映画「風立ちぬ」を見て、若い頃(1975年版だったと思う)に本書を読んだ記憶があったので、改めて文庫版を購入しました。若い時には、技術的な知識を得ることに興味がありましたが、今回、堀越二郎氏の文章を念入りに読んで、同氏が技術者として卓越していたのみならず、深くしかも広く物を考える大変に優れた人物であったことが良く分かりました。一芸に秀でた人というものは、専門のことだけではなく、社会的、倫理的にも人の上を行く考え方ができ、未来に対する見通しも確かであることが分かりました。
一例をあげましょう。同氏は、「人は生産コストの削減や大量生産性に気を奪われがちだが、航空機の重量を 1Kg 減らすということは、1機の生産に要する人工費30時間分に相当する。(従って 1Kg の重量軽減に同等の設計人工費を掛けてもよい。) 私は独自の方法に基づいてこのことを計算した」という意味のことを書いています。早く言えば安かろう悪かろうの考えではいけない、ということですが、計算したところに独自性があります。1970年頃米国の国務長官、ロバート・マクナマラ氏が、ベトナム戦争の遂行にあたり、”Cost effectiveness"という考えに基づいて、戦費と戦果の釣り合いを考えながら、数学を用いて最適な戦費を決定した、ということがありました。当時の日本の経済界においても、経営理論の最先端をいくものとして、もてはやされました。堀越氏は、何とこれの40年近くも前に同じことを実施していたのです。(堀越氏の執筆は1952年頃のことで、マクナマラ氏は未だ影も形もありませんでした。) 更に、堀越氏は、自分の技術的な工夫を特許にすることにも消極的で、「隠すよりも公表して、更にその上を行くように皆が努力する方が、結局は世の中全体が進歩する、と考えていた」と書いています。
四分の三世紀以上を経過したわが日本国において、自分の,あるいは自国の利益しか考えない人々(国のリーダーたる政治家さえも) が多い中で、本書を注意深く読み、経世の書とされますように、お薦め申し上げます。
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零戦 (文庫版航空戦史シリーズ (1)) 文庫 – 1982/2/1
古書
- 本の長さ607ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日ソノラマ
- 発売日1982/2/1
- ISBN-104257170018
- ISBN-13978-4257170013
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登録情報
- 出版社 : 朝日ソノラマ (1982/2/1)
- 発売日 : 1982/2/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 607ページ
- ISBN-10 : 4257170018
- ISBN-13 : 978-4257170013
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,520,440位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
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2009年6月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本は零戦というタイトルがついているが、実際はすべての航空機を輸入に頼っていた黎明期から如何にして世界的レベルの国産航空機の開発と生産を実現したか、最終的に日本の航空機技術、産業がどのようなものであったかが記されている。現在国内で流通している零戦に関する書籍に見られる情報の多くは、実際はこの本を基にしているのではないかと思われるところも多々ある。零戦に関する他の書籍では零戦の軽量化はあたかも防弾や急降下速度とのトレードオフによって実現されたかのよう書かれる事もあると思うが、実際は、時期割れのリスクのあるジュラルミンESDを含めて全金属翼の繰り返し変動負荷に対する強度、耐久性に関する研究、フラッター限界速度の推定法、等の日本独自の研究開発がなければあれだけの軽量化は実現できなかったことがわかる。また操縦性についても単に低翼面過重の軽量機であったから良かったというだけでなく、昇降舵の剛性を意図的に落とす効き調整方、風洞実験による空力や機体安定性の改良、独自の翼形状についての研究等の賜物であり、これら日本独自の研究開発の成果をまったく知らず、二流の模造品しか作れない国とタカをくくっていた諸外国が謎の戦闘機として驚き恐れ、日本がそのようなものを作れるはずがないとして日本人の能力を否定するために零戦が他の外国機のコピーであることを証明しようと努力したのも無理のないことだと思う。最後に、零戦と同時期の外国機を比較した文献をしばしば目にするが、本書で三菱が海軍関係者に提出したとされる「外国の製造者であれば数字に表れる性能のみで満足し、数字に表れない運動性を犠牲にするであろう」云々という内容を含んだ設計方針を熟読理解することがなければまったく実情を理解せず机上の空論のような結論に至る可能性が大きいと思う。その意味でも必読の書だと思う。