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貧しい出版者 政治と文学と紙の屑 単行本 – 2017/12/22
荒木優太
(著)
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貧しくたって、読みたい、書きたい、届けたい。
同時代の小説家/活動家でありながら、出会うことのかなわなかった小林多喜二と埴谷雄高。彼らを軸に、政治と文学の不思議なつながりを鮮やかに描き出す、貧しくも冒険的な文学研究の書。
新進気鋭の在野研究者、荒木優太の処女作が大幅増補で堂々の復活!!
2013年に『小林多喜二と埴谷雄高』という書名で自費出版され大きな話題となった処女作(本書第一部)に、新たな序文と論考群(「第二部 貧しいテクスト論四篇」「第三部 自費出版録」)を加え、待望の書籍化!!
ネットワークに憑かれているアクティヴな意識高い系と、
ネットワークに疲れてひきこもる単独者と。
同志に密告されて虐殺された戦前共産党の非転向の英雄と、
政治から遠く離れて『死霊』なる長篇小説に戦後を捧げた転向者と。
つまりは(?)、政治と文学と。
紙で闘った二人の小説家/運動家は同じ政治組織に属していながらも一度として出会うことはなかった。
だが、彼らの遺した紙屑=ミッシングリンクはたしかにその「つながり」を伝えている。
そして、現代のウェブ環境を生きる、我々の貧しい「つながり」の命運もそこに。
有限なリテラシーとライブラリーのなかで「アクティヴィスト」と「ひきこもり」を横断しながら、
ありえたかもしれない出会いの場所を望見=冒険する。
闘え。すなわち、読んで、書いて、届けろ。もしも世界を変えたいのならば。
----------------------------------------------------------------------------
多喜二にとって、プロレタリア文学とは貧困者を描く文学である以前に、読書環境の貧困を前提とする文学だったのではないか。比喩的にいえば、テクストのプロレタリアが存在する。共産党員のバイブル、『共産党宣言』によればプロレタリア階級の「労働者は祖国を持つてゐない」。それと同じように宛先をなくし、安住すべき場所を失ったテクストが存在するのではないだろうか。テクスト散在的な文学観を参照した時、埴谷の文学論の無批判的な出発点が明らかになるように思われる。つまり、埴谷はリテラシーとライブラリーの貧困の可能性を予め無視することで初めて、文学の「無限」の語りを獲得しているのではないか。
(中略)
埴谷が「白紙」について語る時、「無限無終の果てもなき何かの産出器」といったように、常にその「無限」性が強調される。何も書かれていないということは、裏返せば、可能不可能含めて何物でも書けるということだ。虚無的かつ虚構的な虚体とは、このようなイメージの純粋な概念化であった。しかし、「白紙」が無限であったとして、白紙に書かれたテクストを保存する場所、閲覧する場所、ライブラリーは無限足り得ないのではないか。テクストの支持体は「白紙」だけではないし、「白紙」に印字された、その「白」黒のコントラストの文字列が汚されることなく一定期間保存され続けるという事態は決してあらゆるテクストに妥当するものではない。保存されるのは寧ろ一部の特権的なものに限定されることを流通の不安は教えている。
(中略)
埴谷には多喜二にあった流通の不安が存在しない。テクストが誰にも届かないのではないか、テクストに接近する機会が剥奪された者が多数存在するのではないかという発想がない。皮肉なことに、位階制を特徴とした政治から何とか文学を救い出そうとした埴谷の一連の試みは、(埴谷がいう意味で)「政治」的文学規定を定めて、そこから小文字のテクストを排除すること、言い換えればテクストに位階制を導入することで遂行されたようにみえる。
(第四章 政治「と」文学 より抜粋)
同時代の小説家/活動家でありながら、出会うことのかなわなかった小林多喜二と埴谷雄高。彼らを軸に、政治と文学の不思議なつながりを鮮やかに描き出す、貧しくも冒険的な文学研究の書。
新進気鋭の在野研究者、荒木優太の処女作が大幅増補で堂々の復活!!
2013年に『小林多喜二と埴谷雄高』という書名で自費出版され大きな話題となった処女作(本書第一部)に、新たな序文と論考群(「第二部 貧しいテクスト論四篇」「第三部 自費出版録」)を加え、待望の書籍化!!
