御大層に逆タイムマシンなんて名付けてはいるが内容はただのビジネススクールでよくやるケーススタディでしかなく目新しいものは何もなかった。
さらに悪質なのは、著者の結論は後知恵バイアスと認知バイアスに塗れており、根拠に欠けている点だろう。
いくつか例を挙げると、第一部で日本酒のサブスクリプションサービスに関してユーザーが日本酒に詳しくなり、卒業してしまうことで失敗した事例で粘着性が低い商品はサブスクリプションに向いてないと結論づけている。だが、考えてみて欲しい。日本酒のサブスクリプションはサービス開始時に在庫を抱える必要がほとんど無いため、初期投資が少なく済むという利点もあり、さらに新規ユーザーを獲得する事に成功しているためそこからオンラインショップを展開する道筋もあったかも知れない。そのように見れば、決してサブスクリプションモデルが間違っているとは必ずしも言えないだろう。
そして第二部でGoogle Glassで出来ることはスマートフォンで出来、さらに著者の「知人」が流行らないだろうという根拠から”ユーザーにとって不必要”故に普及に至らなかった、それ故技術は非連続的で人間は連続的と結論づけている。だがこれはスマートフォン上で走らせられるアプリが小型化されたデバイスでも動作するウェアラブルデバイスのProof of conceptであり、実際その約2年後ににApple Watchがスマートウォッチ市場を牽引し、2020年現在で200億ドルの市場を作り出している。さらにSmart GlassもARと両手が塞がっていても使える利点から医療や製造でエンタープライズ向けに使われており、20億ドルの市場規模が存在する。
著者は技術や経営を取り入れる事に焦点を当てているが、より重要なのは同時代性によってビジネスを取り巻く環境がどう変わる可能性があるのかを考え、それに基づいた判断を下す事で、「大きな変化はふりかえった時にはじめてわかる」と当たり前のことをあたかも真理のように述べているが、それに気づくまで指を咥えて見てるうちに経営破綻するだろう。
この一冊から学べた事は、経営に失敗してもビジネス書を書いたりビジネススクールで教鞭を取る道が残されている事だろう。
逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2020/10/8
楠木 建
(著)
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本の長さ272ページ
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言語日本語
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出版社日経BP
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発売日2020/10/8
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ISBN-10429610733X
-
ISBN-13978-4296107339
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
近過去の歴史に学ぶ経営知。「飛び道具」「激動期」「遠近歪曲」、3つの「同時代性の罠」を回避せよ。「新聞・雑誌は10年寝かせて読め」―過去記事は最高の教材。変化する歴史を振り返ると、一貫して変わらない「本質」が浮かび上がる。本質を見極め、戦略思考と経営センスに磨きをかける「古くて新しい方法論」
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
楠木/建
一橋ビジネススクール教授。1964年生まれ。89年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年から現職。専攻は競争戦略
杉浦/泰
社史研究家。1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、ウェブエンジニアとして勤務。そのかたわら、2011年から社史研究を開始。個人でウェブサイト「The社史」を運営している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
一橋ビジネススクール教授。1964年生まれ。89年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年から現職。専攻は競争戦略
杉浦/泰
社史研究家。1990年生まれ、神戸大学大学院経営学研究科を修了後、みさき投資を経て、ウェブエンジニアとして勤務。そのかたわら、2011年から社史研究を開始。個人でウェブサイト「The社史」を運営している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社より

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ベスト500レビュアーVINEメンバー
Amazonで購入
本書はNewspicksの番組「THE UPDATE」を観ていて、著者が
上手いプロモーションをするものだから(笑)思わず購入して
しまった。
最近のTECとかテンゼロ(商社2.0みたいな)とか笑ってしまうような
事例が満載で楽しい。本書の主題ではないが自分は2010年にEVを
