著者の中谷巌氏は小渕内閣で経済改革研究会に参画し、ソニーの取締役を務めるなど、所謂新自由主義寄りの人物であったが、その後転向したといわれる方。
全体的な感想は表題に書いた通り、今後の日本の在り方を考えるスタートポイントとして使える本かな、と感じました。初め部分の資本主義の限界と中国の歴史および文化の可能性については非常にまとまっている印象ですが、最後のパートの今後の日本の在り方についてはややぼんやりとした印象・生煮えの印象があります。
一章から三章では、大航海時代より欧米では外の世界を志向していたとし、アメリカ大陸の発見、アフリカ大陸の植民地化、中国やインドへの進出を例として挙げています。これらはすべて外の世界から収奪し、その収奪物を自国で資本として消費・利用することを意図している。第二次世界大戦と冷戦を経て今や超大国となり征服するフロンティアがなくなった現代、金融空間を開拓し、世界マネーを米国に還流させようとしたがリーマンショックをはじめとしてこれもストップがかかった。発売時の2012年、資本主義がこれからどこへ向かうのか分からず、方向転換なり新たな潮流が求められると主張。
また失われた20年の反省とそのトリックについても書かれています。戦後の占領時にマッカーサーの洗脳により自虐史観が構築され、以降日本を陰に陽にコントロールしようとし、官僚潰しや市場開放策などを米国が押し付けてきた(ないしは自虐的に日本自らが米国のいう事を守ろうとしてきた)点を指摘しています。このあたりは非常に啓蒙的であり、江藤淳が『閉ざされた言語空間』で述べている日本人観と似ていると思います。
中国の分析も面白く読みました。資本主義の正反対に位置する共産国の中国ですが、日本としては隣国。こことどう付き合っていくか。実は中国のこれまでのやり方は、端的に言うと欧米の制服・収奪モデルとは対照的であり、いわば朝貢・連帯モデルとでも言いましょうか、緩い紐帯のようなモデルであったとします。欧米のようにインディアン皆殺しではなく、歯向かわなければその地域は任せる、という弱い支配であった歴史を述べます。中国は、現在市場主義を導入しつつ、他方で国としての規制は強く、この点に欧米へ対抗していくための可能性を見出しているのだと思います。問題がないとは言えない国ですが、そのポテンシャルを買っているように思えます。ちなみに個人的には、その国の支配者層が自国をどう導くかをしっかり考えていることは重要だと思います。日本はこの点ではかなり危機感を覚えますよね。
日本を食い物にしようとする欧米、方や大国への階段を駆け上る中国、挟まれた日本はどうするか。6章~8章では今後の日本企業と日本のあり方を述べていますが、私はいまいち読み取れませんでした。「贈与」の文化の振興や脱原発などが述べられています。一つ一つのアイディアは面白いのですが、突然考えがホーリスティックになり、古き良き日本を礼賛するような書きぶりであると感じてしまいました。
とは言え国の将来ですから、答えが見えていれば簡単です。答えは見えませんし、その答えを考えるのは筆者のみならず、個々の日本人の責務だと思います。その意味でこの本は「俺たちの日本をどうするんだよ」という問題提起として捉えても良いと思いました。
以上纏めますと、この本は日本の将来や政治、国際関係などに興味がある方にはおすすめしたい本です。筆者の述べていることを信じるとして、じゃあ日本は将来どうすればいいのか、という焦燥感や危機感を持ちました。
加えて、資本主義の限界や欧米諸国の目論見を暴く部分は説得力がありますし、中国を対抗馬として持ってきてこれを歴史と自らの体験等を取り混ぜて説明する部分は私には新たな探求分野を教えてもらった気分です。参考文献も巻末に掲載されており、今後の読書に役立てられます。
資本主義以後の世界―日本は「文明の転換」を主導できるか (日本語) 単行本 – 2012/1/1
中谷 巌
(著)
-
ISBN-104198633134
-
ISBN-13978-4198633134
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出版社徳間書店
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発売日2012/1/1
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言語日本語
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本の長さ350ページ
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
崩壊に向かう世界経済、500年に一度の大変動に我々は何をなすべきか?ユーロ危機、財政破綻、貧困の蔓延、原発事故…「西洋からアジアへ」。迫り来る大転換に向けて日本の進むべき道を示す。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中谷/巌
