話題の書。
興味深く読ませていただきました。
この書で述べていることは。
・正義・大義を掲げるな、正義感は捨てよ
・志を高く持つな、利のみを求めよ
・事なかれ主義に生きよ
・強い者とは争うな、こびへつらえ
・悪事が行われても見過ごせ
・人が不幸になっても知らん顔しろ、関わるな
・面従腹背に生きよ
・正論を言うな
・寄らば大樹の陰、長いものに巻かれろ
・怒りと恨みは腹に据えても保身に生きよ
と誤読されかねない「志を低くして自己の保身に徹して生きていくべし」という
小ずるくも卑怯な生き方を推奨しています。
もっとも著者の本心は、保身と功利に走るずる賢くも卑怯な生き方を、
決して推奨しているわけではないことは本書を読めばわかります。
著者は、むしろ人情があって、大義を貫こうとする猪突猛進タイプなのでしょう。
ただ、著者がこうした保身と功利のために争わない処世術を重視するようになったのは、
政治という海千山千が生息する世界に身を置き、失敗を重ね、
手痛い経験を重ねたことが一番の理由でしょう。
著者は、政治という特殊な世界で、自らの正義感が仇となったことを悔やみ、
「正直者は馬鹿を見る」を骨身に染みて体験したことの反動として、
正義感や大義を捨てて、あざとくも保身に生きることこそが大人であると喝破?し、
その教訓を踏まえて本書を著したのでしょう。
しかし、こうしたことを理解しなければ「危険な書」です。
やはり正義感や大義、公益に与する志は必要だからです。
これはいつの時代でもそう。
公益のために身を挺し、勇気と義侠心に富んだ多くの人達により、
倫理やモラルも守られてきていることも事実。
人心の荒廃を食い留めるストッパーとなって社会に益しています。
「正直者は馬鹿を見る」はミクロの視点からの見解で、マクロでは公益に与している。
しかし馬鹿正直にこれを実現するのではなく、
ヒネリを加えた現代の戦術として「アホとは戦うな」と言いたいのでしょう。
が、このことがうまく伝わらない可能性もあります。
タイトルのインパクトだけが注目されはしないかと。
著者の思いは錯綜しています。
「保身のためにも魑魅魍魎を叩くことをしないでうまく付き合え」とも言いたいのでしょうが、
「朱に交われば赤くなる」のたとえの通り、残念ながら似た者になることが多かったりします。
知らないうちに自分も魑魅魍魎のアホになっている。
パーソナリティ障害になっている。
本書で述べている処世術を上辺だけ真似れば、
志の低い、利を見て走る、それこそ「アホ」と同類になってしまいます。
「アホとは戦うな」といいながら、副題には「アホになることのススメ」という文字が隠されていることに、
著者自身が気づいているのかどうか。
けれども、この書が共感を呼んでロングセラーとなるのも、日本のデフレ経済が長引き、
成長路線が見いだせず、退路が乏しい時代になったこととも関係がありそうです。
失敗したら、次の路や世界が無い。
だから大義や正義を捨て捨てて卑怯になってでも保身に走るしかない。
これが景気も良く、退路も多くあって、隠居もできる余裕のある時代なら、
社会正義を掲げて悪を懲らしめようとする生き様も多くなるでしょう。
悪人と真正面から戦って破れ散っても、別の生きる道と世界を見いだすのも可能です。
これができる時代や社会なら、田村氏が提唱する
「保身と功利に生きよ」「志を低くして長いものに巻かれろ」といった「アホとは戦うな」処世術は不要。
そもそも保身と安全だけに走る生きる様は、決して美しいものでもなく、
気持ちの良いものではありません。
成長路線も退路も見いだせない守りに徹したデフレの時代だからこそ、
政界という妖怪の多い世界における処世術が注目され、共感・共鳴もされるのでしょう。
世界的にデフレなので、守りの指南書である「孫子の兵法」に頼らざるを得なくもなる。
もっとも「保身と功利のための争わない処世術」という
あからさまに志が低い小手先の生き方よりも、
「マインドフルネス」「いまここ」といった有り様のほうがおすすめです。
心は健全になりますし、腹に一物を据えたストレスフルな生き方をしなくてすみます。
憎しみや怒りを持たず、敵を作らない生き方もできます。
「マインドフルネス」「いまここ」への橋渡しとして、本書の存在意義もあるかと思います。
本書は「著者が『アホ』と表現するパーソナリティ障害者が幅を利かせる環境や、
人間関係で失敗したり、敵を作ると、もはや今の環境で生きていくことができない(退路がない)」
といったサバイバルな状況に置かれている人が、手っ取り早く安全に生きていくための
処世術になり得ると思います。
それにしても「現実とはこういうものだ」とわかりつつも、
ここまで身を落として持ち崩すことさえ必要であるとするのは、
どこか寂しいものを感じさせましょうか。
「卑怯な生き方のススメ」とも誤読されかねない本書がベストセラーということに、
いささか寒気を憶えますが、しかし青臭いことは言っていられないくらいに、
目先の利に走らざるを得ない閉塞感が広く行き渡っているのかもしれません。
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頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法 単行本 – 2014/7/8
田村耕太郎
(著)
購入を強化する
苦手なヤツほど徹底的に利用せよ!
