本書のタイトルには『世界史』とあるが、本書の実質的コンセプトは、一般に抱くような体系的歴史論ではなくて、帯に見えるような「蠱惑し、闘い、変容する 女性史」との表現が的を射るものと思料する。私は当初新刊予定のタイトルから、中世以降のヨーロッパに観られた古典的な『魔女』、“魔女狩り”や“魔女裁判”などの暗黒史の考察をイメージしていた。しかし読後の本書に対する私の理解を概略すると、主として19世紀後半以降の欧米(日本含む)に観られる、『魔女』伝説・信仰形態の文化・文芸的な変質変容、具体的にはカルト的信仰化、文芸作品や絵画・芸術的表現(ビジュアル化)に観る変容、音楽・ファッション化などの新しい表象など、近現代における中世的『魔女』の復興と変貌をポジティブに考察するものと言ってよい。かかる点では、通り一遍の『魔女』歴史論ではなくて、近現代の女性観・芸術・音楽・ファッション等に見える女性の原像に『魔女』(の変革的復興)性を敷衍しまたは見い出す考察と言えよう。
本書の構成・内容はこのページの上の「商品の説明」に詳しいので本稿では取り上げない。私個人の第一印象としては、前述のように『歴史』論のイメージの相違があり、19世紀の絵画や書籍等の文芸作品、あるいは70年代の「ウーマン・リブ」運動に観る『魔女』解釈論は格別、「パンク・ロック」やサブカル的ファッション(186〜198頁)、「ココ・シャネル」のファッション(226〜227頁)などに至ると、著者における『魔女』の定義が広範に過ぎる印象を受けるのも事実である。そもそも著者は本書において『魔女』自体の定義を明確にしていないように見えるが、右のような近現代の芸術・文化・音楽・ファッション等に観る女性像を中世的『魔女』の近現代的変貌・復興(ルネッサンス)と観るべき前提と捉えるならば、「ゴスロリ」(206〜208頁)、「マドンナ」(261〜262頁)、「レディー・ガガ」(262〜263頁)もまた、現代的『魔女』として評価することも強ち失当とは言えない。近現代に見える新しい女性観や女性主義的文芸・文化・音楽等の中心にある(創作する)抽象的主体を、中世的『魔女』の変貌・復興あるいはその歴史的系譜の顕れと捉えるのも面白い発想(歴史観)かもしれない。
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