今、世間では報道の人が主観を言うべきかがちょっとした議論になっています。けれどこの高野さんの本を読むと、それがいかに的はずれなナンセンスな事かと分かりそうです。
高野さんは各地に行き、滞在して、見て、経験した人なのに変に主張が強くない、偏ってもいないと感じます。相当酷い扱いや不正義にも数え切れない位身を持って味わっただろう事も想像に難くない、のに、多情多感に悪を憎む論調にもない。でも路傍の石を決め込んで責任は我になしでもない。それより他と比較したり、その物事の経緯やルーツを探り、多角的に説明する。苛ついた時のノウハウの様でもある。で、長年のキャリアなのに一介の旅人の立ち位置や目線から語る。これほど地球を説明出来る人もいないのではないでしょうか。
だから、そんな人の言葉を拘束する様な冒頭の様な議論はナンセンスだと思えています。最大限に話して欲しい位です。要は報道人に高野さんの様な人がいないからが、今起こっている議論の根でしょうね。
でも私も本の中にある松本仁一さんの2冊の本は読んだし、あまりに素晴らしくてもう少し知りたく思い手紙を出したら、今は(その時は)東京の朝日新聞本社に戻られていてなんと返信まで下さった。同じく各地で写真とルポを繰り返す桃井和馬さんも全く同じだった。テレビ的な報道の“目立つ”人が本当のプロではないんだな、と帰結しそうです。
この高野さんの本はソマリランドやアフリカを知る書物だけでなく、各地、各出来事、異文化に接した時の指南書としても、観光旅行に行く心構えをガイドさんから聞くその言葉としても有効、というか、誰にも読まれたい本だと思います。なんなら外国でなく、日本の国内の旅行だとしても同じ目線が有効で大切だなぁと思えます。それがないから、こんなに多くの日本人が海外に行き、留学もするのに、彼の国の困難に自分がアクションをしようという発想には全くならない今の日本人の現状になっているんだと私には思えます。本当の意味で世界に目が開くのは、見てるだけ、知ってるだけの域を越えてこそだと思う。日本がそうなるにはもう少し時代が下る必要があるのかも。この本はそこを後押しする大きな書籍だとも思います。
そんな新たな時代には、先の議論も外国とのあり方も今と変わっていそうです。そうなればアジア各国とも共通理解で共生出来ていそうに私は思います。
謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア (集英社文庫) (日本語) 文庫 – 2017/6/22
高野 秀行
(著)
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本の長さ592ページ
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言語日本語
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出版社集英社
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発売日2017/6/22
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ISBN-104087455955
-
ISBN-13978-4087455953
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
“崩壊国家ソマリア”の中で奇跡的に平和を達成しているという謎の独立国ソマリランド。そこは“北斗の拳”か“ONE PIECE”か。それとも地上の“ラピュタ”なのか。真相を確かめるべく著者は世界で最も危険なエリアに飛び込んだ。覚醒植物に興奮し、海賊の見積りをとり、イスラム過激派に狙われながら、現代の秘境を探る衝撃のルポルタージュ。第35回講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
高野/秀行
1966年東京都生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。早稲田時代の青春や日本での異文化体験を描いた作品を執筆。2006年『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞を受賞。13年『謎の独立国家ソマリランド』で第35回講談社ノンフィクション賞、14年同作で第3回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1966年東京都生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。早稲田時代の青春や日本での異文化体験を描いた作品を執筆。2006年『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞を受賞。13年『謎の独立国家ソマリランド』で第35回講談社ノンフィクション賞、14年同作で第3回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2017/6/22)
- 発売日 : 2017/6/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 592ページ
- ISBN-10 : 4087455955
- ISBN-13 : 978-4087455953
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 16,976位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 5位アジア・アフリカの地理・地域研究
- - 63位集英社文庫
- - 727位社会学概論
