山田詠美さんによる田辺聖子さんの追悼文を新聞で読んだ。デビュー当初から影響を受けた作家として挙げていたという。そこで知った夢見小説という括りの代表作が本作から三冊続く乃里子ものである。
フリーのデザイナーとして、そこそこの主人公、生きたいように生きられる友だちの美々、金持ちのボンボンでワイルドなプレイボーイ剛、対照的な幼なじみ五郎、妻子持ちの中年水野。
彼らに対する乃里子の思いを軽快に、的確に、過不足なく語ってくれる。その語り口の鮮やかさに酔う。言葉になりにくい感情や記憶を似合う場所に置いて言葉にする手ぎわがいい。シナリオとするならば、理解不能な出来事の連鎖がここでは流れるような滑らかさと、必然を持って流れていく。
鼻持ちならない自信家でボンボンの剛には何の隙間もなく会話もセックスも合わせられるのに、特等席の五郎には胸焦がれて距離を詰められないうちに、あろうことか、半ば与えたままに美々に攫われてしまう。もどかしさが加速していく流れを待つのは、、
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