島根県津和野出身の西周の経歴を知ると、長州の吉田松陰と似ていることに気づく。しかし、長州出身ではなく、倒幕運動に関与せず、オランダに留学し、洋楽を学び、慶喜と明治新政府に仕えたことが幸いした。「フィロソフィア(愛知)」を「希哲学」と訳した。「愛智学」とも訳された。「悟性」は英語ではunderstanding.ドイツ語ではverstandと表記される。英独からは、「理解」という意味である。訳語は儒教の経典からではなく、仏教の「悟り」から採用されている。真理を悟る能力を悟性とした。理解と同義である。最近は「悟性」を「知性」と訳する人もいるが、厳密に言えば、理解する、悟る、知るはそれぞれニュアンスの違いがある。この違いに悩んだ西周は、日本語をローマ字表記に代えるという主張をしたのではないだろうか?そもそも日本語の語彙にはない西洋学術語を日本語に訳すこと自体無理がある。西周の努力が西田幾多郎を生んだのである。
西洋近代国家をモデルに日本の国民軍に指針を与える「軍人勅諭」が儒教道徳を取り入れたのは、西洋近代の精神を軍人に説いても理解されない。西周の苦肉の策であった。
本書を読み、西周の思想を正しく理解する必要があるのだ。お勧めの一冊だ。
西周と「哲学」の誕生 (日本語) 単行本 – 2019/9/6
石井 雅巳
(著)
-
本の長さ116ページ
-
言語日本語
-
出版社堀之内出版
-
発売日2019/9/6
-
寸法17.4 x 11 x 0.9 cm
-
ISBN-104909237410
-
ISBN-13978-4909237415
よく一緒に購入されている商品
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
徳川慶喜のブレーンにして明治政府の高級官僚。翻訳論、日本語論、軍事論。知の百面相・西周初の入門書。
著者について
1990年生まれ。島根県津和野町役場町長付(地域おこし協力隊)を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍。専門は哲学(レヴィナス、西周)。NPO法人bootopia副代表理事。共訳書にグレアム・ハーマン『四方対象』(人文書院、2017年)。主要論文に「『全体性と無限』における享受論の実在論的読解――レヴィナスはいかなる意味で現象学的か」(『フッサール研究』第13号、2016年)、「翻訳と日本語―西周の言語哲学―」(『北東アジア研究』第29号、2018年)など。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
石井/雅巳
1990年生まれ。島根県津和野町役場町長付(地域おこし協力隊)を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍。専門は哲学(レヴィナス、西周)。NPO法人bootopia副代表理事。共訳書にグレアム・ハーマン『四方対象』など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1990年生まれ。島根県津和野町役場町長付(地域おこし協力隊)を経て、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍。専門は哲学(レヴィナス、西周)。NPO法人bootopia副代表理事。共訳書にグレアム・ハーマン『四方対象』など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 堀之内出版 (2019/9/6)
- 発売日 : 2019/9/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 116ページ
- ISBN-10 : 4909237410
- ISBN-13 : 978-4909237415
- 寸法 : 17.4 x 11 x 0.9 cm
-
Amazon 売れ筋ランキング:
- 262,662位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 112位日本思想史
- - 495位日本の思想(一般)関連書籍
- - 776位東洋哲学入門
- カスタマーレビュー:
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.4
星5つ中の4.4
8 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
殿堂入りベスト10レビュアー
Amazonで購入
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年9月13日に日本でレビュー済み
まず最初に先に書かれたレビューがちょっと酷かなと思われたのでフォローしておきます。
本書は西周という人物について、その功罪の罪の部分が語られがちであることがスタートになっています。そこで、功の部分について語ることでバランスを取り、フラットな立場から西周について評価できるような視座を提供することを目的としているとものと見るべきです。
特に「哲学」という訳語について語られるときにいわば枕詞的に批判されるような、どこかで聞いた批判をそのまま繰り返すだけのような安易な批判について、西周の著述等から著者なりの推論によりその考え方の道筋を示すことで、バイアスによらない西周像を提供しようというのが著者のスタンスと思われます。すなわち、「都合のいい批判」を否定することで持ち上げようというのではなく、不当に、または盲目的な批判について反論することで、むしろバイアスを避けようとしているというのが私の印象です。
著者は本書の中で度々「みなさんはどう思われますか」と問うような表現を用いており、著者の推論である部分についてはその旨が明示されていますし、著者の評価である部分には「〜と思います」という表現を用いており、この態度はわたしにはフェアな態度であるように思われます。
西周の功の部分について述べる内容であることから、弁護的であることは否めませんが、それはいわば弁証法的に西周像を掴まんとする上では有益なことではないでしょうか。
