弁護士である鳥飼氏が経営者の立場に立って「内部統制」の意味を解いた本である。
「自助論」を引用し、人々、企業の幸福と繁栄は、「制度、法律の力によるものと考えがちだが、自律的精神によるものである」とし、制度や法律に受身ではなく、繁栄に生かそうとする自律的、主体的姿勢を確立すべきであり、そのような経営者の「自由な精神」に基づく豊かさ(経済的豊かさ)と潤い(一般社会から尊重される存在)を実現した「豊潤なる企業」のみが成長すると述べている。
「売上確保」と「法令遵守」は車の両輪と認識されることが多い。そのため、両者が二律背反する場合に、法令遵守よりも売上確保を優先してしまうケースがある。これまで経営者は、「社内の不祥事の状況を把握できていなかった」とすれば、責任を逃れられたが、内部統制、会社法、公益通報者保護法など最近の法令によって「知らなかった」では済まされなくなってきた。すなわち、車の両輪論が、「売上確保」よりも「法令遵守」を優先するという優先順位論に移行したと述べている。このような動向は、必ずしも経営者自身十分に認識しているわけではない。
「自助論」の解説以外は、いかにも法律の専門家の著作であるが、「法律の活火山化」「訴訟社会であるアメリカのようなに経営者に対する損害賠償責任の追及が多くなる」といった予測には目を背けるわけにはいかないように思う。
豊潤なる企業―内部統制の真実 (日本語) 単行本 – 2007/8/1
鳥飼 重和
(著)
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本の長さ237ページ
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言語日本語
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出版社清文社
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発売日2007/8/1
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ISBN-104433337773
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ISBN-13978-4433337773
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
すべての企業経営者に成長の原理原則を問う!信頼とはなにか?理念とはなにか?企業価値とはなにか?その答えがここにある!法化社会はもはや不正を見逃さない。豊かさと潤いのある企業のみが成長する!企業法務のトップランナーがいま、解き明かす。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
鳥飼/重和
鳥飼総合法律事務所代表弁護士。中央大学法学部卒業。税理士事務所勤務後、弁護士登録。企業法務、税務訴訟などを専門分野としている。日本税理士連合会顧問、中小企業庁事業承継協議会審議委員、日本取締役協会内部統制部会副座長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
鳥飼総合法律事務所代表弁護士。中央大学法学部卒業。税理士事務所勤務後、弁護士登録。企業法務、税務訴訟などを専門分野としている。日本税理士連合会顧問、中小企業庁事業承継協議会審議委員、日本取締役協会内部統制部会副座長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 清文社 (2007/8/1)
- 発売日 : 2007/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 237ページ
- ISBN-10 : 4433337773
- ISBN-13 : 978-4433337773
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 1,040,771位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 729位ビジネス法入門
- - 14,614位法律入門
- - 41,300位投資・金融・会社経営 (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
5つ星のうち3.8
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ベスト500レビュアー
おもしろかった。
自助の精神による 豊かさと潤いを求める。
サミュエルスマイルズの本を翻訳した中村正直
「西国立志篇」が、明治日本に 影響を与えた。
その後 竹内均が訳して「自助論」とした。
豊田佐吉、三宅雪嶺
内部統制の本質を理解するには、
リーガルマインドがわからなければいけないと説く。
中村正直が影響を受けたのが、佐藤一斎だった。
明治の国のあり方を さし示し、形成した。
それが、いまは 忘れられているのである。
天は自ら助くるものを助ける。
自助の精神と主体的・自律的な精神を
内部統制の柱とすべきである。
ジョンソン&ジョンソンが、「我々の信条」で
企業の責任を語っているのである。
残念なのが 日本の企業のクレドではないことだ。
自助の精神による 豊かさと潤いを求める。
サミュエルスマイルズの本を翻訳した中村正直
「西国立志篇」が、明治日本に 影響を与えた。
その後 竹内均が訳して「自助論」とした。
豊田佐吉、三宅雪嶺
内部統制の本質を理解するには、
リーガルマインドがわからなければいけないと説く。
中村正直が影響を受けたのが、佐藤一斎だった。
明治の国のあり方を さし示し、形成した。
それが、いまは 忘れられているのである。
天は自ら助くるものを助ける。
自助の精神と主体的・自律的な精神を
内部統制の柱とすべきである。
