本書は
『文藝別冊』の
開高健(1930-1989)特集号です。
本の物理的な形としてはMOOK
(Magazine足すBook割る2)です。
河出書房新社から出ている文芸雑誌が『文藝』で
その別冊が『文藝別冊』です。
本書は2010年1月に出版された
『文藝別冊=開高健』の増補新版です。
2010年版に載っていない文章は
次の2つのようです。
1)『昔、ここであったこと』
1978年11月27日
大阪府立天王寺高校における講演。
開高は旧制・大阪府立天王寺中学を卒業していますから
36年ぶりの母校、です。
なお
監修――開高健記念会『クォータリー マグナカルタ』
第5号=2013年12月とのこと。
2)『史上洋画ベスト10』
『文藝春秋』1988年1月号に載った
アンケートに答えるかたちのランキングものです。
開高にとっての洋画ベストテンです。
ほとんど映画を見ない私ですが
『西部戦線異状なし』(開高によるベスト1)
『大いなる幻影』(同ベスト6)
の2本は見たことがあります。
ランキングに付された短文で
開高自身が言及しているのも
この2作品です。
他のエッセイでも触れていたように思います。
開高健は1930年12月30日生まれですから
2015年は確かに生誕85周年になります。
50年や100年に比べると中途半端
という印象はぬぐえませんが
Amazonで購入し
少し時間があいたときに結構、読み返しています。
MOOKですからどこからでも
気楽に読めます。
重宝しているのは
「開高健 略年譜」です。
見開き2ページに開高健の人生がおさまっているので
コンパクトです。
(開高健記念会編『Portrait de Kaiko』所収の
谷沢永一作成の年譜等を参照とあります)
ただし
一点問題があります。
たとえば
「1970年(昭和45) 40歳」
という記述があります。
これを
「〇〇年の誕生日に開高が△△歳になった」
と解釈すると正しいのですが
「〇〇年は開高は主として△△歳であった」
と理解すると微妙なことになります。
なぜなら
開高の誕生日は12月30日ですから
1970年の99%を開高は39歳として過ごし
残り1%だけを40歳として過ごします。
従って
「1970年 40歳」
という記述は誤解を招くことがあります。
たとえば
1965年2月14日
ヴェトナムで開高らはヴェトコンに包囲・銃撃され
200名の部隊は17名まで減ります。
あやうく殲滅されるところでした。
このとき開高は満年齢で34歳です。
しかし略年譜には
「1965年(昭和40) 35歳」
とあります。
九死に一生の体験をしたのは35歳である
と誤解するかもしれません。
略年譜に書かれた年齢が
「何を意味するのか」
はっきり明記したほうがいいと思います。
本書では
「その年の誕生日で迎える年齢」
ですが
それに何の意味があるかよくわかりません。
個人的には
満年齢ではなくて
数え年を使うのもひとつの見解です。
コラムニスト堀井憲一郎氏(1958-)が書いているように
満年齢は生物学的年齢で
社会的年齢は数え年のほうに意味があります。
注意を喚起いたしますと
「還暦」とは満六十歳のことではなく
数え年で六十一歳になることです。
干支による暦は60年周期ですが
それが一周してもとに戻ることが
還暦の定義です。
ちなみに
開高健が生まれた1930年は
庚午(こうご)(かのえうま)の年です。
再び庚午がめぐってくるのは1990年です。
残念ながら
開高は1989年12月9日に
食道癌に肺炎を併発して亡くなりました。
仮にあと23日長生きして
1990年1月1日を迎えたならば
そのとき開高は「還暦」を迎えていたことになります。
実際には
満年齢で享年58
数え年で享年60
でした。
もうひとつ注意を喚起すれば
「享年」は
「年を享くること」(としをうくること)
と訓読し
本来、干支による暦が前提としてあり
従って年齢も数え年を用いていました。
享年に「〇〇歳」をつけると
「年を享くること〇〇歳」ですが
「年」=「歳」ですから
二重表現になって(「赤面が赤くなる」といっしょ)
もともとはNGでした。
しかし
近年は誤用が定着する傾向もあり
東京・神田・一ツ橋の某書店の辞書に
「享年〇〇歳」という用例が載っているらしいです。
私は使いませんが。
追記。
致命的な誤植があります(217ページ)。
資料編の「開高健作品ガイド」のうちの
『開高健全集 第3巻』より
×『屋根裏の告白』
とあります。これは正しくは
○『屋根裏の独白』
です。
小説のタイトルを間違えています。
ウイーン時代のヒトラーを
日記形式で書いたのが本作品です。
モノローグであって
コンフェッションではありません。
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開高健: 生誕85年記念総特集 体験からの文学 (文藝別冊/KAWADE夢ムック) ムック – 2015/6/18
河出書房新社編集部
(編集)
購入を強化する
開高健文学・ノンフィクションの再評価。
単行本未収録再録と重松清による角田光代インタビュー等。
