「言語は、それを透かして外界をとらえる際のフィルターである」、
言語人類学では、おおむねこうした視点から言語を把握します。
このテーゼ(サピア・ウォーフ仮説)を少し敷衍すれば、
おもに依拠していることばに、外界の見え方や、
関係の網の目いかんも依拠することがあります。
本書では、こうした視点から外国語教育をとらえ返し、
有意義な「異文化との出会い」としての外国語学習を射程するものです。
それは即ち、比較の視点をも育み、翻って言語相対、
さまざまな言語の中に自国語を見出す国際理解の視点につながり、
国際交流の基礎をなす考えであるように思えます。
本書では、記号論の体系を用いながら、
文法や単語のレベルで構造的な分析を行っており、
ことばに対する感覚を養うのに適した書物であるように思います。
システム英単語と冠した単語集がありますが、
その発想として、仮に2つの言語が互いに間近にある際には、
等価的機能を有する語要素間に最小の差異を見出し、
以て弁別する仕方で概念定立をはかるための照応関係と、
コーパスという頻度フィルターを用いており、
それらによって言語的機能の明瞭化がある程度は可能になるようです。
そこにイメージや緩やかなリンケージを加味すると、
言語をコアとする文化相対、という概念も視野に入るのであり、
本邦における言語教育のねらいもまた、そのあたりにあるのでしょう。
本書では、さらに現存する英語教科書に関して、いくつかをとりあげるかたちで、
既述のような視点から比較分析を加えており、興味深いと思います。
ことばは時代や環境とともに進化したり、消退したりしますが、
英語その他も然りであり、相互間における影響関係なども考えれば、
人間はことばの海を泳いでいる、とも喩えられるかもしれません。
「流行語大賞」などはそのよい例でしょうが、
本書などもそうした感覚の養成に有益かとも思い、
関心の向きにおすすめしておきます。
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