ジョンソン&ジョンソンが、「我々の信条」で
企業の責任を語っているのである。
残念なのが 日本の企業のクレドではないことだ。
2007年11月17日に日本でレビュー済み
コンプライアンス遵守という言葉が企業社会に浸透して久しい。
しかし、当初は驚きで見ていた企業の不祥事が続くと「またか」という視線で企業を眺め、コンプライアンスというものがお題目でしかないことに気がつく。
どんなに高い企業理念を掲げていても、どんなに経済界で著名な経営者でも、たったひとつの不祥事が命取りになる昨今であるが、どうして不祥事が知れたのかと考えれば社員やパートによる内部告発が発端となっている。
そもそも、かつては社員やパートというのは企業にとって運命共同体の一員だったのに、なぜに豹変するのか。
それは、かつては運命共同体の一員だったのが、いまや、使い捨てだからである。株主配当を高く、一株あたりの評価を高める、という株主への利益還元を優先させたからだが、売上が減少すると手っ取り早く経費の削減、人件費の削減で企業収益を維持してきたからである。
欧米の投資家は企業の存続よりも短期間での投資先としてしか企業をみておらず、収益評価が下がると経営者は自分の地位と名誉だけを保全するために怯え、構造改革の名のもとに見た目だけの収益構造のドラフトを描いてしまう。
その繰り返しのなかから無理が生じ、本来、社員もパートも企業にとってお客様の一人であることを忘れ去った経営者の愚策から悲劇は生まれる。
近年、コンプライアンス遵守、内部統制に関するリスクマネジメントとしてのノウハウ物は多々出版されているが、冒頭から倫理観を訴える本書は極めて珍しい。
本書は内部統制について税務を専門とする弁護士の立場からの解説でもあるが、内部統制においてはノウハウだけでは足りず、経営者、ひいては末端の社員に至るまでも人間性を高める志が無ければ企業は未来永劫までも成長存続はできないと警鐘を鳴らしている。 その具体例として『セルフ・ヘルプ』サミュエル・スマイルズ著を紹介されているが、その日本で最初に『西国立志編』として翻訳をした中村正直という人物も幕臣の儒者からロンドン留学を果たした立志伝中の人であり、多くの後進に影響を与えている。
明治の初めに和魂洋才を唱えた明治人の気概を取り戻せという著者の訴えが行間から読み取れたが、いかがなものだろうか。
確か、民権思想に目覚めた板垣退助も末端に至る庶民までもが同じ志を抱かなければ、近代国家の存立はありえないと説いたはずだが、現代は逆行するばかりである。
本書を著した氏は現代の民権思想の旗手かもしれない。
しかし、当初は驚きで見ていた企業の不祥事が続くと「またか」という視線で企業を眺め、コンプライアンスというものがお題目でしかないことに気がつく。
どんなに高い企業理念を掲げていても、どんなに経済界で著名な経営者でも、たったひとつの不祥事が命取りになる昨今であるが、どうして不祥事が知れたのかと考えれば社員やパートによる内部告発が発端となっている。
そもそも、かつては社員やパートというのは企業にとって運命共同体の一員だったのに、なぜに豹変するのか。
それは、かつては運命共同体の一員だったのが、いまや、使い捨てだからである。株主配当を高く、一株あたりの評価を高める、という株主への利益還元を優先させたからだが、売上が減少すると手っ取り早く経費の削減、人件費の削減で企業収益を維持してきたからである。
欧米の投資家は企業の存続よりも短期間での投資先としてしか企業をみておらず、収益評価が下がると経営者は自分の地位と名誉だけを保全するために怯え、構造改革の名のもとに見た目だけの収益構造のドラフトを描いてしまう。
その繰り返しのなかから無理が生じ、本来、社員もパートも企業にとってお客様の一人であることを忘れ去った経営者の愚策から悲劇は生まれる。
近年、コンプライアンス遵守、内部統制に関するリスクマネジメントとしてのノウハウ物は多々出版されているが、冒頭から倫理観を訴える本書は極めて珍しい。
本書は内部統制について税務を専門とする弁護士の立場からの解説でもあるが、内部統制においてはノウハウだけでは足りず、経営者、ひいては末端の社員に至るまでも人間性を高める志が無ければ企業は未来永劫までも成長存続はできないと警鐘を鳴らしている。 その具体例として『セルフ・ヘルプ』サミュエル・スマイルズ著を紹介されているが、その日本で最初に『西国立志編』として翻訳をした中村正直という人物も幕臣の儒者からロンドン留学を果たした立志伝中の人であり、多くの後進に影響を与えている。
明治の初めに和魂洋才を唱えた明治人の気概を取り戻せという著者の訴えが行間から読み取れたが、いかがなものだろうか。
確か、民権思想に目覚めた板垣退助も末端に至る庶民までもが同じ志を抱かなければ、近代国家の存立はありえないと説いたはずだが、現代は逆行するばかりである。
本書を著した氏は現代の民権思想の旗手かもしれない。
2007年10月30日に日本でレビュー済み
鳥飼先生の高潔な人柄が映し出されたような格調高い力作である。コンプライアンスを正面から捉え、株主やステークホルダーと企業、あるいは経営者との関係を教科書的に説いている。最近のTOB事例において、経済的な利益を犠牲にしてまで経営陣を支持する株主は株主権以外の経常取引で対価を受けているのではないか、などというゴシップ的勘繰りとは無縁の直球勝負。仕事でコンプライアンスに携わるものとして、斯くありたいと思う。実証的な研究書ではないが、経営者向けの優れた読み物としてお薦めする。
それにしても残念なのは、はみ出しに挿入された図の多くが、この名著を安く見せることはあっても付加価値を生んでいないことであり、その点において、野中郁次郎先生そのほか本邦の経営学者の著作のいくつかと共通している。文章だけで十分魅力的なのに。
それにしても残念なのは、はみ出しに挿入された図の多くが、この名著を安く見せることはあっても付加価値を生んでいないことであり、その点において、野中郁次郎先生そのほか本邦の経営学者の著作のいくつかと共通している。文章だけで十分魅力的なのに。