たぶん40年くらい前に読みました。
今回、本当に久しぶりに読み返してみて、記憶にあったのは「高速自動走路」という便利な乗り物 (動く歩道) のみ。
カバー絵も、黒々としたロボットの手と鋼鉄板が穿たれた向こうに宇宙空間と地球らしき星が見える旧版よりも、鋼鉄都市そのものを描いたような新版のほうが断然カッコいいです。
ただし、翻訳は旧版とおなじ福島正実氏。だけど、今からジャスト60年前の1959年の訳業なのに日本語的に古臭くは感じられませんでした。やはり名訳ですね。
宇宙市側で、宇宙人(注)が何者かに殺されたという、前代未聞の宇宙人殺害事件が発生する。
(注)元は地球人だけど遥かな過去に宇宙へと進出し、現在、旧弊な地球人を啓発するために異邦人ならぬ異星人として地球の宇宙市 (スペース・タウン) に住んでいる人々
その宇宙人殺人事件を担当したのが、地球人ライジ・ベイリ刑事と、宇宙人側の最新アンドロイド (人型ロボット) R・ダニール・オリヴォーのコンビ。
最初はギクシャクしていた2人 (1人と1台?) の仲も、捜査が進むにつれて次第に慣れ親しみ、最後のほうは男の友情と呼んでいいようなものが芽生える。
はじめて宇宙市とニューヨーク・シティ (巨大ドームに覆われた鋼鉄都市・人口2千万人) の接点出入口で、ベイリが人型ロボット・ダニールと会ったあと、ニューヨーク・シティへ戻ったところで早くも事件が発生。
靴屋の接客ロボットの応対が悪いと女性客が店主に難癖をつけたのをきっかけに、普段からロボットに不満と悪感情を募らせていた市民らが集まってきて、あわや暴動が勃発かという寸前で、ロボット・ダニールが熱線銃をかまえて市民を制圧、退去させるところはカッコよかった。
まあ、ロボット・人工知能に仕事や地位を奪われた市民の怒りと嫌悪感はよく分かるし、2019年現在、あと10年以内には現実にロボット・人工知能から奪われる仕事が、かなり出てくるだろうと言われている。
いやいや、すでにコンピュータ (パソコン&事務処理ソフトウェア) のおかげで事務職が絶滅危惧種になっているという現実がある。
さらには今後、数年以内に完全自動操縦の自家用車が出回ることは確実。そうなると文字通り10年を経ずしてタクシー、バス、運送トラックなど、運転で生活している人々の多くは確実に職を失うはずだ。
すっかり忘れていてほとんど初読に近かったせいで、今回の再読はよけいに楽しめました。
高速自動道路を6名の追跡者に追われて必死で逃げるベイリ&ダニールの逃走シーンや、殺人事件の謎解きへの興味、さらにはアシモフの《銀河帝国もの》の諸作へとつながる伏線とも呼べそうな「作中の旧弊な地球人達を大宇宙への移住へと駆り立てる」気宇壮大なヴィジョン等々、見どころ満載です。
加えて、先述したような、日本で近い将来予想されるロボット・人工知能普及による大量失業という不可避の大きな社会問題を、何と70年近くも前に予見していたアシモフの慧眼に、ただただ感服したしだいです。★アシモフ恐るべし!!
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アイザック アシモフ
(著)
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言語日本語
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出版社早川書房
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発売日2013/8/25
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登録情報
- ASIN : B00O2O7JFY
- 出版社 : 早川書房 (2013/8/25)
- 発売日 : 2013/8/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 455 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 357ページ
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2019年5月4日に日本でレビュー済み
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10人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年12月21日に日本でレビュー済み
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SF小説はなんとなく敬遠していましたが、食わず嫌いも良くないと思い、傑作と名高くミステリ要素もあるこちらを読んでみました。
たまに途中でダレて読むのが億劫になる作品がありますが、こちらはそれとは正反対で、問題が解決したと思った矢先にまた新しい問題が起こるため、止めどころに困るくらい引き込まれていきました。
ミステリの終盤で感じる高揚感が、途中で何度かあるのも素晴らしかったです。
著者の「面白い物を書くぞ!」という気持ちが物凄く伝わってくる、非常に完成度の高い娯楽性を備えた作品だと感じました。
他の方のレビューを拝見すると、子供の頃に読まれて再読という方が結構いらっしゃいますが、初めて読んだのが40手前のおばさんでも充分すぎるほど楽しめました。
