史実における最澄・空海が本当に「世界を変えよう」としていたのかはよくわからないが、彼らが当時の南都仏教(奈良仏教)に物足りなさを感じていたことは確かである。当時の南都仏教は貴族のための宗教で、お世辞にも一切衆生を救済しようとするものではなかった。
最澄は、一切衆生は救われるという法華一乗説を中心とする天台宗を確立した点で、確かに「改革者」ではあった。しかし、一切衆生を救済する具体的な方法論を全く確立できなかった。
この漫画「阿吽」には、日々の食事に事欠く人々、そのために盗みを働く人々、売春をせざるをえない人々など、貧困な政治と経済の犠牲者ともいうべき悲しい庶民が登場する。彼等のために漫画の中で最澄がしていることといえば、12年も山に籠って山歩きしたり、ひたすら経典を読んだり、瞑想でトリップしたり、「それでも救います!」と吠えることくらいである笑。これでどうやって世界を変えるのか、庶民を救えるのか、さっぱりわからない笑。「阿吽」の著者もわからないだろうから、話が迷走している。とにかく天才と持ち上げてはいるが。
史実の最澄もそんな感じで、あまり庶民に寄り添っている感じがしない。もともと仏教に世直しなどできないから、不幸で無学な庶民のために仏教ができることといえば、せいぜい、死後の不安を取り除いてあげること、生まれ変わったら幸せになれることを信じさせてあげることくらいだろうか。これは、最澄の時代よりもずっとあとになって、鎌倉仏教が登場してから行われるようになった。鎌倉仏教の開祖たちは、一切衆生救済のための自分なりの方法論をみつけたのだ。しかしそれは最澄の業績という感じはしない。最澄は生前密教にかぶれたが、これがかえってよくなかった。天台密教は「魔術」化して、人を呪い殺す道具としても使われた。朝廷に無理難題をいう「強訴」なども繰り返された。こうして比叡山がとことん堕落したあとに、鎌倉仏教が生まれたのだ。もちろん、鎌倉仏教は、天台という仏教の総合大学が存在しなければ、生まれてこなかった。その意味では最澄は偉大といえる。しかし救世主として偉大だったというわけではなく、いわば学校創立者として偉大だったというほうが適切か。
史実における最澄は、この漫画に描かれている純粋な求道者ではなかった。一切衆生の救済という高遠な理想を抱いて仏教者のキャリアをスタートしたが、あまりにも秀才型で理知的すぎ、経典の整理分析に多くの労力を費やしたが、肝心の庶民は全然ついてこれない。それよりも天台宗という「会社」を国から公認してもらう政治的な活動に精力を奪われ、いつのまにか当初の高遠な理想はぼやけた。全然タイプが違うが、行基のような生き方こそ本来の意味では救世主っぽいといえよう。天才である必要などないのである。
阿・吽 (1) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) コミック – 2014/10/10
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おかざき 真里
(著)
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本の長さ1ページ
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言語日本語
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出版社小学館
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発売日2014/10/10
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ISBN-10409186712X
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ISBN-13978-4091867124
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2019年8月14日に日本でレビュー済み
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Amazonで購入
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役に立った
2018年11月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
話が面白そうなので買ってみたのですが、非常に読みづらい漫画でした。
前のコマから時間が経っていることや、場面が変わったことがわかりづらい。最初の母との別れも意味もなく情緒的だし、その後、母が意味深にしどけなく横たわっているコマが何度も出てくるのですが、何を意味しているのかさっぱりわからない。もうちょっと絵で説明してほしい。
描きたいテーマを勢いだけで描いたように感じられたのですが、この方、ベテランの漫画家さんなんですよね?
もうちょっと読みやすい漫画に描いてほしかった。途中で読むのが面倒になってやめてしまいました。
前のコマから時間が経っていることや、場面が変わったことがわかりづらい。最初の母との別れも意味もなく情緒的だし、その後、母が意味深にしどけなく横たわっているコマが何度も出てくるのですが、何を意味しているのかさっぱりわからない。もうちょっと絵で説明してほしい。
描きたいテーマを勢いだけで描いたように感じられたのですが、この方、ベテランの漫画家さんなんですよね?
もうちょっと読みやすい漫画に描いてほしかった。途中で読むのが面倒になってやめてしまいました。
2019年6月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2巻くらいまで無料で読ませて頂き、その後全巻購入致しました。
続きが気になったのももちろんですが、作画の美麗さに引き込まれました。
伝教大師 最澄と弘法大師 空海の歴史的偉人お二人を主軸に物語はすすみます。
天台のお膝元、比叡山は長らく住まいしておりました近隣。地名に身近さを感じます。
密教の総本山、高野山にはまだ行ったことはありませんが、読み進める内にぜひ一度は行ってみたい場所となりました。
歴史の勉強になるのはもちろん、地理的な要素、大乗仏教、中国文化にも触れることができます。
歴史的に日本の仏教密教に多大な功績を残した二人の偉人に、血肉を通わせて描ききる作者の力量に感服致しました。
間違いなく名作だと思います。
ちなみに私は"&"も何度も読み返すほど大好きです^_^
続きが気になったのももちろんですが、作画の美麗さに引き込まれました。
伝教大師 最澄と弘法大師 空海の歴史的偉人お二人を主軸に物語はすすみます。
天台のお膝元、比叡山は長らく住まいしておりました近隣。地名に身近さを感じます。
密教の総本山、高野山にはまだ行ったことはありませんが、読み進める内にぜひ一度は行ってみたい場所となりました。
歴史の勉強になるのはもちろん、地理的な要素、大乗仏教、中国文化にも触れることができます。
歴史的に日本の仏教密教に多大な功績を残した二人の偉人に、血肉を通わせて描ききる作者の力量に感服致しました。
間違いなく名作だと思います。
ちなみに私は"&"も何度も読み返すほど大好きです^_^





