音と文明というと、音楽業界の話かと思ってしまうが、さにあらず、離散的(西洋近代音楽)ではない本来の連続的・非定常的な音楽が文明において根源的なものと捉えているが故の表題であることが読み進むうちにわかる。Webサイト「芸能山城組」や放送大学院教材「音楽・情報・脳」などで概要はつかめるものの、「何故、どうして?」と感ずる箇所の解明は、600ページ余りの本書の各内容を関連づけて熟読しなければ、了解は出来ないと思われる。当初、生物の遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)に書かれた<本来の活性>が、「自己解体プログラム」を発動することによって輪廻転生の働きを示すことについて、西欧人には理解できないということが理解できなかった。ーーーしかし、彼等が輪廻転生を信じないことは、遺骨を集団の墓に集積(埋葬)して、最後の審判の時に復活するのを待つという風習を想いだして納得が行った。
そろばん名人の暗算時のMRIによる脳内活性化状況において、離散系(デジタル)の言語野に対する連続系(アナログ)としての非言語野(イメージ脳)の優位性については、(著者が指摘する通り)ギリシア数学の究極において、幾何学が代数学を包摂する地位に至ったことと対応する。連続的ということは微積分可能ということであり、これは異次元間の往来を可能とし、最近のフラクタル幾何学では次元の境界をシームレスにするものでさえある。ゲーデルの「不完全性定理」は、離散系としての自然数系を基盤とするデカルト的論理の虚妄性を示したものであり、連続系としての実数系(幾何学)を基盤とすることには異論はないはずではないか。その他、随所にちりばめられた著者の洞察の深さに目からうろこが落ちるように教えられるところが多い。畏敬の念を抱くとともに、著者の思想・哲学がさらに普及されんことを願う。
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音と文明―音の環境学ことはじめ ― 単行本 – 2003/10/28
現代人が生きる都市の音環境は,現世人類が発祥した熱帯雨林と大きく異なる.自分には聞こえない音にこそ,脳への重要な働きがあるのだ.最先端科学が教えるところと,アフリカ,バリ島などで得た驚くべき音響工学的データにより,現在の音環境からの脱出が,文明を左右する重要課題であることを論証する.生涯をかけた渾身の労作.
- 本の長さ600ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2003/10/28
- ISBN-104000223674
- ISBN-13978-4000223676
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
「音の環境学」という新しい学問分野の創設を宣言した書。最先端科学技術を駆使して熱帯雨林の音やガムラン音楽が脳に与える活性を調べることにより、音響学の常識を打破し、アナログ世界の持つ本質的重要性を明らかにする。
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2003/10/28)
- 発売日 : 2003/10/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 600ページ
- ISBN-10 : 4000223674
- ISBN-13 : 978-4000223676
- Amazon 売れ筋ランキング: - 524,140位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 2,275位科学読み物 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年12月20日に日本でレビュー済み
576ページという大変読み応えのある本である。
著書は財団法人国際科学振興財団理事・主席研究員。文明科学研究所所長。情報環境学を提唱する。山城祥二の名で芸能山城組を主催(著者プロフィールより抜粋)と多彩な方である。
音と脳の関係、計測した結果、特に熱帯雨林の音、自然のざわめきは、現代の私達が住んでいる街よりもずっと騒がしい。しかし何故心地よく、リラックスができるのだろうということも科学的に証明をしている。
人には聴こえない高周波の音が常に一定に出て、人間の脳に安定をさせているそうだ。
それが、脳にどのようにリラックスをさせる影響を与えているか、かなり専門的に書かれている。
著書はそれにとどまらず、言語、音楽、非言語脳からのメッセージなどにも詳しく書かれている。興味深かったのは、12平均律で音律がなりたっている現代西洋音楽、特に絶対音感の教育についての危機感も述べている。
自分自身が絶対音感を持っており、便利と思ったことは数少なく、逆に音に関しての自由度が低くなり不便と感じていたので、非常に納得のいく説明がされていた。一言で言えば、音を聴く時、絶対音感のある人とない人とは聴き方も違うし、脳の内部も違うそうだ。
この本を読むと、音とは一体何か?と改めて考えさせられる本である。
著書は財団法人国際科学振興財団理事・主席研究員。文明科学研究所所長。情報環境学を提唱する。山城祥二の名で芸能山城組を主催(著者プロフィールより抜粋)と多彩な方である。
音と脳の関係、計測した結果、特に熱帯雨林の音、自然のざわめきは、現代の私達が住んでいる街よりもずっと騒がしい。しかし何故心地よく、リラックスができるのだろうということも科学的に証明をしている。
人には聴こえない高周波の音が常に一定に出て、人間の脳に安定をさせているそうだ。
それが、脳にどのようにリラックスをさせる影響を与えているか、かなり専門的に書かれている。
著書はそれにとどまらず、言語、音楽、非言語脳からのメッセージなどにも詳しく書かれている。興味深かったのは、12平均律で音律がなりたっている現代西洋音楽、特に絶対音感の教育についての危機感も述べている。
自分自身が絶対音感を持っており、便利と思ったことは数少なく、逆に音に関しての自由度が低くなり不便と感じていたので、非常に納得のいく説明がされていた。一言で言えば、音を聴く時、絶対音感のある人とない人とは聴き方も違うし、脳の内部も違うそうだ。
この本を読むと、音とは一体何か?と改めて考えさせられる本である。
2006年8月3日に日本でレビュー済み
全600ページ。この書には、大橋氏の多方面にわたる知識、深淵な実感が散りばめられているため、完全に理解できていないところもあるとは思うが、恐れながらレビューを書かせていただく。
メディア社会の現代、視覚的な情報が世を占め、音に対しての軽視が否めない。だが、音というものは果たしてそのようなものなのだろうか。ましてや、聞こえないほど周波数が高い音は無視するに足るのだろうか。音波は、エネルギーひとつの姿である。周波数が高いと言うことはすなわち、そのエネルギーの強度が高いことを意味する。生体に与える影響が少ないと考えるほうが愚かであることは明白だ。
なぜこんなことに私たちは気づいてこなかったのか。そして現代の私たちの音環境は、私たちが適合できるものから逸脱してはいないか。それを客観的に判定する方法すらもたない私たちに対して筆者は、脳生理学・分子生物学の立場から、言語学・音楽学の立場から、あるいは哲学的な考察から、あるいはまた直感的な世界から訴えてくる。
この本を読み終わったとき、私は目に見える「光の世界」だけにとらわれていた自分を恥じた。
メディア社会の現代、視覚的な情報が世を占め、音に対しての軽視が否めない。だが、音というものは果たしてそのようなものなのだろうか。ましてや、聞こえないほど周波数が高い音は無視するに足るのだろうか。音波は、エネルギーひとつの姿である。周波数が高いと言うことはすなわち、そのエネルギーの強度が高いことを意味する。生体に与える影響が少ないと考えるほうが愚かであることは明白だ。
なぜこんなことに私たちは気づいてこなかったのか。そして現代の私たちの音環境は、私たちが適合できるものから逸脱してはいないか。それを客観的に判定する方法すらもたない私たちに対して筆者は、脳生理学・分子生物学の立場から、言語学・音楽学の立場から、あるいは哲学的な考察から、あるいはまた直感的な世界から訴えてくる。
この本を読み終わったとき、私は目に見える「光の世界」だけにとらわれていた自分を恥じた。