年齢性別問わず楽しめるかと思います。
たまに途中でダレて読むのが億劫になる作品がありますが、こちらはそれとは正反対で、問題が解決したと思った矢先にまた新しい問題が起こるため、止めどころに困るくらい引き込まれていきました。
ミステリの終盤で感じる高揚感が、途中で何度かあるのも素晴らしかったです。
著者の「面白い物を書くぞ!」という気持ちが物凄く伝わってくる、非常に完成度の高い娯楽性を備えた作品だと感じました。
他の方のレビューを拝見すると、子供の頃に読まれて再読という方が結構いらっしゃいますが、初めて読んだのが40手前のおばさんでも充分すぎるほど楽しめました。
年齢性別問わず楽しめるかと思います。
2019年4月26日に日本でレビュー済み
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古典的なSFで表面のガジェットだけ見ると、未来社会の描写が古臭く思えますが、過剰な人口、規制の強化や階級などによる差別など、この作品で垣間見える社会問題の本質は、今読んでも通じると思います。むしろ、本書で問題となっている人口の増加がより顕著な問題となっている現在の方が、リアリティを持って読ませるかもしれません。
ミステリとしても評価されているようですが、そちらのほうは謎解きを含めて、あまり説得力が無く、面白みを感じませんでした。
むしろ、現在と未来社会、地球人と宇宙人(もともと地球にいた人たちが他の星に移民した子孫)、人間とロボット、懐古と未来志向といった異質の文化/価値観の相違と相克といった点が、今の読者にとっての読みどころだと思います。
ミステリとしても評価されているようですが、そちらのほうは謎解きを含めて、あまり説得力が無く、面白みを感じませんでした。
むしろ、現在と未来社会、地球人と宇宙人(もともと地球にいた人たちが他の星に移民した子孫)、人間とロボット、懐古と未来志向といった異質の文化/価値観の相違と相克といった点が、今の読者にとっての読みどころだと思います。
2014年9月18日に日本でレビュー済み
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私は基本的に何でも楽しめる質の人間ですが、この作品は能動的に楽しさを見出さなくても、世界観やキャラクターやミステリ的展開で受動的に楽しませてくれます。わかりやすく言えば、楽しむのではなく楽しませてくれる、といった感じです。
サービス精神の豊富な作家さんだと思いました。
驚くことに最初から最後まで面白くて、だれそうになる中盤でも、次々にキーとなるイベントが起こって飽きません。しかもそのイベントのひとつひとつが重大な伏線となって、最後の結末に収束します。ミステリとして非常に優秀な作品です。
世界観については語ることはありません。他の方が十分語ってくれています。
その他の点で特筆すべきは、ロボットのダニールでしょう。
とてもキャッチーなキャラで、私はいつしかダニールのファンになっていました。機械なのに人間らしく見えるのはなぜでしょうか。論理的な思考をして人間性が皆無なはずであるのに、私にはどうしても人間に見えてしまうのです。しかしこれは私の主観のせいでしょうね。もしかしたら他の読者の方は、やっぱりダニールはロボットであって人間じゃないように見えるのかもしれません。
そしてサミイが可愛らしい。主人公のベイリから散々罵倒されて不憫なのに従順で可愛らしい。
ロボットが魅力的なのがこの作品の魅力です。
サービス精神の豊富な作家さんだと思いました。
驚くことに最初から最後まで面白くて、だれそうになる中盤でも、次々にキーとなるイベントが起こって飽きません。しかもそのイベントのひとつひとつが重大な伏線となって、最後の結末に収束します。ミステリとして非常に優秀な作品です。
世界観については語ることはありません。他の方が十分語ってくれています。
その他の点で特筆すべきは、ロボットのダニールでしょう。
とてもキャッチーなキャラで、私はいつしかダニールのファンになっていました。機械なのに人間らしく見えるのはなぜでしょうか。論理的な思考をして人間性が皆無なはずであるのに、私にはどうしても人間に見えてしまうのです。しかしこれは私の主観のせいでしょうね。もしかしたら他の読者の方は、やっぱりダニールはロボットであって人間じゃないように見えるのかもしれません。
そしてサミイが可愛らしい。主人公のベイリから散々罵倒されて不憫なのに従順で可愛らしい。
ロボットが魅力的なのがこの作品の魅力です。
2020年8月17日に日本でレビュー済み
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アシモフのロボットものは大好きでもう何度も読んでいます。SFと推理小説仕立てを見事に成功させたアシモフ。地下の鋼鉄都市の中でひしめき合い閉塞感がありながら外が怖い地球人。あり得ないけれど面白い設定です。事件のパートナーが人間と見まがう知性あるロボットのダニールダニール。こんなパートナーならほしいものです。裸の太陽では更に友情を築いていきますがスペーサーと地球人の関係もSFならではで楽しい。主人公イライジャ・ベイリの推理、論理の組み立て方が最初は方向違いでも次第に冴えていく。まるで哲学者のようで読み慣れないと違和感を感じるかもしれませんがともかく緻密で凄いのです。一連のロボット作品、「ロボットと帝国」まで読みたくなります。