私は、美術も美術史も全く縁がない。しかも、私には美的センスのかけらもない。
しかし、著者は、『美術史とは、美術作品を介して「人間を知る」ことを最終的な目的としており、その作業はひいては「自分自身のことを知る」ことにいつかはつながるでしょう。だからこそ、美術史は哲学の側面を有しています。』という。確かにそうだと思ったし、縁のない美術が身近に感じたし、もしかしておもしろいかもしれないと思った。
第一章 美術史へようこそ
昔の絵は、今以上に伝えるために存在していたと言っても過言ではないし、絵にこめられたメッセージを読みとらないと本来の絵の意味は理解できない。だから、前提となる能力を鍛える必要があるらしい。それは、スケッチスキルとディスクリプションスキルの二つのスキル。前者は、ヴィジュアルイメージを扱うことに慣れるための、いわゆるスケッチ。ある作品の写真か実物を見ながら、ノートにスケッチすることで鍛える。後者は、絵を文章で説明すること。
いきなり挫折である。しかし、確かにこの二つは重要のように思う。美術に限らず、普通に仕事をしていても人に何かを説明する際に、この二つの能力があるのとないのでは全然違う。しかし、私は両方とも苦手である。
第二章 絵を”読む”
入り口でいきなり挫折しかけたが、数あるキリスト教主題の絵の中から、鍵を持っている場合はペテロとか、矢がささっている場合は聖セバスティアヌスとか、観ている人に誰を描いているかを伝える符号があるという話は面白い。知らなけれぱ意味をなさないけど、知っていれば、確かに絵を見た時に、単なる絵ではなくなるように思う。
第三章 社会と美術
『「なぜそのような作品がその時代にその地域で描かれたのか」、また「なぜそのような様式がその時代にその地域で流行したのか」という点を思考することこそ、「美術史」という学問でなされるべき内容なのです。』と著者がいうように、いつ、誰が、どこで、どのように制作したかだけでなく、美術作品がもつ社会的な機能を調べることが重要、ということで、具体的にいくつか例をあげて説明してくれている。
私でも知っているミレーの「落穂拾い」は、単に農民の素朴な姿を描いているというだけではなく、そこには階級差のある社会を描こうとしていたという。確かに深い。
第四章 美術の諸相
創る側の美的探究の側面として、「技法」と「ジャンル」について説明すると同時に、買う側の経済原理についても「パトロン」の存在を説明している。
これらの中で面白かったのは、「印象派」として有名なモネの「虹のパレット」と呼ばれる技法。いろいろと混色を重ねて様々な色を使って描くと、色のバリエーションに比して画面の明度は下がっていく。それをモネは、黒を追放すると同時に、明度を下げないために、できるだけ混色を避け、原色そのままか、原色からあまり混色をしていない色をとなりに置くことで、遠くから見さえすれば望みどおりの色として知覚できるような方法を選択した、という話。つまり、混色済みの「緑」と、原色の「青」と「黄」を混色せずにとなりに置いたものを比較してみたら分かる。確かに実物を見ると、単純にそのままの色で表現するより、明るく見える。素直に感動である。
第五章 美術の歩み
「ルネサンス」や「ロココ」といった時代区分別に、美術史の流れを概観する。
巻末にはさらに学びたい人へということで、目的別推薦文献リストがついている。より深い世界に行けるだろう。
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西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書) Kindle版
名画にこめられた豊かなメッセージを読み解き、絵画鑑賞をもっと楽しもう。ヨーロッパの中高生も学ぶ、確かなメソッドをベースにした新しい西洋美術史の教室へようこそ。
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2012/2/10
- ファイルサイズ67894 KB
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商品の説明
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
池上/英洋
1967年広島県生まれ。東京芸術大学卒業、同大学院修士課程修了。恵泉女学園大学人文学部准教授を経て國學院大學文学部准教授。専門はイタリアを中心とする西洋美術史・文化史。レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、中世からバロック時代の芸術の分析を通じて、社会構造や思想背景を明らかにする方法に定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
1967年広島県生まれ。東京芸術大学卒業、同大学院修士課程修了。恵泉女学園大学人文学部准教授を経て國學院大學文学部准教授。専門はイタリアを中心とする西洋美術史・文化史。レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、中世からバロック時代の芸術の分析を通じて、社会構造や思想背景を明らかにする方法に定評がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
名画にこめられた豊かなメッセージを読み解き、絵画鑑賞をもっと楽しもう。ヨーロッパの中高生も学ぶ、確かなメソッドをベースにした新しい西洋美術史の教室へようこそ。 --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00WE7PJHG
- 出版社 : 筑摩書房 (2012/2/10)
- 発売日 : 2012/2/10
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 67894 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 299ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 27,317位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 31位ちくまプリマー新書
