本書のテーマは「衰退する日本の漁業」。
日本の漁獲量は近年急速に減少し、最盛期の4割以下にまで減っている。本書には、ホッケやニシンなど様々な魚介類の減少を示すデータが豊富にある。
どうしてこうなったかというと、日本が持続可能性を無視した乱獲を続けているからだ。
乱獲が続いている原因として私が重要であると感じたのは、以下の3点だ。
1.漁業問題にかぎらず「問題を先送りする体質」が日本社会の持病であること。問題があっても、改革が行われにくいのだ。
2.政治家、官僚、業界団体の「三すくみ構造」があること。具体的には「政治家は、官僚に強い。官僚は、業界団体に強い。業界団体は、政治家に強い」という構造だ。このため 誰かがリーダーシップを発揮しようとしても構図が変革の芽を摘むのだそうである(この力関係を逆手にとって改革をすすめることは、できないのだろうか?)
3.水産庁の都合で科学者の発言が封じられており、科学の独立性が守られていないこと。これは、研究機関の予算は水産庁が握っており、しかもトップは水産庁の天下りだからだそうである。著者は、科学機関を水産庁から独立させることの必要性を訴えているが、今までそうでなかったこと自体がおかしいと私は思った。
問題を解決するには、多くの日本人が問題を正しく認識し声をあげることが理想なのだろうが、日本のメディアは一次産業についてのネガティブなテーマを報道したがらないため、問題の深刻さを理解している人はおそらく少ない(かくいう私も、本書を読むまで知らなかった)。このため、本書の意義は大きい。
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