最後に翻訳について一言。次の文章を比べて下さい。「もとをただせば失業労働者が彼らの限界生産力に見合わない報酬の受け取りを拒んでいるために起こったという結論」(間宮訳)の同じ箇所は「基本的には、失業している人々が彼らの限界生産力に相応する報酬を受け取るのを拒否したことによるものでなければならないという・・結論」(塩野谷祐一訳)となっていて、反対の意味になっています。原著では、「・・・a reward which corresponds to their marginal productivity.」。原著を傍らに置くべき、と思いました。
なお、上記の「一般理論」におけるケインズ自身の混乱や誤りを整理する論文を、その後、ケインズは自身が編集長を務める、イギリスの「Economic Journal」誌にたびたび寄稿していった。その集大成は、1939年に同誌に寄稿された短い本の分量に相当する長文の論文「The Alternative Theory of Employment,Interest and Money」として発表された。同論文は「一般理論」を補完するものであり、両者を併せて読んでいただければ、「一般理論」の理解はクリアになるであろう。