この本では、2つのことが分かります
1:量子コンピュータは量子力学の、どんな特徴を使っているのか?(入門)
2:どのような課題を解決して、研究者は今の技術にまで到達したのか?(歴史)
すなわち、この本には量子コンピュータ開発という、極現代科学史が解説されていると言えるでしょう。
なにしろ、今年10月のことまで記されていますから!
個別解説は平易に徹しながら、工夫されています。
特に、もつれの例示として、全く同じ粒子という思考実験で通したところは、明確で分かりやすいものになっていて、今後の入門書でも使われていく予感がします。ただEPRの深遠さは伝わりにくいかもしれませんが。
また、論理回路のロジック説明図や、量子ビットの遷移図などは、単純なのに読み取りにくい感じがしました。
1994年にショアが、素因数分解アルゴリズムを発表したとき、著者の藤井先生はまだ小学生だったはずです。
そのころ私たち三流実験屋は、量子コンピュータが、アナログ実験とどこが違うのか?すら分からず、実現にはどれほどの道程なのか?すら知らぬのに、
「とりあえず、量子光学でもやってれば、大きく外しはしないだろう」
などと思っていました。
もし当時、この本のように、課題と開発指針とを的確に解説してくれる本があったなら、経営層を巻き込んで、納得した開発が進められたかもしれません。
その後の「死の谷」を越えられず、多くの研究が消えていきましたが、ついに実用に近い成果が出た今年となりました。
この本でも、以下の素朴な理系疑問は満たされません
1:量子コンピュータはどんなハード技術で動作しているのか?
2:入出力はどう行われ、どんなで精度で実現されているのか?
ただ、藤井先生の
「(Raussendorfの誤り訂正の論文を)理解したと言えるまで2年を要した」
というエピソードなどは、ある意味、一般理系に安心感を与えてくれます。
「そんな難しいことは深追いせずに、どこがスゴイか?をよくキャッチアップして、どう使うか?を考えるのがよい」
と励ましてくれているように感じます。
近い将来、21世紀の2大課題である、バイオ分子設計とAIのキラー技術として、量子コンピュータは君臨することになると期待されます。
我々がいま「原爆って、手回し計算機で設計したんだ!」と驚嘆するように、「1000原子の分子設計を、電気の計算機でやっていた時代があったんだ!」と言われる日が来るのでしょう。
そんな夢を見させてくれるよい本でした。
驚異の量子コンピュータ: 宇宙最強マシンへの挑戦 (岩波科学ライブラリー) (日本語) 単行本 – 2019/11/20
藤井 啓祐
(著)
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本の長さ161ページ
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言語日本語
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出版社岩波書店
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発売日2019/11/20
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ISBN-104000296892
-
ISBN-13978-4000296892
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ひと昔前まで実現不可能とされてきた量子コンピュータを取り巻く環境は短期間のうちに激変した。従来の古典コンピュータを超越しうる不思議なからくりとは何か。いかなる歴史を経て現在に至り、どんな未来が待ち受けているのか。気鋭の研究者として体感している興奮をもって、明快かつ科学的な正確さを期して解説する。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
藤井/啓祐
1983年大阪に生まれる。2002年大阪府立天王寺高等学校卒業。2006年京都大学工学部物理工学科卒業。2011年京都大学大学院工学研究科博士課程修了(原子核工学専攻)。博士(工学)。大阪大学特任研究員、京都大学特定助教、東京大学助教、京都大学特定准教授を経て、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1983年大阪に生まれる。2002年大阪府立天王寺高等学校卒業。2006年京都大学工学部物理工学科卒業。2011年京都大学大学院工学研究科博士課程修了(原子核工学専攻)。博士(工学)。大阪大学特任研究員、京都大学特定助教、東京大学助教、京都大学特定准教授を経て、大阪大学大学院基礎工学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2019/11/20)
- 発売日 : 2019/11/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 161ページ
- ISBN-10 : 4000296892
- ISBN-13 : 978-4000296892
-
Amazon 売れ筋ランキング:
- 73,085位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 29位量子物理学
- - 4,399位コンピュータ・IT (本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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2019年11月30日に日本でレビュー済み