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)理事長。一般社団法人「不識庵」理事長。「不識塾」塾長。一橋大学名誉教授。多摩大学名誉学長。42年1月22日大阪生まれ。65年一橋大学経済学部卒。日産自動車に勤務後、ハーバード大学に留学。73年、ハーバード大学経済学博士(Ph.D)。その後、同大学研究員、大阪大学教授、一橋大学教授、多摩大学学長を歴任。細川内閣の「経済改革研究会」委員、小渕内閣の「経済戦略会議」議長代理を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)理事長。一般社団法人「不識庵」理事長。「不識塾」塾長。一橋大学名誉教授。多摩大学名誉学長。42年1月22日大阪生まれ。65年一橋大学経済学部卒。日産自動車に勤務後、ハーバード大学に留学。73年、ハーバード大学経済学博士(Ph.D)。その後、同大学研究員、大阪大学教授、一橋大学教授、多摩大学学長を歴任。細川内閣の「経済改革研究会」委員、小渕内閣の「経済戦略会議」議長代理を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2012/1/1)
- 発売日 : 2012/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 350ページ
- ISBN-10 : 4198633134
- ISBN-13 : 978-4198633134
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 495,399位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 68位資本主義論
- - 1,186位社会と文化
- - 19,896位投資・金融・会社経営 (本)
- カスタマーレビュー:
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2020年1月13日に日本でレビュー済み
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2016年8月7日に日本でレビュー済み
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著者中谷巌氏は一橋大学卒業後日産自動車入社し、27歳で退職、ハーバード大学を経て細川内閣(知ってる?)の「経済改革研究会」委員、小渕内閣(平成の元号を発表しました人)「経済戦略会議」議長代理を歴任。当時ガリガリの市場原理主義者で規制緩和や市場開放を積極的に主張、構造改革路線の生みの親とも言える存在だった。その道のオーソリティで十分飯を食って行けただろうに、2008年
資本主義はなぜ自壊したのか―「日本」再生への提言 (集英社文庫)
を上梓。当時(今でも?)主流であった新自由主義、グローバル資本主義に決別を宣言、「懺悔の書」として、大きな反響を呼んだ。
現在は一般社団法人「不識庵」理事長、「不識塾」塾長として250人(2012年時)を超える卒業生を産業界に輩出している。本書では「不識塾」での講義、議論が血肉となり執筆されたとのこと。本書は2008年に決別したグローバル資本主義の背景、問題点、日本が向かうべき方向性の提案が記されている。2016年現在、グローバル資本主義が特定の会社経営者、金融資本家に大変都合の良い、かなり胡散臭い考え方であることが顕在化しているが、この時期からそれを主張し、その対策を検討している先見は素晴らしい。
これから日本社会、そして産業界はこのすさんだグローバル経済の中でどう立ち回ってポジションを確保するか、自分自身勉強をしなければならないがその基礎として本書は最適である。今更共産主義に戻るわけにはいかないことは確かだが、このままでもアメリカと共倒れになるしかない日本社会はどこに行くべきなのか真剣に考えなければならないだろう。
現在は一般社団法人「不識庵」理事長、「不識塾」塾長として250人(2012年時)を超える卒業生を産業界に輩出している。本書では「不識塾」での講義、議論が血肉となり執筆されたとのこと。本書は2008年に決別したグローバル資本主義の背景、問題点、日本が向かうべき方向性の提案が記されている。2016年現在、グローバル資本主義が特定の会社経営者、金融資本家に大変都合の良い、かなり胡散臭い考え方であることが顕在化しているが、この時期からそれを主張し、その対策を検討している先見は素晴らしい。
これから日本社会、そして産業界はこのすさんだグローバル経済の中でどう立ち回ってポジションを確保するか、自分自身勉強をしなければならないがその基礎として本書は最適である。今更共産主義に戻るわけにはいかないことは確かだが、このままでもアメリカと共倒れになるしかない日本社会はどこに行くべきなのか真剣に考えなければならないだろう。
