本書に書かれていることは、極端な事例ではない。6年程前に引退するまで、韓国を代表する財閥企業との取引に、30年近くかかわって来た経験と合致する。「韓国の10大企業で、始めて役員に抜擢される平均年齢は46.9歳、役員から退いた年齢は54.2歳だった。」と著者は言う。私が現実に見て来た通りだ。ある方など、40歳で役員になり、程なくして常務に昇格したが、50歳ソコソコで退任となった。日本の大企業よりも出世競争のペースは、10年以上早い=退職も10年位早い。日本の大企業では、常務まで行かずとも60歳前後で退職すれば、普通に暮らす分には老後は安泰だが、韓国ではそうもいかないようだ。私が日本人で、日本の企業に勤めている幸運を感じたものだ。
本書に書かれているように、韓国の「無限競争社会」は1997年のアジア経済危機後に誕生した金大中政権が、IMFの資金援助を受けるために、強力に新自由主義的な政策を推進したことに端を発するものだ。それ以前の韓国企業は、長幼の序を重んずる傾向が強かった。その頃は若輩の私は、年長の韓国企業幹部との対応に苦労したものだ。当時の日本企業幹部は欧米には行きたがるが、韓国は若手に押し付ける傾向があった。
「無限競争社会」の例を本書は、嫌と言う程列挙して行くのだが、経済の現実はどうだろうか。本書では触れていないが、韓国の一人当たりGDPは、日本に追いつきつつある。液晶パネル、有機ELパネル、半導体メモリー(DRAM)も、日本のメーカーは韓国メーカーの後塵を拝し脱落してしまった。もちろん、日本メーカーの技術者を韓国メーカーが引き抜いたことも事実だし、韓国のハイテク製品の素材や製造設備が日本製であることも忘れてはならない。素材や製造設備は、先輩から後輩へ知識・経験が受け継がれ蓄積されやすい日本企業に向いているからだろう。
本書が示すように、韓国の「無限競争社会」は、幸せで優しい社会ではない。新自由主義的の軌道修正を図ろうとする文在寅政権の取り組みも、奏功しているとは言えない。だが私には、日本の社会が韓国よりも良いとは言い切れない。基本的に新自由主義を取りながら、ヘマを重ねて徹底しきれないので、結果としてなんとかなっているのが、今の日本だと思う。英語の民間試験導入の顛末など良い例だろう。
韓国 行き過ぎた資本主義 「無限競争社会」の苦悩 (講談社現代新書) (日本語) 新書 – 2019/11/13
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商品の説明
内容紹介
政府の過剰に新自由主義的な政策により、すべての世代が競争に駆り立てられている「超格差社会」韓国。その現状を徹底ルポ!
第一章 過酷な受験競争と大峙洞キッズ
第二章 厳しさを増す若者就職事情
第三章 職場でも家庭でも崖っぷちの中年世代
第四章 いくつになっても引退できない老人たち
第五章 分断を深める韓国社会
◎子供
小学5年で高校1年の数学を先行学習、
1日に2、3軒の塾を回る。
幸福指数は、OECDの中で最下位クラス。
◎青年
文系の就職率56%。
厳しい経済状況のもと、
人生の全てをあきらめ「N放世代」と呼ばれる。
◎中年
子供の教育費とリストラで、
中年破綻のリスクに晒される。
平均退職年齢は男53歳、女48歳。
◎高齢者
社会保障が脆弱で、老人貧困率45%以上。
平均引退年齢の73歳まで、
退職後、20年も非正規で働き続ける。
政権が政策を誤れば、これは世界中のどこの国でも起こりうる。
新自由主義に向かってひた走る、日本の近未来の姿かもしれない!
内容(「BOOK」データベースより)
これは、近未来の日本の姿かもしれない。
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