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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ベスト1000レビュアー
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55人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年8月26日に日本でレビュー済み
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とにかく面白い。ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまう。著者の語り口がおもしろいし、ソマリランド・ソマリア・ソマリ人の文化自体も興味深い。
地理や歴史が苦手でイランとイラクの違いもよくわからないぐらいだったが、突然ソマリアやソマリ人について詳しくなってしまった。
ソマリ人の氏族や個人名をそのまま書かれるとつらいところだったと思うが、著者の配慮により氏族名に便宜的に日本の武将の名前をあてたり、個人にも適度にアダ名がついていてわかりやすい。
地理や歴史が苦手でイランとイラクの違いもよくわからないぐらいだったが、突然ソマリアやソマリ人について詳しくなってしまった。
ソマリ人の氏族や個人名をそのまま書かれるとつらいところだったと思うが、著者の配慮により氏族名に便宜的に日本の武将の名前をあてたり、個人にも適度にアダ名がついていてわかりやすい。
ベスト1000レビュアー
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ぐちゃぐちゃなソマリアと対照的に、田舎だが平和なソマリランドの雰囲気がよく伝わってくる。
単なる旅行記ではなく、紛争続きだったソマリランドが和平を達成した理由、ソマリアが相変わらずぐちゃぐちゃな理由、西洋の文献では知りえない氏族の力関係や、ソマリランドにおける民主主義政体など、学術的にも大変興味深い内容になっている。
筆者の他の書籍より少々まじめな印象もあるが、大変良い本だった。
単なる旅行記ではなく、紛争続きだったソマリランドが和平を達成した理由、ソマリアが相変わらずぐちゃぐちゃな理由、西洋の文献では知りえない氏族の力関係や、ソマリランドにおける民主主義政体など、学術的にも大変興味深い内容になっている。
筆者の他の書籍より少々まじめな印象もあるが、大変良い本だった。
2019年3月5日に日本でレビュー済み
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アフリカに興味を持ち、そういえば「ソマリア内戦」ってあったよな…でアマゾンを検索してたどり着いたのがこの本でした。ソマリア内戦後、ソマリ人は5つの地域に分かれ、そのうち3つが「ソマリア」という名前の国家と関わっている…ということが分かりました。それから、アフリカは「氏族の争いが多くてなかなかまとまらない」という話を聞きましたが、なんとその氏族を日本の戦国武将にたとえて説明するという手法に度肝を抜かれました。実は戦国武将について詳しくはないのですが、頼朝や義経、清盛など有名な人についてはドラマを見たりしたのでなんとなく分かった気になりました。
著者が危険と膨大な費用をかけて書き上げた渾身のルポルタージュでありますが、それよりも、カート(依存性のある植物)をかじり、ソマリアの日本支局長になり、声がでかくなり、ときどきソマリア人に言い勝てるようになったりして「ソマリア化」している著者が面白いです。取材で多大な協力をしてくれたワイヤッブさんから金のSOSがあれば、すぐ渋谷センター街の大黒屋からお金を送ってしまうところはまるで海外ソマリア人「ディアスポラ」。
ゲリラに銃撃された体験も描いた続編も読みたくなりました。
著者が危険と膨大な費用をかけて書き上げた渾身のルポルタージュでありますが、それよりも、カート(依存性のある植物)をかじり、ソマリアの日本支局長になり、声がでかくなり、ときどきソマリア人に言い勝てるようになったりして「ソマリア化」している著者が面白いです。取材で多大な協力をしてくれたワイヤッブさんから金のSOSがあれば、すぐ渋谷センター街の大黒屋からお金を送ってしまうところはまるで海外ソマリア人「ディアスポラ」。
ゲリラに銃撃された体験も描いた続編も読みたくなりました。
2015年9月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者の本はほとんど読んでいますが、
文句なしに渾身の一冊。
ソマリアというリアル北斗の拳の世界で、
内部までぐいぐい入り込んで、ここまでまとめ上げた内容は、
外国メディアでも存在しないはず。
かなり厳しい世界ではあるが、楽しく読めるのは、
著者ならではのユーモアがところどころに散りばめられているから。
そして単に取材として終わるのではなく、
現地の人と濃密な人間関係を築いて、それをずっと大切にしているのが
素晴らしいと思った。
次は、豪腕女性局長のハムディに日本に来てもらって、
是非ドキュメンタリーの映像と本にして欲しい。
文句なしに渾身の一冊。
ソマリアというリアル北斗の拳の世界で、
内部までぐいぐい入り込んで、ここまでまとめ上げた内容は、
外国メディアでも存在しないはず。
かなり厳しい世界ではあるが、楽しく読めるのは、
著者ならではのユーモアがところどころに散りばめられているから。
そして単に取材として終わるのではなく、
現地の人と濃密な人間関係を築いて、それをずっと大切にしているのが
素晴らしいと思った。
次は、豪腕女性局長のハムディに日本に来てもらって、
是非ドキュメンタリーの映像と本にして欲しい。