2014年5月16日に日本でレビュー済み
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資本主義の本質を明確にしてくださり、新しい時代への布石を打ってくださった本書に心から感謝申し上げます。新しい時代が備えるべき要素も提示してくださいましたが、私もほぼ同意見です。これからの新しい時代を形成していくための座右の書となりそうです。
2012年2月25日に日本でレビュー済み
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中谷巌氏は資本主義は行き詰っているという認識の上で、その後のあるべき世界を模索している。
我々が直面している文明問題の原因は3匹のモンスターであると言う。まず、グローバル資本主義という怪物だ。地球上を徘徊し、儲かりそうなところに資本を集中投下させるが、利益率が下がるや否や、あっという間に消え失せてしまうグローバル資本主義の罪を暴く。バルト3国はグローバルマネーに荒らされ、国が危機に瀕しているように、世界経済の大きな攪乱要因になっていると氏は主張する。本来商品化してはならない労働、資本、土地を商品化し、それを市場での交換の対象にしたことが問題であるという。新自由主義への痛烈な批判である。
二匹目のモンスターは大地から切り離され、天上から人間に指示する一神教である。一神教は近代合理主義科学や個人主義を導いたが、家族や共同体を解体し、人間を疎外していると説く。
最後のモンスターは東電福島原子力発電所事故を引き起こした技術信仰である。生態圏で循環し、除染することができない放射性廃棄物を生成し続けることを疑っている。大地から切り離された科学万能主義に疑問を呈している。
人類を苦しめているこれらモンスターは、人間は自然の一部であるというごく当然の考え方を否定したことから生み出されている。氏の言う、「文明の転換」とうのは人間の本来の姿に立ち戻ることである。TPP反対や農業振興、共同体や中産階級の復活はその延長線上の施策である。
我々が直面している諸問題の根源を考えるうえで参考となる良書である。西洋文明を転換し、地球上に人間らしい生活と喜びを復活させるのは日本人である「あなた」なのかもしれない。
我々が直面している文明問題の原因は3匹のモンスターであると言う。まず、グローバル資本主義という怪物だ。地球上を徘徊し、儲かりそうなところに資本を集中投下させるが、利益率が下がるや否や、あっという間に消え失せてしまうグローバル資本主義の罪を暴く。バルト3国はグローバルマネーに荒らされ、国が危機に瀕しているように、世界経済の大きな攪乱要因になっていると氏は主張する。本来商品化してはならない労働、資本、土地を商品化し、それを市場での交換の対象にしたことが問題であるという。新自由主義への痛烈な批判である。
二匹目のモンスターは大地から切り離され、天上から人間に指示する一神教である。一神教は近代合理主義科学や個人主義を導いたが、家族や共同体を解体し、人間を疎外していると説く。
最後のモンスターは東電福島原子力発電所事故を引き起こした技術信仰である。生態圏で循環し、除染することができない放射性廃棄物を生成し続けることを疑っている。大地から切り離された科学万能主義に疑問を呈している。
人類を苦しめているこれらモンスターは、人間は自然の一部であるというごく当然の考え方を否定したことから生み出されている。氏の言う、「文明の転換」とうのは人間の本来の姿に立ち戻ることである。TPP反対や農業振興、共同体や中産階級の復活はその延長線上の施策である。
我々が直面している諸問題の根源を考えるうえで参考となる良書である。西洋文明を転換し、地球上に人間らしい生活と喜びを復活させるのは日本人である「あなた」なのかもしれない。
2013年4月26日に日本でレビュー済み
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頭書で3つのフロンティアの消失に触れているが、そもそもフロンティアという字句が気に入らない。
フロンティアという発想は、先進国目線による経済的覇権の意味ではないのか?
これは、中高進国にとっては収奪される事を意味する。これでは紛争や若者の失業・貧困は収まらない。
巨大な貿易赤字は、グローバリゼーションの終焉を示している。
低食料自給率、低再生可能エネルギー比率、国民の2/3(8600万人)が新潟県相当の面積に密集している現状は、
工業化社会の残した大きな課題だと思うし、そこに多くのチャンス(就労や住環境改善の余地)が大いにあるという事である。
これからは、覇権・収奪・世代間贈与では無く、皆が仕事を持てる社会を目指すべきだと思う。
大きな発想の転換が必要な時期だと思う。
毒ある老人から
フロンティアという発想は、先進国目線による経済的覇権の意味ではないのか?
