その記述は駆け足ではあるが、録音技術史を概観できる良書と言っていいと思う。ただ、いくつか気になる点はある。
p.98、PCM方式(パルス符号変調方式)の発明は1938年のアレック・H・リーヴスによるとしているが、ネット上では米国ウェスタン・エレクトリック社のP・M・レイニーが1926年に発明したとする異説が見られる。また、ハリー・ナイキストが標本化定理の予想を発表したのは1928年ではなかったか。この点、リーヴス発明説には疑問が残る。
同じくp.98。PCMを「誰もがハイファイに用いることは思ってもみなかったのだ。」として、いきなりNHK技研の林謙二による開発エピソードが始まっているが、1953年の喜安善市によるPCM方式での磁気テープへの音声記録の特許にも言及して良かったのではないか。
p.109、カラヤンの「任意の楽節から音楽が聴けるようにしてほしいとの要望」に応えて実装されたのは、「現在のCDプレーヤーに付けられている、早送り、早戻しのボタン」ではなく、現在のCDプレーヤーからは消えてしまったインデックス・サーチ機能だったはずだ。
以上、ざっと見た限りで気になる点がいくつか散見された。この一冊は貴重な一冊だが、この一冊ですべてが分かる一冊ではないので、録音技術の歴史に興味のある向きは、この一冊で満足することなく、さらにいろいろな文献を渉猟してほしい。その意味で本書は、歴史探訪の入門書としては悪くないと思う。
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