2015年に放火で焼けおちるまで43年間、異彩を放ち続けた喫茶店「ほんやら洞」。
この店を愛惜する68名の執筆者たちがそれぞれの思い出をつづっている。
その中でも、神田 稔さんが「ほんやら洞での自作詩朗読会」を語っているのが、印象的だった。
この朗読会は次第に盛り上がり、1974年には「ほんやら洞」で実況録音され、LPレコード『ほんやら洞の詩人たち』が発売された。
「詩を口でいう」(片桐ユズルのことば)という行為が「ほんやら洞」という場所を創造してしまった、という事実が面白い、
と書いている。
また、神田は1988年の京大西部講堂での詩朗読会のことも併記している。
このとき、アレン・ギンズバークは自分の詩を朗読し、そばに立つ片桐ユズルが日本語で逐語的に口でいった。
ギンズバークと片桐ユズルが詩を読むリズムや間が見事にシンクロしていて、「詩朗読のちから」にからだが震えた、と書いている。
著者の甲斐さんが語るように、「ほんやら洞」の存在は、きな臭い空気が漂う現代社会にこそ必要とされる「場所」なのであろう。
昔のような「喫茶店」という場所がほとんど消えてしまった現代、LPレコードが絶滅した現代にあっても、68名の執筆者たちがいろいろな声で語る本書を読むと、「ほんやら洞」の魅力が朗読会のように生々しく伝わってくるような気がした。
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