実に大胆な表現・壮大な仮説の問題作である。
旧約聖書に登場する「エデンの園」は今のペルシャ湾の海底にあったと仰る。海に沈む前、そこは平坦な上に温暖湿潤で食べ物や水にあふれた「この世の楽園」であった。しかし終わりの時が来た。氷河期が終わったのだ。最終氷期は1万年前に終わり、大陸を覆っていた大氷河が溶け、海面が上昇し始めた。それも最大200m。大洪水の発生だ。「ノアの大洪水」としてこれも旧約聖書に登場する逸話である。
人々は園を追われ(失楽園)、中東の地で恒久的な農業を続ける羽目になった。農業はしんどい。しかし、増えた人口を養うためには人々はそうするしかなかった。「すべての災いの始まり」である。農業が始まるまで、男の身長は平均178c、女は168cmだった。それが農業を始めると男160cm、女155cmになってしまった。確かに人口は爆発したが、殆どの人が栄養失調になってしまった訳だ。人が本来の食い物(Niche)でない物(穀類)を食べると悲慘なことになる。今も昔も変わらない真実である。「禁断の果実」とは実は穀物のことであったのだ。
我々は農業という原罪を背負うことで成立した。社会も文明もすべてそうだ。今も、何億人もが穀物・炭水化物の生産・流通・販売に関わって生計を立てている。更には、何十億人もが穀物・炭水化物を主に食べて生きている。いったん始めたら止められないのが農業。「螺旋状の悪循環である」と筆者はいう。地球環境や生態系は破壊され続け、人々は病気(穀物病・糖質関連疾患)に悩まされ続ける。すなわち、農耕の開始は「究極のトレードオフ」だった訳だ。我々人類は未来永劫にわたり、この原罪から逃れることは出来ないのだ。やれやれ。
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