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35人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年11月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
量子コンピュータについて話題になっていたので気になり、本書を買いました。
ネットで検索した次に買った本として最適でした。
量子コンピュータって何?と思ったらまずこれを読んでみることをオススメします。
量子コンピュータが発案された理由、量子力学でどうやって物事を計算するのか、
量子コンピュータの必要性&有用性、今研究されている量子コンピュータの方式、
量子コンピュータの研究開発の歴史、今の量子コンピュータの課題点、
現在から将来における量子コンピュータの恩恵 などについて
わかりやすく図や表とともにさっくり書かれていて、これを読んだ後に
「まさに”驚異”のコンピュータだ!」と興奮を与えてくれます。
個人的に著者さんのような研究者の方はなんというかクールで
興奮を表に出すようなイメージを持っていなかったのですが、
”…量子コンピュータは、物理法則で許された最強のコンピュータの地位を獲得しえたのである。”(p.103-104)
といった記述や
10章の”宇宙をハッキングする”(p.148)といった仰々しい題名から
著者の興奮具合を感じます。
世界を変えうる新しい技術に興味のある方は是非。
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といった記述や
10章の”宇宙をハッキングする”(p.148)といった仰々しい題名から
著者の興奮具合を感じます。
世界を変えうる新しい技術に興味のある方は是非。
2019年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
量子コンピューターの歴史について黎明期から最先端の話題まで網羅されています。
よく誤解されている重ね合わせ状態を利用した並列性や暗号化に利用される因数分解が現在の規模の量子コンピューターで解かれるといった話題についてフェアに議論されています。
量子謝り符号訂正が必要のないノイズの多い量子コンピューターでも実行可能なNISQアルゴリズムについても紹介されています。
面白かったのが量子推薦アルゴリズムと呼ばれるアルゴリズムが古典アルゴリズムよりも高速であることを証明しようと研究していたら、逆に新しい古典最速のアルゴリズムを発明してしまったエウィン・タンさん(17歳)のエピソードです。
量子アルゴリズムの研究をすることで逆に古典アルゴリズムの研究も加速される点が興味深く、量子コンピューターの実機を持たない日本の企業であっても量子アルゴリズムの研究をする意義があるのではないかと思いました。
量子コンピューターを全く知らない理系の人が読むには数式が少ない点(ほぼない)、図が少し分かりにくい点が少し理解を遅らせる点なのかなぁと思いました。
そういう人には「量子コンピュータ入門(古澤明、宮野 健次郎著)」などを読むのが良いと思います。
よく誤解されている重ね合わせ状態を利用した並列性や暗号化に利用される因数分解が現在の規模の量子コンピューターで解かれるといった話題についてフェアに議論されています。
量子謝り符号訂正が必要のないノイズの多い量子コンピューターでも実行可能なNISQアルゴリズムについても紹介されています。
面白かったのが量子推薦アルゴリズムと呼ばれるアルゴリズムが古典アルゴリズムよりも高速であることを証明しようと研究していたら、逆に新しい古典最速のアルゴリズムを発明してしまったエウィン・タンさん(17歳)のエピソードです。
量子アルゴリズムの研究をすることで逆に古典アルゴリズムの研究も加速される点が興味深く、量子コンピューターの実機を持たない日本の企業であっても量子アルゴリズムの研究をする意義があるのではないかと思いました。
量子コンピューターを全く知らない理系の人が読むには数式が少ない点(ほぼない)、図が少し分かりにくい点が少し理解を遅らせる点なのかなぁと思いました。
そういう人には「量子コンピュータ入門(古澤明、宮野 健次郎著)」などを読むのが良いと思います。
2020年5月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
友人から勧められたのとレビューが良かったので購入してみました。
一応、大学で量子力学を専攻していて量子デバイスなるものを作っていました。ただ相当昔でいろいろ忘れており、量子コンピューターは門外漢です。
前半は量子力学の基礎の話です。この分野に興味があってブルーバックス等を読んだ人であれば、良くわかるエリアだと思います。ただ、私も量子「コンピューター」に沿った価値観で量子力学をなぞった事がなかったので、いろいろ発見・勉強すべき事がありました。
ただ、やさしく説明しようとしているという意図はわかるのですが、その説明が十分ではなく、初心者には普通に読んでも理解できない所が多いと思います。
「波動関数」も「スピン」という言葉も使わずに「確率振幅」の話や「ボルン則」、「エンタングルメント」の説明が出てきます。ここは元々知らないと「理屈はわからないけどそうなんだ」以上の理解はできないと思いました。
他にも「この 超伝導物質で作った向かい合った電極で、薄い絶縁体を挟む(ジョセフソン接合と呼ば れる)とクーパー対が一方の電極からもう一方へと飛び移る(トンネルする)ことができるようになる」という一文があります。
これ以上の説明はないのですが、トンネリングの説明だったり量子力学の確率の染みだし的な話を知らないまま読んでも、この文の意味することが見えないのではないかと思いました。何故、敢えて「薄い絶縁体」と書いてある意図もかもわからないはずです。