購入したが、10年経って手元には無く、後悔が先行している。あの
過熱ぶりは何だったのか、と。こういう犠牲者にとってはある意味で
癒しの1冊だ(笑)。
DXDXと熱くなっているが、これも大丈夫か?という問いかけは、実際
そのかじ取りを社内でしている自分にとっても非常に参考になった。
ビジネス書というよりも歴史本の範疇だが、10₋20年前の話も鎌倉時代
の話もきちんと現代に繋がっていることを意識できる良書。星は5つです。
上手いプロモーションをするものだから(笑)思わず購入して
しまった。
最近のTECとかテンゼロ(商社2.0みたいな)とか笑ってしまうような
事例が満載で楽しい。本書の主題ではないが自分は2010年にEVを
購入したが、10年経って手元には無く、後悔が先行している。あの
過熱ぶりは何だったのか、と。こういう犠牲者にとってはある意味で
癒しの1冊だ(笑)。
DXDXと熱くなっているが、これも大丈夫か?という問いかけは、実際
そのかじ取りを社内でしている自分にとっても非常に参考になった。
ビジネス書というよりも歴史本の範疇だが、10₋20年前の話も鎌倉時代
の話もきちんと現代に繋がっていることを意識できる良書。星は5つです。
ベスト100レビュアー
Amazonで購入
タイムマシン経営論というと耳触りはいいが、結局は過去に起こった事実の後講釈。「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」といったように、議論を抽象化して人目を惹くキーワードを捻出するのは著者の十八番だろう。だが不朽の名作「ストーリーとしての競争戦略」を書いた著者だけあって、ストーリーは面白く、特に第1章は秀逸と感じた。
本書の過去記事の大半は日経ビジネスからの引用。このため、時代のバズワードを喧伝してきたメディアの代表が同誌ではなかったかという印象を受ける。同誌も近年はネタ探しに腐心しているようで、目新しいトピックに飛びつく記事が目立つ。本書のように過去を振り返って事象の成否を評論するのは易しいが、今起きていることが、これからどうなるかを予測するのは難しい。望むらくは、DXのような最新のテーマを取り上げて「これは有効なのか?」「これからも生き残れるか?」を議論してほしいものだ。
本書の過去記事の大半は日経ビジネスからの引用。このため、時代のバズワードを喧伝してきたメディアの代表が同誌ではなかったかという印象を受ける。同誌も近年はネタ探しに腐心しているようで、目新しいトピックに飛びつく記事が目立つ。本書のように過去を振り返って事象の成否を評論するのは易しいが、今起きていることが、これからどうなるかを予測するのは難しい。望むらくは、DXのような最新のテーマを取り上げて「これは有効なのか?」「これからも生き残れるか?」を議論してほしいものだ。
ベスト1000レビュアー
はじめに言っておきます。私は、楠木さんの著書の愛読者です。ですので、少しひいき目に
なっているところはあるかもしれませんが、本書、読む価値アリです。
楠木さんの理論の特徴は、大きく分けると、「ストーリー」系と「好き・嫌い」系があると
理解しています。ただ、これもどちらを主として表を向けているかということであって、根元
では繋がっています。
そして、『逆・タイムマシン経営論』ですが、これは「ストーリー」系の本です。
学術会における評価基準は、私たち一般のビジネスパーソンや学生にとってはわかりませんし、
身もふたもないことを言ってしまえば、数字での裏付けよりも、物語り(ストーリー)の面白さに
魅せられ、経営者や、その会社の歴史や文化に憧れや尊敬の念を抱いたりします。
勘ぐりですが、楠木さんはベストセラーの『ファクトフルネス』をもじって、「パストフルネス」
という造語(過去を表す Pastと、真実のFact Fulnessを合成)を紹介しているのは、単純に数字
や統計を信じ込むことの愚かさを揶揄している面があるようにも取れます。
たとえば、次のような一節が「はじめに」で書かれています。
「歴史的事実には、統計データにはない豊かな文脈がある」 と。
本書はコロンブスの卵です。読んでみて、なんだ、そのことを言いたかったの?単純なこと
だ。と思ったり、そんなの当たり前だと思う人がいるかもしれませんが、「ほら、こういうこと
なんですよ」と初めに明らかにすることは、やはりすごいのだと思います。本書がそれです。
種明かしをするなら、本書が言いたいのは、「本質を見極めましょう。本質を知るためには、
同時代性の罠がたくさんちりばめられている現在の情報から考えるのは間違いを犯しやすいので、
既に確定した過去を見ましょう。なぜなら、本質はそう簡単には変わらないものだから、
もっとも有効な方法は歴史的変化を辿ることです。」ということ。これがほぼすべてです。
ただそれだけでは理論の押しつけにしかならないので、「同時代性の罠の3タイプ」で具体的な
事例によって、説得力と読者の共感を得る構成になっています。
特に、テクノロジーに関する、主にIT系のバズワードは、手段として認識し正しく使うなら有効
ですが、手段を目的化するという失態を犯してしまいやすいという指摘は、多くの読者がうなずく
ところです。
同時代性の罠、言い換えると、認識バイアス、特に無意識に持ってしまっている偏見(アンコン
シャス・バイアス)に気付き、時間軸、空間軸を適正にとって俯瞰して捉えたうえで現時点に
立ち戻って、物事の本質を考えることの重要性を説いた本ですが、その論理だけで終わらずに、
