わたしは、多くの短編集なそうであるように、シンプルに考えて、 『頼むから静かにしてくれ』 というタイトルの作品を含む短編集かと思った。 ところが (古い言い回しではあるが) あに図らんや、殆どの作品でも、主に物語の最後に、あるいは途中で、 「男」 が 「女」 に向かって・・・・・ 『頼むから静かにしてくれ!!』 という哀願的フレイズが (言葉にはしないものの) ため息のように出てしまう作品を、広義の解釈で、集めている。 そのため、作品によっては含めるに当たっての多少の無理は仕方がないのでしょう。
また、現実的には、この特徴的なタイトルの前に副詞句が付くのが自然で、たとえば 《うるせえな、頼むから静かにしてくれ》、 《もう分かったよ、頼むから・・・・》、 《くどいな、頼むから・・・・》、 あるいは女性が1人称で語る作品の場合 《男はつぶやいた、「頼むから静かにしてくれ」、と・・・・》 のようなこともあるのでしょうが。
作品の表現法はもちろんのこと、我が国の小説ではこれまでも、そして、これからも見ることが無いであろうと思われる独自の視点・描点がある。 ほとんど誰も真似することも、参考にすることもできない、カーヴァー独自の文学と言うしかないのでしょう。
このカーヴァーの処女作品集 (?) を読んだだけでも、彼は生来的に、超真面目な性格で、かなりユーモアのある人だと想像できる。 少なくとも、根っからのペシミストでは絶対にあり得ない・・・・、と断言してもよい。 この作品集を読んだ後、思わず微笑みが出てしまう・・・・・・笑うような主題の作品はひとつもないのですが。
[追記]
わたしは、この文章を書いてしばらくしてアマゾンから 『頼むから静かにしてくれ Ⅱ』 を購入し、その中に本のタイトルど同名の小説があることを理解しました。 従って、上記のことは正確には不正確(誤り)ということになります。ただ、 『頼むから静かにしてくれ Ⅱ』 でも同様ですが、男がいて、そしてそこに女がいる場面では、殆ど同じセリフが、無形の幽体のように出てきます 『頼むから静かにしてくれ』 と・・・・・・・・。 何れにせよ、ほんとうに良かった、と思う今日この頃です。
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