目標がみるみる叶う、最強の「人の動かし方」
仕事に人間関係のストレスはつきものだ。
ぶつかり合いや、言い合いといった直接的な諍いだけでなく、
暗黙の敵意などを感じることもある。
「アイツさえいなければ……」そう思ったこともあるだろう。
しかし、こうした人間関係の怒りや悩みは、仕事で成果を出すためには全くの無駄。
本書の方法を実践することで、ストレスや時間のムダがどんどん減り、成果に集中できる。
それだけでなく、自分のために協力してくれる最高の味方が増えていく。
自分をコントロールし、他者との関わりを変えるだけで、
みるみる成果が上がっていくのだ。
本書の内容は、多くが自らの「失敗」にもとづいて書かれている。
証券マン時代、取引先の心を動かすことができず2年間成績がゼロであったこと、
政治家時代の酒席や権力闘争の中での失敗……。
そうした経験から生み出した方法は、
愚直でありながらしたたか、格好悪く見えて、効果はてきめん、そんな実践法である。
――目次――
【第1章】 アホと戦うのは人生の無駄
●他人とのいざこざで人生を浪費していた自分
●無駄な戦いを繰り広げる人の特徴
●厄介な無駄なプライドの捨て方
●蒸し返して傷を大きくするな
【第2章】 臆病者のための 戦略的コミュニケーションのススメ
●臆病なコオロギの強さ
●嫌な相手にこそやられたフリ
●メンツより実利
●「生意気は元気な証」だなんて思うな
●耐えて耐えて、耐え抜いた人が勝つ
●消えない怒りの解きほぐし方
●カッときたら幽体離脱
●仕事に敵という発想はいらない
●きまずいときこそ、無理にでも話しかける
●アップサイドのある人だけに絡め
●それでも一度はアホと戦え!
【第3章】 どんな強者でも 味方にする『人たらし』の技術
●人生で一番大切な能力
●相手の気持ちを見抜くためのちょっとしたコツ
●人を意のままに動かす技術
●腰の低い人ほどデキる人が多いのはなぜ?
●困っていなくても困った顔をせよ
●淡々とこなす者が最後には勝つ
●2年間売上ゼロの私が、全社で1位になれた理由
●常に楽天的であれ
●皮肉な「ものの見方」を鍛えよ
●偉くなっても偉ぶらない『偉さ』
【第4章】 権力と評価の密接な関係
●上司があなたを見てくれないのはなぜか?
●仕事で評価される人・されない人
●不本意な人事異動の正しい耐え方
●無駄な会議を建設的にする方法
●喧嘩が下手な日本人
●日本企業は権力闘争が好き?
●力にすり寄るのは汚いことか
●権力を握る人の条件
●飲み会を有意義にする方法
●不機嫌な職場で、息苦しいあなたへのヒント
【第5章】 他人の目を気にするな
●人生は、あなたが主役であるべきだ
●人に好かれたい願望
●張り合わず、自分のために利用せよ!
●苦手な相手に「うん」と言わせる説得術
●突き抜けたプレゼンはテクニックより「本気度」
●自然と自信がつく、スーツの着こなしのコツ
●心がポッキリ折れたときの自信の取り戻し方
●他人を恨むな
【最終章】 アホとではなく自分と戦え!
●ネットを見る暇があったら自分と向き合い
●デキる人間に囲まれた環境に飛び込め!
●自分の人生に満足できるかが、すべて
●リスクだらけの人生をどう生きるか?
●有限な人生を活かすために、私がやっていること
●あなたの「目的」はどこにある?
目標がみるみる叶う、最強の「人の動かし方」
仕事に人間関係のストレスはつきものだ。
ぶつかり合いや、言い合いといった直接的な諍いだけでなく、
暗黙の敵意などを感じることもある。
「アイツさえいなければ……」そう思ったこともあるだろう。
しかし、こうした人間関係の怒りや悩みは、仕事で成果を出すためには全くの無駄。
本書の方法を実践することで、ストレスや時間のムダがどんどん減り、成果に集中できる。
それだけでなく、自分のために協力してくれる最高の味方が増えていく。
自分をコントロールし、他者との関わりを変えるだけで、
みるみる成果が上がっていくのだ。
本書の内容は、多くが自らの「失敗」にもとづいて書かれている。
証券マン時代、取引先の心を動かすことができず2年間成績がゼロであったこと、
政治家時代の酒席や権力闘争の中での失敗……。
そうした経験から生み出した方法は、
愚直でありながらしたたか、格好悪く見えて、効果はてきめん、そんな実践法である。
――目次――
【第1章】 アホと戦うのは人生の無駄
●他人とのいざこざで人生を浪費していた自分
●無駄な戦いを繰り広げる人の特徴
●厄介な無駄なプライドの捨て方
●蒸し返して傷を大きくするな
【第2章】 臆病者のための 戦略的コミュニケーションのススメ
●臆病なコオロギの強さ
●嫌な相手にこそやられたフリ
●メンツより実利
●「生意気は元気な証」だなんて思うな
●耐えて耐えて、耐え抜いた人が勝つ
●消えない怒りの解きほぐし方
●カッときたら幽体離脱
●仕事に敵という発想はいらない
●きまずいときこそ、無理にでも話しかける
●アップサイドのある人だけに絡め
●それでも一度はアホと戦え!