量子力学には得たいの知れない面白さを良い意味で「煽る」本というのはたくさんあるのですが、この本の記述は、内容が理解できる情報を十分に盛ってないので、今まで知らなかった人が何かを理解できる(もしくは理解できない部分がある事を理解する)ような説明では無いと思いました。
後半は量子コンピューターの話になります。
こちらは、説明全体がさらっとしている感じがしました。
ノイズとの戦い、この5年程で、急速に増える量子ビット数。将来の夢へと続きます。
全般的に、背景知識が無い人には理解が必要なための情報が書かれてないため、そもそも載っている情報では文章が理解できるわけがない所が多く見受けられます。
背景知識がある人には簡単化しすぎた不正確な説明になっており、ターゲット読者がぼやけているように感じました
一応、大学で量子力学を専攻していて量子デバイスなるものを作っていました。ただ相当昔でいろいろ忘れており、量子コンピューターは門外漢です。
前半は量子力学の基礎の話です。この分野に興味があってブルーバックス等を読んだ人であれば、良くわかるエリアだと思います。ただ、私も量子「コンピューター」に沿った価値観で量子力学をなぞった事がなかったので、いろいろ発見・勉強すべき事がありました。
ただ、やさしく説明しようとしているという意図はわかるのですが、その説明が十分ではなく、初心者には普通に読んでも理解できない所が多いと思います。
「波動関数」も「スピン」という言葉も使わずに「確率振幅」の話や「ボルン則」、「エンタングルメント」の説明が出てきます。ここは元々知らないと「理屈はわからないけどそうなんだ」以上の理解はできないと思いました。
他にも「この 超伝導物質で作った向かい合った電極で、薄い絶縁体を挟む(ジョセフソン接合と呼ば れる)とクーパー対が一方の電極からもう一方へと飛び移る(トンネルする)ことができるようになる」という一文があります。
これ以上の説明はないのですが、トンネリングの説明だったり量子力学の確率の染みだし的な話を知らないまま読んでも、この文の意味することが見えないのではないかと思いました。何故、敢えて「薄い絶縁体」と書いてある意図もかもわからないはずです。
量子力学には得たいの知れない面白さを良い意味で「煽る」本というのはたくさんあるのですが、この本の記述は、内容が理解できる情報を十分に盛ってないので、今まで知らなかった人が何かを理解できる(もしくは理解できない部分がある事を理解する)ような説明では無いと思いました。
後半は量子コンピューターの話になります。
こちらは、説明全体がさらっとしている感じがしました。
ノイズとの戦い、この5年程で、急速に増える量子ビット数。将来の夢へと続きます。
全般的に、背景知識が無い人には理解が必要なための情報が書かれてないため、そもそも載っている情報では文章が理解できるわけがない所が多く見受けられます。
背景知識がある人には簡単化しすぎた不正確な説明になっており、ターゲット読者がぼやけているように感じました
2020年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
メカニズムを知りたいところをたとえ話で説明されているので、かえってわかりにくい結果になっている。数式を使わず、たとえ話をせず、量子のしくみが説明できたらとても品質のよい入門書になっていたと思う。数式を使うなら思い切って使えばよい。AIならそのような書物は溢れている。量子計算の計算過程を独自の概念と関数で記述してみた方が量子コンピュータの実在性を示せて良質な刺激を与えられたと思う。新書風でありながら新書ではなく、専門書でもなく中途半端な読み物であった。
、
、
2020年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
量子コンピュータの専門家が研究の現状を幅広く紹介する本です。
しかし読んでいてフラストレーションが溜まったし、結局肝心なところがよく分からなかったという印象でした。
その1つの理由は、文章表現が冗長でこなれていないことだと思います。読点の打ち方がおかしかったり、文末が無駄に長かったりして、読みにくく感じました。たとえるなら、下手な翻訳の翻訳書を読んでいるような感覚がしました。
2つめの理由は、枝葉の話題は事細かに説明されているのに、「そもそも○○とは何なのか」という肝心な部分の説明が不十分なことです。量子力学などの基本から説明しようと試みてはいるのですが、専門用語が説明なしに使われていたりして、素人には理解しにくいです。すでに量子力学や量子コンピュータに詳しい人には良いかもしれませんが、そうでない人には不親切かもしれません。
「量子コンピュータって何なの?」と興味を持った人が読むのにはふさわしくない本でしょう。
しかし読んでいてフラストレーションが溜まったし、結局肝心なところがよく分からなかったという印象でした。
その1つの理由は、文章表現が冗長でこなれていないことだと思います。読点の打ち方がおかしかったり、文末が無駄に長かったりして、読みにくく感じました。たとえるなら、下手な翻訳の翻訳書を読んでいるような感覚がしました。
2つめの理由は、枝葉の話題は事細かに説明されているのに、「そもそも○○とは何なのか」という肝心な部分の説明が不十分なことです。量子力学などの基本から説明しようと試みてはいるのですが、専門用語が説明なしに使われていたりして、素人には理解しにくいです。すでに量子力学や量子コンピュータに詳しい人には良いかもしれませんが、そうでない人には不親切かもしれません。
「量子コンピュータって何なの?」と興味を持った人が読むのにはふさわしくない本でしょう。