内田樹を敬愛する岡田氏が、ついに内田氏との対談を実現させた。しかし、いまひとつ議論が噛み合わない。対談をきっかけとして新しいアイデアが出たという訳でもない。対談本として出す意義はあったのだろうか。
内田氏は岡田氏が好きではないようだ。このことは、本書で岡田氏が「とりあえず私の言うことを否定的にとらえないで聞いてよ」という発言をしていることや、内田氏が対談から一年半も原稿の手直しを放置していた事からも察せられる。岡田氏の興味の中心が「能率的で要領の良い生き方や新規ビジネスの開拓」などにあるのに対し、内田氏はむしろ倫理や人間の成熟といった「目には見えないもの」を大事にする人だからだろう。
とはいえ、私の心に残る会話もいくつかあった。特に、内田氏の洞察力に目を見張るような文章が散見される。以下に、それらを一部簡素化して記す。
・内田 いましてる努力に対して未来の報酬が約束されないと働く気がしないという人が増えてきたけど、いましてる努力に未来の報酬が約束された時代なんて、これまでだってなかったんだよ。努力と報酬が相関するというのは、嘘なの。努力と報酬は原理的に相関しないの、全然。するときもあるかもしれないけど、それは例外。
・岡田 能力と報酬も一致しないですよね。
・内田 しない。
・岡田 学生にもさんざん言って初めて「報酬は運である」って少しわかってもらえる。運だからこそ、成功したら他人に回さないといけないわけですよね。
・内田 成功が運って言葉の意味は、成功というのは基本的に他人が手を差し伸べてくれて、「あ、すいません」って引き上げてもらってようやく岸にたどり着いた、っていうようなことです。自分で這い上がったわけじゃないよ。
・内田 「真の勝者」は誰か?とよく聴かれます。「危機的状況を乗り越えるために正しい選択をするにはどういう能力がいるんでしょう?」とか。でも実は、そんな問いをしている時点で手遅れなんです。AとBのどちらを選んだら生き残る、どちらかを選んだら死ぬ、というような切羽詰まった「究極の選択」状況に立ち至った人は、そこにだとり着く前にさまざまな分岐点でことごとく間違った選択をし続けてきた人なんだから。
・岡田 ぼくも講演会で「どうやれば決断力が身につきますか?」と聞かれたときに「決断を迫られてるのはもう負け戦だから」って答えています(笑)。
・内田 本当にそのとおり!
・岡田 これがベストに決まっている、と考えているなら決断する必要なんかないですもんね。
-
・岡田 ぼくは大学なんていらないと思ってるんですよ。
・内田 いりますよ! あなたのような人が大学を壊したんだな(笑)。岡田さんみたいにわずかなトリガーで知的アクティビティが開花する人だじけじゃないんです。スローランナーっているんです。そっちのほうがマジョリティなんです。大学は後者のための装置なんです。
-
・岡田 ぼくは女であるだけで価値を認めて、えらいじゃんって思うから、好きになってくれる人がいるだけで、なんてありがたいんだと思う。誰でもOK(笑)。
・内田 人間社会が存立するために必須の制度については、設計基準が甘いんです。結婚もそう。「誰でもできる」というのが結婚制度を設計したときの第一の条件なんです。それがいまは、お互い死ぬほど愛し合って、尊敬しあって、あらゆる点で趣味や意見が一致して、というような関係じゃないと結婚生活は成立しないという話になっている。だから平気で「価値観の不一致」というような理由で離婚しちゃうでしょう。そんな高いレベルでの人間的一致が果たされなければ結婚しちゃいけないのだとしたら、人類はとっくに滅亡していますよ。
(引用ここまで)
ちなみに本書はイワシが表紙になっている。これは「周囲についていくばかりで主体性のない現代の日本人」を岡田氏が揶揄して本書で使った「イワシ化」という言葉に由来しているのだろう。
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評価と贈与の経済学 (徳間ポケット) 新書 – 2013/2/23
| 内田樹 (著) 著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます この著者の 検索結果 を表示 |
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本書で示されるのは、新しい「交易」と「共同体」のありかただ。貨幣も、情報も、評価も、動いているところに集まってくる。ならば、私たちはどのような動きをする集団を形成すればいいのか。
そのために個々ができる第一歩とは。キーワードは「情けは人のためならず」。若者と年長者の生態を読み解き、ポストグローバル社会での経済活動の本義にせまる変幻自在の対談。笑って、うなって、ひざを打つこと間違いなし!
そのために個々ができる第一歩とは。キーワードは「情けは人のためならず」。若者と年長者の生態を読み解き、ポストグローバル社会での経済活動の本義にせまる変幻自在の対談。笑って、うなって、ひざを打つこと間違いなし!
