本書は2011年に出版されており、同年に起こった東日本大震災を念頭に書かれた本である。しかし、筆者が提唱する「環状島モデル」(とトラウマを巡る人のありよう)はトラウマを引き起こすようなすべての出来事に当てはまることであろう。
ブックレットなのでおよそ60ページの短いものなので、読みやすい。よくまとめられているが、中身がない訳ではなく、大切なポイントはきちんと押さえられているように思う。
だから、東日本大震災だけではなく、震災(あるいはトラウマに関連する出来事)に興味のある方には是非お勧めしたい本だと思う。
さらに、被災者・支援者のことだけでなく、環状島の形成に果たす知の役割ということも論じられていた興味深かった。知の役割として、著者は9つの役割を挙げているが、1番目に挙げられているのが、「海しか見えないところに環状島を浮かび上がらせるきっかけをもたらす」です。なので、知の役割を担おうとする者は、目が良いこと、対象と距離が取れること(島の上を飛べれば理想的ですね。「飛んでいる人」というのは宮地先生のモデルにはありませんが)、その一方で、地を這うことができることなどが求められるのかな、などと思いを巡らせました。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
震災トラウマと復興ストレス (岩波ブックレット) 単行本(ソフトカバー) – 2011/8/11
未曽有の災害が刻んだ心の傷(トラウマ)は、時とともに思わぬストレスや人間関係のトラブルとして表れる。なぜ生き延びた被災者が罪の意識に苦しみ、支援者が燃え尽き、遠くにいる人までが無力感にとらわれるのか。震災のトラウマが及ぼす複雑な影響を理解し、向き合い、支え合うための一冊。
- ISBN-104002708152
- ISBN-13978-4002708157
- 出版社岩波書店
- 発売日2011/8/11
- 言語日本語
- 本の長さ64ページ
この商品を見た後に買っているのは?
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
未曽有の災害が刻んだ心の傷(トラウマ)は、時とともに思わぬストレスや人間関係のトラブルとして表れる。なぜしばしば生き延びた被災者が罪の意識に苦しみ、支援者が燃え尽き、遠くにいる人までが無力感にとらわれるのか。震災のトラウマが及ぼす複雑な影響を理解し、向き合い、支え合うための一冊。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
宮地/尚子
一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻・教授。精神科医師。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。1989年から1992年、ハーバード大学医学部社会医学教室および法学部人権講座に客員研究員として留学、1993年より近畿大学医学部衛生学教室勤務を経て、2001年より現職。専門は文化精神医学、医療人類学、ジェンダーとセクシュアリティ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻・教授。精神科医師。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。1989年から1992年、ハーバード大学医学部社会医学教室および法学部人権講座に客員研究員として留学、1993年より近畿大学医学部衛生学教室勤務を経て、2001年より現職。専門は文化精神医学、医療人類学、ジェンダーとセクシュアリティ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1分以内にKindleで 震災トラウマと復興ストレス (岩波ブックレット) をお読みいただけます。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2011/8/11)
- 発売日 : 2011/8/11
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 64ページ
- ISBN-10 : 4002708152
- ISBN-13 : 978-4002708157
- Amazon 売れ筋ランキング: - 521,984位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.4
星5つ中の4.4
16 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年1月9日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
ベスト1000レビュアー
Amazonで購入
初めに、私自身は東日本大震災の被災者ではないことを記しておきたい。今は首都圏にいるが、かつては全く違う地域に住んでいて、10年周期くらいで震度5や震度6のプレート境界地震を経験してきた人間だ。しかし、大きく違うことは、大地震の経験は豊富でも、被災者の立場に立ったことがない、ということだ。今回の東日本大震災では、神奈川も揺れた。それも、これまで経験してきた大きな地震の経験が役立たないほど、揺れは繰り返し、長すぎるほど長かった。そして、そのあとの報道で、想像もつかない事態が進行していたことを知ったのだ。