現在の日本に生きる私たちが既にハマってしまっている、もっとも大きな課題であり、盲目的に
信じている「人口減少は諸悪の根源」について持論を述べているところが興味深いし、私は
楠木さんの考えにほぼ同意しました。
人口が世の中の善し悪しを決めるという考え方は、この100年前くらいからの変遷を見ても、
あるいは他国の例で見ても、考え方がコロコロと変わっているという事実があるにも関わらず、
「人口減少」、さらには「少子高齢化」までいくと、この世の終わりのような悲観論に陥って
しまっていることにまずは気づくべきです。
本書の中では、解決策として、
・人手不足こそ「働き方改革のドライバー」で、生産性向上の絶好のチャンスだ
という提言や、アイリスオーヤマの大山会長の、
・「ピンチはチャンス」ではなく、「ピンチが(ピンチこそが)チャンス」だ
という言葉が引用されています。
国の経済発展状況によって考え方は変わりますが、日本を含む経済成熟国では、けっこう
前から「モノ」から「コト」に、価値観がシフトしたと言われています。
にも関わらず、多くの企業の物差しは、売上・利益至上主義のままです。
前年比〇〇%アップです。
生活者の感覚と、生産者の感覚のここまでゆがんでしまっているズレこそが、もしかすると
私たちがいままさに陥っている罠なのかなと、考えさせれました。
本書のなかにこれだ!という正解を求めるのではなく、考える作法を学びたいという人に
とっては、最適の書であり、是非お勧めしたいです。
なっているところはあるかもしれませんが、本書、読む価値アリです。
楠木さんの理論の特徴は、大きく分けると、「ストーリー」系と「好き・嫌い」系があると
理解しています。ただ、これもどちらを主として表を向けているかということであって、根元
では繋がっています。
そして、『逆・タイムマシン経営論』ですが、これは「ストーリー」系の本です。
学術会における評価基準は、私たち一般のビジネスパーソンや学生にとってはわかりませんし、
身もふたもないことを言ってしまえば、数字での裏付けよりも、物語り(ストーリー)の面白さに
魅せられ、経営者や、その会社の歴史や文化に憧れや尊敬の念を抱いたりします。
勘ぐりですが、楠木さんはベストセラーの『ファクトフルネス』をもじって、「パストフルネス」
という造語(過去を表す Pastと、真実のFact Fulnessを合成)を紹介しているのは、単純に数字
や統計を信じ込むことの愚かさを揶揄している面があるようにも取れます。
たとえば、次のような一節が「はじめに」で書かれています。
「歴史的事実には、統計データにはない豊かな文脈がある」 と。
本書はコロンブスの卵です。読んでみて、なんだ、そのことを言いたかったの?単純なこと
だ。と思ったり、そんなの当たり前だと思う人がいるかもしれませんが、「ほら、こういうこと
なんですよ」と初めに明らかにすることは、やはりすごいのだと思います。本書がそれです。
種明かしをするなら、本書が言いたいのは、「本質を見極めましょう。本質を知るためには、
同時代性の罠がたくさんちりばめられている現在の情報から考えるのは間違いを犯しやすいので、
既に確定した過去を見ましょう。なぜなら、本質はそう簡単には変わらないものだから、
もっとも有効な方法は歴史的変化を辿ることです。」ということ。これがほぼすべてです。
ただそれだけでは理論の押しつけにしかならないので、「同時代性の罠の3タイプ」で具体的な
事例によって、説得力と読者の共感を得る構成になっています。
特に、テクノロジーに関する、主にIT系のバズワードは、手段として認識し正しく使うなら有効
ですが、手段を目的化するという失態を犯してしまいやすいという指摘は、多くの読者がうなずく
ところです。
同時代性の罠、言い換えると、認識バイアス、特に無意識に持ってしまっている偏見(アンコン
シャス・バイアス)に気付き、時間軸、空間軸を適正にとって俯瞰して捉えたうえで現時点に
立ち戻って、物事の本質を考えることの重要性を説いた本ですが、その論理だけで終わらずに、
現在の日本に生きる私たちが既にハマってしまっている、もっとも大きな課題であり、盲目的に
信じている「人口減少は諸悪の根源」について持論を述べているところが興味深いし、私は
楠木さんの考えにほぼ同意しました。
人口が世の中の善し悪しを決めるという考え方は、この100年前くらいからの変遷を見ても、
あるいは他国の例で見ても、考え方がコロコロと変わっているという事実があるにも関わらず、
「人口減少」、さらには「少子高齢化」までいくと、この世の終わりのような悲観論に陥って
しまっていることにまずは気づくべきです。
本書の中では、解決策として、
・人手不足こそ「働き方改革のドライバー」で、生産性向上の絶好のチャンスだ
という提言や、アイリスオーヤマの大山会長の、
・「ピンチはチャンス」ではなく、「ピンチが(ピンチこそが)チャンス」だ
という言葉が引用されています。
国の経済発展状況によって考え方は変わりますが、日本を含む経済成熟国では、けっこう
前から「モノ」から「コト」に、価値観がシフトしたと言われています。
にも関わらず、多くの企業の物差しは、売上・利益至上主義のままです。
前年比〇〇%アップです。
生活者の感覚と、生産者の感覚のここまでゆがんでしまっているズレこそが、もしかすると
私たちがいままさに陥っている罠なのかなと、考えさせれました。
本書のなかにこれだ!という正解を求めるのではなく、考える作法を学びたいという人に
とっては、最適の書であり、是非お勧めしたいです。