本書のキーとなっている発想は「観察の観察」あるいは「他者言及と自己言及」であろう。
観察者は、他者を観察する際に常に何らかの区分を設けて観察しているがために、その区分を観察されることにより自らの観察の限界が表れる。
この「観察の観察」は、観察対象を自己に転換させる自己言及的な行為となり、それにより自身の不完全性、矛盾性が露わとなるのである。
こうした観察において用いられる区分がさまざまなシステムであり、たとえば学システム(学問)における「真/偽」、法システムにおける「適法/違法」などのコードが用いられている。
だがそれらは上記の限界があるがゆえに、観察に際しては常にシステムの外部とつながっている必要がある。しかし一方でシステム作動時には外部は切り離されるのである。
本書後半では偶然性やリスクの話が、システムの理論に基づいて説明される。
本書は後期ルーマン格好の入門書とのことらしい。
確かにそれほど分厚くないという意味では読みやすいのかもしれないし、特殊な用語も用いられていないが、それでもわかりやすいとは思わなかった。
あと、話が抽象的なので、もうちょっと具体的なシステムにひきつけた話の方がよかった。
とはいえ、他のルーマンの著作を読んでみようかな、と思わせてはくれるという意味では、やはり入門書として成功しているのかもしれないが。
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