応を覚えるヒロイン他、妄想戦士達は非現実的といえるほど過剰に誇張されていたので「オタク」や作家?のメタファーだと解釈しました。
妄想戦士(現実を見ずに妄想に依存するタイプのオタク)はかっこよくなんてなく、更正して現実に適応するべきであるというのが作品のメッセージではないかと。しかしオタクに限らず人間が特定の世界に依存して性格が通常よりずれていくのはよくあることで普遍性があるので色んな人が共感できそうですね。
最終的には「オタクの妄想批判なんじゃないの?」とも思えるシナリオも妄想は人生を豊かにする素晴らしいものとして肯定されましたし、主人公のクラスに妄想戦士が多く集まる謎のネタばらしなどもあり読後感スッキリです。中盤から終盤にかけて鬱展開が来て最後の最後にすべてが解決するシナリオはカタルシスを最大限に味わえる構成であり、さすが田中ロミオは作家として熟練だ、と唸らされた。
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