この人の訳はかなり自由である。前後を考慮してか、一文づつ分けて訳さず、段落を一つの思想の区切りとして考えてか、前後の文を結合したり分離したりして訳している。また、テキストにはない、補足的な訳語が付け加えられて、通読するにはよい。
いずれにしても多くの翻訳があることはそれ自身よいことであって、この訳もそのことに貢献している。それぞれの訳を利用して、もっとも自分にあった翻訳をさがすことも、哲学的行為のひとつである。コストがかかるが、一冊のテキストを複数の訳で読むことは、いろいろな意味で、テキストの解釈に広さと深さとを与えることになる。
なお、この訳は五分の二が訳者の解説に当てられている。この解説は、以文社版の宇都宮訳にヒントを得ているのではないだろうか。
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