- - 85位歴史学 (Kindleストア)
- - 116位歴史学 (本)
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2018年5月17日に日本でレビュー済み
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2021年7月31日に日本でレビュー済み
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美術史とは人間とその社会をより深く理解するための学問のひとつである、と著者は言います。美術史の定義から始まる本書は、絵の読み方がまず提示され、具体的に著名な絵から当時の社会や歴史背景を読んでいきます(本書実質のメイン)。絵の技法などの紹介を経て、最終章では時代区分別の美術史の流れが簡潔に書かれています。
全編を通じて美術史を多面的に学ぶことができ、その学問の奥深さを知ることができました。そして美術史を習得するにはキリスト教や世界歴史の知識が必要不可欠なこともよくわかりました。巻末で美術文化の終焉を危惧する著者の文章も印象的でした。入門書としてよくまとまっているので、美術史に興味を持った方はまず読んでおくべき一冊だと思います。
全編を通じて美術史を多面的に学ぶことができ、その学問の奥深さを知ることができました。そして美術史を習得するにはキリスト教や世界歴史の知識が必要不可欠なこともよくわかりました。巻末で美術文化の終焉を危惧する著者の文章も印象的でした。入門書としてよくまとまっているので、美術史に興味を持った方はまず読んでおくべき一冊だと思います。
2021年12月27日に日本でレビュー済み
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美術史の基本の基本について述べたもの。矢印を例に挙げて、矢印の意味を理解するのには前提知識(矢をモチーフにしていること、先端が進む方向を意味するなど)が必要であり、絵画を理解するためにも「何故それが描かれたのか」や描かれているものの意味に関するコード(前提知識)の理解の必要性を説くところが、わかり易い。ギリシャ神話やキリスト教の理解がないと、絵画の意味するところが良く分からないのも、これが原因であろう。
また、識字率の低い世界では美術が最大のメディアであったという説明も理解しやすい。20世紀以降はテレビ、映画、動画サイトに変わっているということかと理解した。
美術史ってなんだろうか?という疑問を持っている方にはおすすめできる。
また、識字率の低い世界では美術が最大のメディアであったという説明も理解しやすい。20世紀以降はテレビ、映画、動画サイトに変わっているということかと理解した。
美術史ってなんだろうか?という疑問を持っている方にはおすすめできる。
2019年9月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
美術館で見る、絵画、彫刻といったものの、
歴史的背景、意味合いなどを深く理解したいと思い、
その取っ掛かりとなる本を探していました。
新書ということもあり、少々紙面(字数)が多くなってはいますが、
有名な絵画を取り上げながら、当時の時代背景や絵の持つ意味といった情報を
素人にも分かる様に、簡略して説明してくれている点が良いと思います。
カラー写真(絵)が少ないこと、比較的有名な作品が少ない印象なので、★3個にしています。
歴史的背景、意味合いなどを深く理解したいと思い、
その取っ掛かりとなる本を探していました。
新書ということもあり、少々紙面(字数)が多くなってはいますが、
有名な絵画を取り上げながら、当時の時代背景や絵の持つ意味といった情報を
素人にも分かる様に、簡略して説明してくれている点が良いと思います。
カラー写真(絵)が少ないこと、比較的有名な作品が少ない印象なので、★3個にしています。
2021年2月3日に日本でレビュー済み
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ちくプリなので読みやすく、教科書的にサックリまとまっており、広範な教養の内の一つを身につけたい方や、なんとなく美術芸術に接しても、直感的に「キレイだなぁ」とか「意味わからん」程度の表層しか味わえないことに不満を感じ、もっと西洋美術を理解したい、と思う方なら読む価値は十分ある入門書。
西洋の文化は概して意味や目的で空間を埋め尽くしたがる傾向が強いので、絵画の中にもメッセージが充満している。なので描かれた背景を知っておかないといけない。
西洋史の宗教、政治体制、科学技術などの歴史も併せて勉強すると、西洋美術がこれまでより味わい深くなるはず。
西洋の文化は概して意味や目的で空間を埋め尽くしたがる傾向が強いので、絵画の中にもメッセージが充満している。なので描かれた背景を知っておかないといけない。
西洋史の宗教、政治体制、科学技術などの歴史も併せて勉強すると、西洋美術がこれまでより味わい深くなるはず。
2021年9月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
村上隆の芸術起業論で日本のアートが欧米で認められるには西洋美術の歴史を知ること。との事だったので、まずは評価の高いこちらの本を購入。
入門編とはいえ、ほぼ何も知らない私にとって内容は濃く、かつ論理的でわかりやすく読みやすい本でした。美術が生まれた背景には必ず理由があること、美術はメディアツールとして機能していたこと、を大枠理解できた。
その上で現代美術の在り方はどうなのか?西洋美術の文脈で日本の美術の在り方はどうなのか?をさらに知りたくなった。
入門編とはいえ、ほぼ何も知らない私にとって内容は濃く、かつ論理的でわかりやすく読みやすい本でした。美術が生まれた背景には必ず理由があること、美術はメディアツールとして機能していたこと、を大枠理解できた。
その上で現代美術の在り方はどうなのか?西洋美術の文脈で日本の美術の在り方はどうなのか?をさらに知りたくなった。