これは、中高進国にとっては収奪される事を意味する。これでは紛争や若者の失業・貧困は収まらない。
巨大な貿易赤字は、グローバリゼーションの終焉を示している。
低食料自給率、低再生可能エネルギー比率、国民の2/3(8600万人)が新潟県相当の面積に密集している現状は、
工業化社会の残した大きな課題だと思うし、そこに多くのチャンス(就労や住環境改善の余地)が大いにあるという事である。
これからは、覇権・収奪・世代間贈与では無く、皆が仕事を持てる社会を目指すべきだと思う。
大きな発想の転換が必要な時期だと思う。
毒ある老人から
2012年8月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
資本主義が限界に達しており、文明の転換を迫られているという内容だが、他著書からの参照以外(この本からこれらの参照著書を読むにはいいかもしれない)は著者の個人的感想レベルの内容が多い。本書の内容は文明の転換という非常に大きなテーマを扱っているので、これだけのテーマで本を書くのであれば、著者も自分から調べた内容で書くべき。
本の題名から、もっと濃い内容を期待していたが、著書の感想的内容だったので、正直ちょっとがっかりした。
本の題名から、もっと濃い内容を期待していたが、著書の感想的内容だったので、正直ちょっとがっかりした。
2020年9月19日に日本でレビュー済み
いまの米・中の覇権闘争において、過去の文明遷移をみていると「規制をどう操るか」次第なのかと感じる。
1968年に世界2位になった驚異のモノづくり大国日本とそれに続くドイツに、米国は1980年代に金融業にシフトすることで成長の階段を変えた。1994年から「年次改革要望書」という米国からの”内政干渉”により、日本を経済規定するルールをしいている米国は日本の成長エンジンを自国の成長につなげることができた。ここ30年の米国の「再」成長は日本との依存関係が強く、いまそこに中国が刺しにきているときに日本の位置づけがあらためて大きいのだ。
<ほかに面白かった点>
競争がないことがどう作用するか。自動車会社は米国では3社しかなく、日本で10社、中国で50社となっている。
スペインの新大陸で得られた銀は「無敵艦隊(軍事)」と「宮殿(建物)」になって生産財にまわされなかった。金銀財宝はそのまま生産国のオランダに流れ、スペインは得をしなかったことになる。イギリスの新興は社会の安定性(1200年以降英国はきわめて安定)、人口動態(1300-1760年そこまで人口がふえず、貴族があんていていきに世襲できた)という偶発的要素で「海の時代」になったときにたまたま欧州という「陸の国」から距離があったことによるポジションパワーによるものだった。
1968年に世界2位になった驚異のモノづくり大国日本とそれに続くドイツに、米国は1980年代に金融業にシフトすることで成長の階段を変えた。1994年から「年次改革要望書」という米国からの”内政干渉”により、日本を経済規定するルールをしいている米国は日本の成長エンジンを自国の成長につなげることができた。ここ30年の米国の「再」成長は日本との依存関係が強く、いまそこに中国が刺しにきているときに日本の位置づけがあらためて大きいのだ。
<ほかに面白かった点>
競争がないことがどう作用するか。自動車会社は米国では3社しかなく、日本で10社、中国で50社となっている。
スペインの新大陸で得られた銀は「無敵艦隊(軍事)」と「宮殿(建物)」になって生産財にまわされなかった。金銀財宝はそのまま生産国のオランダに流れ、スペインは得をしなかったことになる。イギリスの新興は社会の安定性(1200年以降英国はきわめて安定)、人口動態(1300-1760年そこまで人口がふえず、貴族があんていていきに世襲できた)という偶発的要素で「海の時代」になったときにたまたま欧州という「陸の国」から距離があったことによるポジションパワーによるものだった。
2012年3月26日に日本でレビュー済み
個人主義、近代的合理主義、競争原理、科学万能等を特徴とする
現代の資本主義は、その背景に一神教の世界観を持ち、
自然を人間が征服する対象として捉える。そして、それは、
常に、アメリカ大陸発見や先端的な金融市場など、未開の地
を必要とする文明である。
しかし、未開の地(フロンティア)がなくなったことで
資本主義は限界に達しており、まさに今、文明の転換点
にあるとする。
これからの新しい時代は、多神教的で自然に人間が生かされている
という考えが中心となり、贈与を重視する人間本来の世界に回帰する
と言っている。そしてその新しい世界をリードする役割を日本
が果たせるのではないか、との希望を与えてくれる。
本書で示される大きな時代の流れは、歴史観に根ざしていて
とても説得力がある。我々は、西洋の視点から作られた
人類の歴史をもう一度再構築し直す必要があるだろう。
現代の資本主義は、その背景に一神教の世界観を持ち、
自然を人間が征服する対象として捉える。そして、それは、
常に、アメリカ大陸発見や先端的な金融市場など、未開の地
を必要とする文明である。
しかし、未開の地(フロンティア)がなくなったことで
資本主義は限界に達しており、まさに今、文明の転換点
にあるとする。
これからの新しい時代は、多神教的で自然に人間が生かされている
という考えが中心となり、贈与を重視する人間本来の世界に回帰する
と言っている。そしてその新しい世界をリードする役割を日本
が果たせるのではないか、との希望を与えてくれる。
本書で示される大きな時代の流れは、歴史観に根ざしていて
とても説得力がある。我々は、西洋の視点から作られた
人類の歴史をもう一度再構築し直す必要があるだろう。