(まえがきから抜粋)
「跳ぶ」ことの重要性
この本の副題 『空気はなぜ透明か』 は、第一章 常識の破壊、での例題から
とったものだ。
この一見不可思議な「問い」の意味はなんなのか、一体まともな「答え」なぞあ
るのか、その辺りは本文の中でおいおい語られる。ただ、ここではなぜこんなナ
ゾナゾを作ったのかということを述べよう。
これはもともと、私が新卒学生の採用面接向けに考えだしたものだ。
私との面接に辿り着くまでに、学生さんたちも大抵のことは試されている。ケー
ススタディをやってもらって情報処理能力や論理性を試される、グループ面接で
リーダーシップやコミュニケーション力を試される、適性試験で性格や志向を見
られる等々。皆さんよくぞ、くぐり抜けてくるものだ。そして最終関門として
私が待ち構える。
しかし敵(学生さん)もさるもの、準備は万端だ。応募先が20社、面接回数が40
回なんてヒトがザラにいる。大抵の質問に対して、模範解答がきちんと準備され
ている。「曖昧な問いに対しては、敢えて相手に問い返すべし」なんてことま
で、ちまたではノウハウ化・マニュアル化されているのだから驚きだ。
ただ、記憶力と演技力のテストをしているわけでないので、そんな典型的問いを
発して、典型的答えを聞いても仕方ない。
ならばどうするか。それなら受け身のとれないような、投げ方をしてみよう。ビ
ジネスでもなんでもない、知識の差も準備の差も出ないような「問い」を考えよ
う。それが「空気はなぜ透明か」だった。
そこで私が問うたものは、常識に縛られぬ「発想」の力だ。
私自身、19年の間、経営コンサルタント、戦略コンサルタントとして仕事をして
きて痛感してきたことがある。それは発想のジャンプの必要性だ。これは問題を
発見し、そして解決する、あらゆる局面でそうだ。
最近、問題発見力や問題解決力に関する色々な啓発書があるが、一般には問題
「解決」能力より問題「発見」能力の方が磨きにくい。
より対象とするモノの幅が広く、定型化が難しいからだ。
しかし、経営コンサルティングのように、解決手段の幅や種類が非常に広い場
合、問題解決も実は簡単ではない。そこには独創的な発想や新しい切り口が必要
になる。
ピラミッドや仮説だけでは大きく跳べない
戦略コンサルティングや企業戦略企画の実務において、ピラミッド式論理性と
分析で「答え」にたどり着くことはほとんどない。緻密な積み上げ方式では発想
のジャンプを得にくいからだ。発想のジャンプを得にくいだけでなく、限りな
い財力と人材を必要とするからだ。
仮の答え(仮説)をおいて、その検証という形で考えや作業を進めていく「仮説
思考」は、もちろん必須の方法だ。しかしこれまた、仮説の「質」次第で効
率的にもなれば非効率にもなる。
効率云々だけでなく、正しいか誤るかの問題もある。良い仮説を立てるというこ
とは、情報不足の中で答えを見透すことで、本質的に非常に高度な「技」であ
り、故に自分の今の思考能力・発想力以上には「跳べない」。発想力が貧しけれ
ば、その中での「正解」は創造的なものとはなりにくい。
では、実際の「戦略的かつ創造的な思考プロセス」において最も大事なもの
は何だろうか。もちろん基礎としての「論理」性や「重要」性(論点・議論
対象の重みを常に明確にすること)は言うまでもない。そして、その先にあるも
のは「視点・視座・切り口」と言われるものだ。
同じ事象を見ても人それぞれに感じ方は違う。常識的に見れば常識的な問題点や
結論しか出てこない。
物事をいかに観るか、そのポイントが視点、高さが視座、見透し方が切り口、と
言えるだろう。これらを、物事を正しく理解し見透す力として「観想力」と名付
けよう。
この書では、「ビジネス以外」「数字」というものを中心に、様々なタイプ
の戦略的な視点・視座・切り口を紹介していく。
特に第一章では、読者の中の隠れた常識、思考の檻を破壊する。そこでの最初の
例題が、「空気はなぜ透明か」だ。
この問いでは、ほとんどの人が、そもそも「何を聞かれているのかわからな
い」。常識的視点に囚われているが故である。他にも問いが「東京はなぜマン
ハッタンに比べて低層なのか」「イワシは何故値段が高くなったのか」と続く。
自由で正しい視点・視座・切り口を持つために、まずは常識発想を破壊しなけれ
ばならない。いかに自分が常識に縛られ、思い込みの捕囚(ほしゅう)となってい
るか、これらの問いを通じて、よく認識しよう。そしてそれを打破しよう。それ
なくして創造的戦略思考はありえない。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
物事をいかに観るか、そのポイントが「視点」、高さが「視座」、見透し方が「切り口」だ。これらを物事を正しく理解し見透す力として『観想力』と名付けよう。大きく広く物事を見て、本質を見抜き、発想を大きくジャンプさせる。そこにしかおそらく、次の時代への突破、ブレークスルーはない。自由で正しい視点・視座・切り口を持つために、貴方の中の隠れた常識、思考の檻を破壊する。そこでの最初の問いが、「空気はなぜ透明か」だ。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
著者について
三谷宏治(みたに・こうじ)
1964年大阪で生まれ、2歳半から福井で育つ。
福井県立藤島高校卒業後、浪人し上京。駿河台予備校を経て東京大学理科一類
に入学。
理学部物理学科に進学するも、学部卒での「文系就職」の途を選ぶ。
87年~96年、ボストン コンサルティング
グループ勤務。
内、91年夏~92年末までINSEAD留学。1年半のフランス、欧州生活を送る。
96年~2006年7月までアクセンチュア勤務。
03年~06年まで同社戦略グループ統括エグゼクティブ・パートナー。
現在、グロービス経営大学院客員助教授。企業研修、執筆・講演。企業アドバイ
ザー、大学及び高校、中学、小学校での教育活動などを手掛ける。
妻、長女、次女、三女と東京都世田谷区に在住
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
三谷/宏治
1964年大阪で生まれ、2歳半から福井で育つ。福井県立藤島高校卒業後、浪人し上京。駿河台予備校を経て東京大学理科一類に入学。理学部物理学科に進学するも、学部卒での「文系就職」の途を選ぶ。87年~96年、ボストンコンサルティンググループ勤務。内、91年夏~92年末までINSEAD留学。1年半のフランス、欧州生活を送る。96年~2006年7月までアクセンチュア勤務。03年~06年まで同社戦略グループ統括エグゼクティブ・パートナー。現在、企業研修、執筆・講演、企業アドバイザー、大学院・大学及び高校、中学、小学校での教育活動などを手掛ける。グロービス経営大学院客員助教授。妻、長女、次女、三女と東京都世田谷区に在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。