ただ、そのような前提に立ったとして、内容の物足りなさもまた否めません。入門書である以上は個々のテーマについてあまり深く論証できないことは理解できますが、内容は西周の哲学者としての顔、一定の言語観を持った言語学者としての顔、明治政府における官僚としての顔を概観するに留まっています。
哲学や法学に興味はあるが歴史については疎い私としては、その内容でも十分新たな知見が得られましたが、西周という人物についてもっと知りたいという強い関心を抱いている人からするとこれ1冊で満足しきれるものではないでしょう。
値段も普通の新書サイズであることを考えるとちょっと高めで、この値段なら内容をもう少し厚くして欲しかったというのが率直な気持ちです。
ただ、この「物足りなさ」もこれから西周についての概観し、様々な書に触れる前の第一歩として見れば悪くないかなとも思います。
設定したテーマについては著者が語りたいことは簡潔にまとまっており、すって頭に入ってきます。
イベントで行う講義を元にしたとのことですから、あえて想定される批判等を詳細に語ることに立ち入らなかったのも、著者が入門ということを強く意識して「わかりやすさ」を優先する決断をした結果なのかなと思われます。
高校の教科書以上のことは知らなかった私にとっては、「物足りなさ」も相まって西周という人物への興味が刺激されましたし、そういう読者に向けてガイドブックが巻末に付されているのも親切だと思います。
変な表現ですが、値段を考えると物足りないですが、物足りないこと自体には不満は感じませんでした。
最後に内容とは直接関係ないことですが、「文章の書き方」という点で学生にぜひ読んでもらいたいと思いました。
事実と評価を明確に分けて論じる表現や、まず問題の経緯に触れつつテーマを述べ、定義を明示し、概略を述べ、根拠を示して詳論し、適宜議論を確認しながら結論を示し、最後にまとめる、という論理展開は非常に簡潔明快です。(私も偉そうなことは言えませんが)文章が苦手な方は文章力という点からも勉強になるのではないかと思います。
本書は西周という人物について、その功罪の罪の部分が語られがちであることがスタートになっています。そこで、功の部分について語ることでバランスを取り、フラットな立場から西周について評価できるような視座を提供することを目的としているとものと見るべきです。
特に「哲学」という訳語について語られるときにいわば枕詞的に批判されるような、どこかで聞いた批判をそのまま繰り返すだけのような安易な批判について、西周の著述等から著者なりの推論によりその考え方の道筋を示すことで、バイアスによらない西周像を提供しようというのが著者のスタンスと思われます。すなわち、「都合のいい批判」を否定することで持ち上げようというのではなく、不当に、または盲目的な批判について反論することで、むしろバイアスを避けようとしているというのが私の印象です。
著者は本書の中で度々「みなさんはどう思われますか」と問うような表現を用いており、著者の推論である部分についてはその旨が明示されていますし、著者の評価である部分には「〜と思います」という表現を用いており、この態度はわたしにはフェアな態度であるように思われます。
西周の功の部分について述べる内容であることから、弁護的であることは否めませんが、それはいわば弁証法的に西周像を掴まんとする上では有益なことではないでしょうか。
ただ、そのような前提に立ったとして、内容の物足りなさもまた否めません。入門書である以上は個々のテーマについてあまり深く論証できないことは理解できますが、内容は西周の哲学者としての顔、一定の言語観を持った言語学者としての顔、明治政府における官僚としての顔を概観するに留まっています。
哲学や法学に興味はあるが歴史については疎い私としては、その内容でも十分新たな知見が得られましたが、西周という人物についてもっと知りたいという強い関心を抱いている人からするとこれ1冊で満足しきれるものではないでしょう。
値段も普通の新書サイズであることを考えるとちょっと高めで、この値段なら内容をもう少し厚くして欲しかったというのが率直な気持ちです。
ただ、この「物足りなさ」もこれから西周についての概観し、様々な書に触れる前の第一歩として見れば悪くないかなとも思います。
設定したテーマについては著者が語りたいことは簡潔にまとまっており、すって頭に入ってきます。
イベントで行う講義を元にしたとのことですから、あえて想定される批判等を詳細に語ることに立ち入らなかったのも、著者が入門ということを強く意識して「わかりやすさ」を優先する決断をした結果なのかなと思われます。
高校の教科書以上のことは知らなかった私にとっては、「物足りなさ」も相まって西周という人物への興味が刺激されましたし、そういう読者に向けてガイドブックが巻末に付されているのも親切だと思います。
変な表現ですが、値段を考えると物足りないですが、物足りないこと自体には不満は感じませんでした。
最後に内容とは直接関係ないことですが、「文章の書き方」という点で学生にぜひ読んでもらいたいと思いました。
事実と評価を明確に分けて論じる表現や、まず問題の経緯に触れつつテーマを述べ、定義を明示し、概略を述べ、根拠を示して詳論し、適宜議論を確認しながら結論を示し、最後にまとめる、という論理展開は非常に簡潔明快です。(私も偉そうなことは言えませんが)文章が苦手な方は文章力という点からも勉強になるのではないかと思います。
2019年9月10日に日本でレビュー済み
この本は西周に対する批判を受け、西周の残した文書などからその真意について著者の解釈を述べる構成をとっています。
しかし、筆者の都合のいい批判を持ってきて西周の弁護をするような印象を受けてしまいました。また、批判の検証に甘さを感じさせ、また筆者の仮説につなげる流れもやや強引だと感じました。
残念ながら西周をめぐるテーマを概観する程度に止まりますが、筆者の今後の著作に期待したいです。
しかし、筆者の都合のいい批判を持ってきて西周の弁護をするような印象を受けてしまいました。また、批判の検証に甘さを感じさせ、また筆者の仮説につなげる流れもやや強引だと感じました。
残念ながら西周をめぐるテーマを概観する程度に止まりますが、筆者の今後の著作に期待したいです。