東日本大震災のあと、様々な雑誌や本が出版された。しかしそのどれにも私は手をつけなかった。しかし、もうすぐあの日から半年になろうというこの時期、この冊子を知り、購入した。
この冊子は、「はじめに」に書かれているとおり、被災者の方々向けではなく、外部から支援やボランティアをしている人たち、また、支援をする立場にはいないが外部に位置する人々に向けて書かれた冊子だった。被災者の方々がどんな立場にいて、時間経過と共にまだまだこれからどんな思いをされるのか。支援者と被災者との関係(立場の違いによる行き違いも含む)、被災者から遠い位置にいる人々について。そのそれぞれが、今回の大震災をどう受けとめ、どう理解していけばいいのか、その道しるべのひとつがここにある気がした。
内容的には具体例はあまり多くない。「環状島」という宮地先生のモデルを使って、それぞれの方々の距離や位置関係が説明され、精神医学的な反応が用語と共に説明されている。とても理解しやすかった。
いずれ、首都圏の私たちも、大震災に遭遇するときが来るだろう。そのとき、私自身はどう対応できるだろうか。それを考えさせられた。
東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
東日本大震災のあと、様々な雑誌や本が出版された。しかしそのどれにも私は手をつけなかった。しかし、もうすぐあの日から半年になろうというこの時期、この冊子を知り、購入した。
この冊子は、「はじめに」に書かれているとおり、被災者の方々向けではなく、外部から支援やボランティアをしている人たち、また、支援をする立場にはいないが外部に位置する人々に向けて書かれた冊子だった。被災者の方々がどんな立場にいて、時間経過と共にまだまだこれからどんな思いをされるのか。支援者と被災者との関係(立場の違いによる行き違いも含む)、被災者から遠い位置にいる人々について。そのそれぞれが、今回の大震災をどう受けとめ、どう理解していけばいいのか、その道しるべのひとつがここにある気がした。
内容的には具体例はあまり多くない。「環状島」という宮地先生のモデルを使って、それぞれの方々の距離や位置関係が説明され、精神医学的な反応が用語と共に説明されている。とても理解しやすかった。
いずれ、首都圏の私たちも、大震災に遭遇するときが来るだろう。そのとき、私自身はどう対応できるだろうか。それを考えさせられた。
東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。
2011年10月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
震災トラウマと復興のストレスを
「環状島(ドーナツ型の円形の島、内海があり外海で囲まれている島)」
のメタファーを使いわかりやすく説明されている。
環状島は変化していく。
しかし、環状島の内海の水位を上げない、内斜面と外斜面を小さくしない、
外界の水位を上げない・下げないことが大切。
そのためには必要なことが記されている。
これからもずっと、災害に遭われた方を思い、こころ離れることなく、
役に立てることを探し、行動に移したい。
「環状島(ドーナツ型の円形の島、内海があり外海で囲まれている島)」
のメタファーを使いわかりやすく説明されている。
環状島は変化していく。
しかし、環状島の内海の水位を上げない、内斜面と外斜面を小さくしない、
外界の水位を上げない・下げないことが大切。
そのためには必要なことが記されている。
これからもずっと、災害に遭われた方を思い、こころ離れることなく、
役に立てることを探し、行動に移したい。
2012年2月21日に日本でレビュー済み
精神科医師が、《環状島》というみずからのメタファーを再構築し東日本大震災と向き合った好著。
ロジカルでありながらそこに著者の息づかいが感じられるのは、一人の日本人として震災の傷跡をご本人も受けているからだろう。冷静な筆致のなかで、最後の最後に希望をふともらしているのがいい。
『今後、被災地のなかから、どのような文学、詩やアートが生まれてくるのか楽しみです。宗教やスピリチュアルな領域においては、東北は豊かな民族文化を持っていました。口承伝承の再評価、祭りや儀礼の復活再生、新たなタイプの祭りや儀礼の創造は、〈内海〉に沈んだ犠牲者たちの声を蘇らせ、後世にまで伝えることでしょう』
まったく同感です。
ロジカルでありながらそこに著者の息づかいが感じられるのは、一人の日本人として震災の傷跡をご本人も受けているからだろう。冷静な筆致のなかで、最後の最後に希望をふともらしているのがいい。
『今後、被災地のなかから、どのような文学、詩やアートが生まれてくるのか楽しみです。宗教やスピリチュアルな領域においては、東北は豊かな民族文化を持っていました。口承伝承の再評価、祭りや儀礼の復活再生、新たなタイプの祭りや儀礼の創造は、〈内海〉に沈んだ犠牲者たちの声を蘇らせ、後世にまで伝えることでしょう』
まったく同感です。