"学者、物知りとは書物を読破した人のことだ。だが思想家、天才、世界に光をもたらし、人類の進歩をうながす人とは、世界という書物を直接読破した人のことだ。"読書を通じて、ただ他人の思考を追体験するのではなく【自分で考える事の大切さ】そして、量を求めるのではなく質、評価の定まった【古典を読む重要性】を訴える本書は、ベストセラーだけは溢れかえる今だからこそあらためて手に取りたい。
個人的には、ヘーゲルと対立した実存哲学の祖として、あるいはニーチェに影響を与えた哲学者としてのイメージが強く、本書については随分前に軽く目を通しただけで当時は印象が薄かったわけですが。そして、よく引用される『読書とは自分の頭でなく、他人の頭で考えること』という言葉だけを文脈無視して捉えると【読書や多読する事自体への否定】とも誤読されがち?な本書ですが。あらためて再読して、むしろ本書に込められた著者の文化芸術、知への真摯な想いが伝わってきて、同じく文化芸術の可能性を信じる本屋の一人として嬉しかった。
また本書で警鐘を鳴らしている【言葉の疲弊】や【匿名による言語活動】からくる【個々人の思考能力やモラルの低下】による文化や社会規範の衰退、あるいは、その結果として、年がら年中【お金目当てに書き記した最新刊】が大衆に求められていたことへの嘆きは、1850年代に発刊されたにも関わらず、何故かSNS時代の今【目の前で起きている事】を予見しているかのようで、こちらも驚かされました。歴史は繰り返す。そんな言葉が自然と浮かびます。
読書する、あるいは読書を始めようとしている誰かに。または最近の【ベストセラー】にモヤモヤを抱えている。私の様な偏屈な誰かにもオススメ。
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