【第3章】 どんな強者でも 味方にする『人たらし』の技術
●人生で一番大切な能力
●相手の気持ちを見抜くためのちょっとしたコツ
●人を意のままに動かす技術
●腰の低い人ほどデキる人が多いのはなぜ?
●困っていなくても困った顔をせよ
●淡々とこなす者が最後には勝つ
●2年間売上ゼロの私が、全社で1位になれた理由
●常に楽天的であれ
●皮肉な「ものの見方」を鍛えよ
●偉くなっても偉ぶらない『偉さ』
【第4章】 権力と評価の密接な関係
●上司があなたを見てくれないのはなぜか?
●仕事で評価される人・されない人
●不本意な人事異動の正しい耐え方
●無駄な会議を建設的にする方法
●喧嘩が下手な日本人
●日本企業は権力闘争が好き?
●力にすり寄るのは汚いことか
●権力を握る人の条件
●飲み会を有意義にする方法
●不機嫌な職場で、息苦しいあなたへのヒント
【第5章】 他人の目を気にするな
●人生は、あなたが主役であるべきだ
●人に好かれたい願望
●張り合わず、自分のために利用せよ!
●苦手な相手に「うん」と言わせる説得術
●突き抜けたプレゼンはテクニックより「本気度」
●自然と自信がつく、スーツの着こなしのコツ
●心がポッキリ折れたときの自信の取り戻し方
●他人を恨むな
【最終章】 アホとではなく自分と戦え!
●ネットを見る暇があったら自分と向き合い
●デキる人間に囲まれた環境に飛び込め!
●自分の人生に満足できるかが、すべて
●リスクだらけの人生をどう生きるか?
●有限な人生を活かすために、私がやっていること
●あなたの「目的」はどこにある?
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2014/7/8
- 寸法18.8 x 12.8 x 1.3 cm
- ISBN-104022511982
- ISBN-13978-4022511980
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
苦手なヤツほど、徹底的に利用せよ。(1)相手の欲望を見抜き(2)腰を低くして、助けを求め(3)味方にする!目標がみるみる叶う最強の「人の動かし方」。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
田村/耕太郎
日本戦略情報支援機構代表取締役、国立シンガポール大学リー・クワンユー公共政策大学院兼任教授。前参議院議員(鳥取県選出、2期)。第1次安倍政権で、内閣府大臣政務官(経済財政・金融・地方分権担当)をつとめる。元参議院国土交通委員長。前大阪日日新聞代表取締役社長。エール大学、ハーバード大学、ランド研究所でも研究員を歴任。早稲田大学、慶應義塾大学大学院(在学中にフランス高等経営大学院に単位交換留学)、デューク大学法律大学院、エール大学経済大学院を各修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
日本戦略情報支援機構代表取締役、国立シンガポール大学リー・クワンユー公共政策大学院兼任教授。前参議院議員(鳥取県選出、2期)。第1次安倍政権で、内閣府大臣政務官(経済財政・金融・地方分権担当)をつとめる。元参議院国土交通委員長。前大阪日日新聞代表取締役社長。エール大学、ハーバード大学、ランド研究所でも研究員を歴任。早稲田大学、慶應義塾大学大学院(在学中にフランス高等経営大学院に単位交換留学)、デューク大学法律大学院、エール大学経済大学院を各修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2014/7/8)
- 発売日 : 2014/7/8
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 224ページ
- ISBN-10 : 4022511982
- ISBN-13 : 978-4022511980
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 1.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 8,284位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 46位ビジネスライフ (本)
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2018年9月13日に日本でレビュー済み
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他の方がおっしゃる通りでした。アホと戦うのはムダな浪費なのは分かります。いかにそのように持っていくかということへのケーススタディが少なすぎます。人間関係についてもそう。努力しておまえらえらくなってものが言える地位を築けよ。アホにならないために死にものぐるいで努力しろよという上から目線。出版社のせいか?著者殿のせいか?書店にはビジネスマンが飛びつきそうなタイトルの本が多すぎます。自分の選球眼を鍛える上では役立ちました。