本シリーズの前2作が面白かったので第3作の本書を発売前に予約注文し、届いたらすぐに興味深く読み終えました。カトリック教会から異端として迫害され、自説を曲げて屈服したものの「それでも地球は動いている」とつぶやいたという伝説が残っているガリレオ・ガリレーの詳しい経緯と、それが他国の学者を委縮させた当時の状況は初めて知りました。
ベーコンとデカルトの章はクリスチャンではあっても物理屋の私には難しくてよくわかりませんでした。これではデカンショ(デカルト、カント、ショーペンハウエル)の予備知識がないと理解できないので、初心者のためにもう少しわかりやすい解説があればよかったと思います。文献情報によると、引用されている岩波文庫などの原書が著者が学生時代に読んだという古い(1950~60年代)もので、決して若くはない私にも難解でした。今時は「読書百遍」などという努力はしないので、どの位の読者が理解できたのだろうと疑問です。
パスカルについては、数学や物理への貢献はよく知っていましたので、その思想的な背景、特に本書のテーマである科学者の信仰という側面についての解説は新鮮でした。しかし、デカルトの章よりはわかりやすいものの、内容構成が入り組んでいるうえ、当時の社会的、宗教的な背景が自明のこととしているようで解説が無いので、十分に理解できたかというと疑問です。
最後の魔術師であり、同時に最初の科学者であると言われたニュートンについては数学や物理における業績はもちろん、錬金術やオカルト的な研究のことも良く知っていたので、興味深く面白く読むことができました。当時のイギリス国教会(宗教改革によってではなく、国王の離婚によるローマ法王からの破門に対抗して英国独自の教会を作った)との関係や、彼の科学的な著書の前書きなどに残された信仰上の立場も分かりやすく説明されていたと思います。しかしこの章もイギリス国教会の起源について多少の予備知識がないと理解しにくいのではないかと感じました。
本書のシリーズは自然科学とキリスト教の信仰という、普通は無関係に思われている二つの大きな分野の間の関係を取り扱っているので、両方について十分な予備知識がある読者は少ないはず。いちいち全部を説明している紙数がないのはわかりますが、もう少し配慮していただければ良かったと思いました。
本書は古典物理学の時代しかカバーしていないので、次はアインシュタイン以降の現代物理学などの科学者たちの物語でしょうか。宇宙創成に関するビッグバン理論が発表されたとき、当時のローマ法王が大変喜ばれたという話などが出てくるのを楽しみにしています。
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