ネットワークに憑かれているアクティヴな意識高い系と、
ネットワークに疲れてひきこもる単独者と。
同志に密告されて虐殺された戦前共産党の非転向の英雄と、
政治から遠く離れて『死霊』なる長篇小説に戦後を捧げた転向者と。
つまりは(?)、政治と文学と。
紙で闘った二人の小説家/運動家は同じ政治組織に属していながらも一度として出会うことはなかった。
だが、彼らの遺した紙屑=ミッシングリンクはたしかにその「つながり」を伝えている。
そして、現代のウェブ環境を生きる、我々の貧しい「つながり」の命運もそこに。
有限なリテラシーとライブラリーのなかで「アクティヴィスト」と「ひきこもり」を横断しながら、
ありえたかもしれない出会いの場所を望見=冒険する。
闘え。すなわち、読んで、書いて、届けろ。もしも世界を変えたいのならば。
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多喜二にとって、プロレタリア文学とは貧困者を描く文学である以前に、読書環境の貧困を前提とする文学だったのではないか。比喩的にいえば、テクストのプロレタリアが存在する。共産党員のバイブル、『共産党宣言』によればプロレタリア階級の「労働者は祖国を持つてゐない」。それと同じように宛先をなくし、安住すべき場所を失ったテクストが存在するのではないだろうか。テクスト散在的な文学観を参照した時、埴谷の文学論の無批判的な出発点が明らかになるように思われる。つまり、埴谷はリテラシーとライブラリーの貧困の可能性を予め無視することで初めて、文学の「無限」の語りを獲得しているのではないか。
(中略)
埴谷が「白紙」について語る時、「無限無終の果てもなき何かの産出器」といったように、常にその「無限」性が強調される。何も書かれていないということは、裏返せば、可能不可能含めて何物でも書けるということだ。虚無的かつ虚構的な虚体とは、このようなイメージの純粋な概念化であった。しかし、「白紙」が無限であったとして、白紙に書かれたテクストを保存する場所、閲覧する場所、ライブラリーは無限足り得ないのではないか。テクストの支持体は「白紙」だけではないし、「白紙」に印字された、その「白」黒のコントラストの文字列が汚されることなく一定期間保存され続けるという事態は決してあらゆるテクストに妥当するものではない。保存されるのは寧ろ一部の特権的なものに限定されることを流通の不安は教えている。
(中略)
埴谷には多喜二にあった流通の不安が存在しない。テクストが誰にも届かないのではないか、テクストに接近する機会が剥奪された者が多数存在するのではないかという発想がない。皮肉なことに、位階制を特徴とした政治から何とか文学を救い出そうとした埴谷の一連の試みは、(埴谷がいう意味で)「政治」的文学規定を定めて、そこから小文字のテクストを排除すること、言い換えればテクストに位階制を導入することで遂行されたようにみえる。
(第四章 政治「と」文学 より抜粋)
- 本の長さ312ページ
- 言語日本語
- 出版社フィルムアート社
- 発売日2017/12/22
- ISBN-10484591705X
- ISBN-13978-4845917051
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
紙の闘争で世界が変わると思っていた…出会うことの叶わなかった二人の小説家/運動家、小林多喜二と埴谷雄高。「アクティヴィスト」と「ひきこもり」を横断しながら、彼らが遺した紙屑につながりの言葉を望見=冒険する、貧しくも勇猛果敢な文学研究の書、ここに誕生!新進気鋭の在野研究者の処女作が大幅増補で堂々の復活。
著者について
【著者プロフィール】
荒木優太(あらき・ゆうた)
1987年東京生まれ。在野研究者。専門は有島武郎。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。ウェブを中心に大学の外での研究活動を展開している。2015年、「反偶然の共生空間──愛と正義のジョン・ロールズ」が第59回群像新人評論賞優秀作となる。著書に『これからのエリック・ホッファーのために──在野研究者と生の心得』(東京書籍、2016)。
荒木優太(あらき・ゆうた)
1987年東京生まれ。在野研究者。専門は有島武郎。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。ウェブを中心に大学の外での研究活動を展開している。2015年、「反偶然の共生空間──愛と正義のジョン・ロールズ」が第59回群像新人評論賞優秀作となる。著書に『これからのエリック・ホッファーのために──在野研究者と生の心得』(東京書籍、2016)。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
荒木/優太
1987年東京生まれ。在野研究者。専門は有島武郎。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。ウェブを中心に大学の外での研究活動を展開している。2015年、「反偶然の共生空間―愛と正義のジョン・ロールズ」が第59回群像新人評論賞優秀作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1987年東京生まれ。在野研究者。専門は有島武郎。明治大学文学部文学科日本文学専攻博士前期課程修了。ウェブを中心に大学の外での研究活動を展開している。2015年、「反偶然の共生空間―愛と正義のジョン・ロールズ」が第59回群像新人評論賞優秀作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : フィルムアート社 (2017/12/22)
- 発売日 : 2017/12/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 312ページ
- ISBN-10 : 484591705X
- ISBN-13 : 978-4845917051
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,050,325位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
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