やはりなかなかの名著であった。
数カ所心に残った箇所があったが、一つ挙げるとすれば、談春が真打なる前自暴自棄になった際、自らを可愛がってくれたさだまさしに愚痴った折(以下同書引用)、
「談春、一体自分を何様だと思ってんだ。立川談志は天才だ。俺たちの世界でたとえるなら、作詞作曲、編曲に歌に演奏まで独りでできています。その全て、どれをとっても超一流、そんな凄い芸人が落語というひとつの芸能の中で、五十年の間に二人も三人も出現するわけがないだろう。憧れるのは勝手だがつらいだけだよ。談春は談志にはなれないんだ。でも談春にしかできないことはきっとあるんだ。それを実現するために談志の一部を切り取って、近づき追い詰めることは、恥ずかしいことでも、逃げでもない。談春にしかできないことを、本気で命がけで探してみろ」
「でもオレ(談春)、もう少しなんとかなりたい。オールマイティに近づきたい」
「あのな、誰でも自分のフィールドに自信なんて持てない。でもそれは甘えなんだ。短所は簡単に直せない。短所には目をつぶっていいんだよ。長所を伸ばすことだけ考えろ。談春の長所がマラソンなら、マラソンで金メダルをとるための練習をすればいいんだ。マラソンと一〇〇メートルではどっちに価値があるかなんてお前の考えることじゃない。お前が死んだあとで誰かが決めてくれるさ。お前、スタートラインに立つ覚悟もないのか」
「あります」
「それなら早く真打になれ。そこがスタートラインだろう」
スタートしたら走り続ける覚悟が必要であるとさだは説き、談春は吹っ切れた。
*****
いまや立川流を、いや落語界を背負う唯一無二の立川談春という噺家になっている。
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