増補は、母校で行われた幻の講演「昔、ここであったこと」。
●目次●
開高健アルバム
【エッセイ】
坂本忠雄 ──開高文学の生命力
小林照幸 ──ふたつの十七年
島尾伸三 ──不思議な記憶
【開高健への視座】
丸川哲史 ──記録する眼 開高健にとっての中国/ベトナム体験
栗原裕一郎 ──開高健が「ぼやけた」感じなのはどうしてか
【特別インタヴュー】
角田光代
重松 清(聞き手)
──失われた戦場を求めて
書けないことを書き続ける
増補 【映画アンケート】
開高健 史上洋画ベスト10
増補 【幻の講演】
開高健単行本未収録コレクション うちあける。
開高健
昔、ここであったこと
1978年11月27日、於・母校=大阪府立天王寺高校
【開高健単行本未収録コレクション 答える。/読む。】
開高健
A・A諸国の情熱
開高健さんと嘔吐を読む
【開高健単行本未収録コレクション 開高健、語る。】
開高健with
長野重一 ──もうひとつの言葉としての写真 報道写真のあり方を語る
佐々木基一 ──アイヒマン裁判の意味
荻昌弘・小松左京 ──闇市時代の“美味”求真を語る
西園寺公一・田中祐三 ──西園寺さん開高さんのフィッシュ・オン
矢崎泰久 ──開高健 現場主義に変節なし
開高道子 ──親子対談
吉武力生 ──ワインスピーク 諸君すべからく飲みたまえ
【作家論】
アンヌ・バヤール=坂井 ──Anywhere out of the world
鳥羽耕史 ──紙と真実 開高健の知的探求について
【想い出のひと】
糸井重里 ──痩せたソクラテスより肥った人。
山口瞳 ──職場での開高健
武田百合子 ──開高さんと羊子さん
【作品論】
中根隆行 ──北海道のロビンソンたち 開高健『ロビンソンの末裔』と開拓農民をめぐる物語
倉数茂 ──近代の〈約束〉 ポリティカルフィクションとしての『日本三文オペラ』
淺野卓夫 ──手の声たちのほうへ…
【資料】
作品ガイド/略年譜/著作リスト
単行本未収録再録と重松清による角田光代インタビュー等。
増補は、母校で行われた幻の講演「昔、ここであったこと」。
●目次●
開高健アルバム
【エッセイ】
坂本忠雄 ──開高文学の生命力
小林照幸 ──ふたつの十七年
島尾伸三 ──不思議な記憶
【開高健への視座】
丸川哲史 ──記録する眼 開高健にとっての中国/ベトナム体験
栗原裕一郎 ──開高健が「ぼやけた」感じなのはどうしてか
【特別インタヴュー】
角田光代
重松 清(聞き手)
──失われた戦場を求めて
書けないことを書き続ける
増補 【映画アンケート】
開高健 史上洋画ベスト10
増補 【幻の講演】
開高健単行本未収録コレクション うちあける。
開高健
昔、ここであったこと
1978年11月27日、於・母校=大阪府立天王寺高校
【開高健単行本未収録コレクション 答える。/読む。】
開高健
A・A諸国の情熱
開高健さんと嘔吐を読む
【開高健単行本未収録コレクション 開高健、語る。】
開高健with
長野重一 ──もうひとつの言葉としての写真 報道写真のあり方を語る
佐々木基一 ──アイヒマン裁判の意味
荻昌弘・小松左京 ──闇市時代の“美味”求真を語る
西園寺公一・田中祐三 ──西園寺さん開高さんのフィッシュ・オン
矢崎泰久 ──開高健 現場主義に変節なし
開高道子 ──親子対談
吉武力生 ──ワインスピーク 諸君すべからく飲みたまえ
【作家論】
アンヌ・バヤール=坂井 ──Anywhere out of the world
鳥羽耕史 ──紙と真実 開高健の知的探求について
【想い出のひと】
糸井重里 ──痩せたソクラテスより肥った人。
山口瞳 ──職場での開高健
武田百合子 ──開高さんと羊子さん
【作品論】
中根隆行 ──北海道のロビンソンたち 開高健『ロビンソンの末裔』と開拓農民をめぐる物語
倉数茂 ──近代の〈約束〉 ポリティカルフィクションとしての『日本三文オペラ』
淺野卓夫 ──手の声たちのほうへ…
【資料】
作品ガイド/略年譜/著作リスト
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2015/6/18
- ISBN-104309978614
- ISBN-13978-4309978611
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社; 増補新版 (2015/6/18)
- 発売日 : 2015/6/18
- 言語 : 日本語
- ムック : 244ページ
- ISBN-10 : 4309978614
- ISBN-13 : 978-4309978611
- Amazon 売れ筋ランキング: - 640,480位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 238位作家研究
- - 65,268位ノンフィクション (本)
- - 117,926位雑誌 (本)
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