- 本の長さ251ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2013/2/23
- ISBN-104198635676
- ISBN-13978-4198635671
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
本書で示されるのは、新しい「交易」と「共同体」のありかた。貨幣も、情報も、評価も、動いているところに集まってくる。ならば、私たちはどのような動きをする集団を形成すればいいのか。そのために個々ができる第一歩とは。キーワードは「情けは人のためならず」。若者と年長者の生態を読み解き、ポストグローバル社会での経済活動の本義にせまる変幻自在の対談。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
内田/樹
1950年東京都生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授。凱風館館長。専門はフランス現代思想、武道論、映画論
岡田/斗司夫
1958年大阪府生まれ。社会評論家。大阪芸術大学客員教授。株式会社オタキング代表。FREEex代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1950年東京都生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授。凱風館館長。専門はフランス現代思想、武道論、映画論
岡田/斗司夫
1958年大阪府生まれ。社会評論家。大阪芸術大学客員教授。株式会社オタキング代表。FREEex代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2013/2/23)
- 発売日 : 2013/2/23
- 言語 : 日本語
- 新書 : 251ページ
- ISBN-10 : 4198635676
- ISBN-13 : 978-4198635671
- Amazon 売れ筋ランキング: - 239,570位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 1,345位経済学 (本)
- - 18,861位新書
- - 24,009位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
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2015年3月6日に日本でレビュー済み
岡田斗司夫は結局何を読者に伝えたいのだろうか?
個人の評価はどうすれば公平かつ平等な判断基準で付けられるのか全く言及されていない。Facebookのいいね!の数が個人の評価なのであるという主張だとしたら、あまりにも幼稚かつ稚拙な発想すぎる。
また岡田斗司夫はフリラックという仮想通貨のようなものを既に実験的に使用しているらしいですが、最近のネットの情報ではマネーロンダリングの危険性も問われている。
さらに、岡田斗司夫は自分でも述べている通り、そもそも「経済」には疎い人物。マクロ経済、ミクロ経済といった経済の基本すら十分理解しているのか?と思うほどだ。当然ながら財務のついても非常に疎い。
これらの点から総合的に判断すると、「経済的に疎い人物である岡田斗司夫が、経済の基本・法律を理解せず、勝手な仮想通貨などを既に運用しており、マネーロンダリングや税金逃れとも思われる手法を既に実践している」という非常に危険な行為をこの本で主張したかったのでろう、と私は解釈した。
当然ながら読むに値しない本である。
個人の評価はどうすれば公平かつ平等な判断基準で付けられるのか全く言及されていない。Facebookのいいね!の数が個人の評価なのであるという主張だとしたら、あまりにも幼稚かつ稚拙な発想すぎる。
また岡田斗司夫はフリラックという仮想通貨のようなものを既に実験的に使用しているらしいですが、最近のネットの情報ではマネーロンダリングの危険性も問われている。
さらに、岡田斗司夫は自分でも述べている通り、そもそも「経済」には疎い人物。マクロ経済、ミクロ経済といった経済の基本すら十分理解しているのか?と思うほどだ。当然ながら財務のついても非常に疎い。
これらの点から総合的に判断すると、「経済的に疎い人物である岡田斗司夫が、経済の基本・法律を理解せず、勝手な仮想通貨などを既に運用しており、マネーロンダリングや税金逃れとも思われる手法を既に実践している」という非常に危険な行為をこの本で主張したかったのでろう、と私は解釈した。
当然ながら読むに値しない本である。
2017年4月24日に日本でレビュー済み
なんでも最初の経済は、部族と部族の境界線上に落ちている物を「あっ、これは自分に対する贈り物だ」と思った人を始点として沈黙交易が始まったとのこと。また、もらったからお返しをしないといけないというので、そこに別の何かを置いておき、それが繰返された。そして、そこにはそもそも等価値のものを交換するという意味はなかったということ。
そういえば、この間観た映画「ローン・レンジャー」の中で、インディアン扮するジョニー・デップが、亡くなった白人が身に着けている(何に使うかよく分からない)物と自分の(何気ない)物を交換しているシーンがあったのを思い出しました。
普段から付き合っている経済学とは一味違った経済学を知ることができる。
そういえば、この間観た映画「ローン・レンジャー」の中で、インディアン扮するジョニー・デップが、亡くなった白人が身に着けている(何に使うかよく分からない)物と自分の(何気ない)物を交換しているシーンがあったのを思い出しました。
普段から付き合っている経済学とは一味違った経済学を知ることができる。







