社会主義国、あるいは社会主義から民主主義に転換して間もない国に出かけると、不愉快な目に遭うことは少なくない。海外からの訪問者など監視し取り締まる(あるいは金をふんだくる)対象としか見なさないお上は言うに及ばず、本来ホスピタリティを発揮するはずの民間ですら無愛想極まりなく、まともな扱いをされずに腹が立つことはしばしばだ。実際、本作で司馬遼太郎が訪れたイルクーツク、ハバロフスクには、私も旧ソ連末期に行ったことがあるが、本書の内容と見事なまでに変わっていなかった。それに比べると、同じ一党独裁の社会主義国家であったモンゴルの、人と自然の何と素朴で美しいことか。本来、司馬遼太郎という作家は、どちらかというと随筆家のようなところがあり、あまり詩的な表現をしない。しかし、彼にかくも豊かな詩的感性があったのかと思わせるほど、ゴビ砂漠とこの地に暮らす人々への賛歌は美しい表現に満ちている。この地に置いては、社会主義という外国人を不快にさせること請け合いだったシステムですら、モンゴル人の素朴さを保つ装置のように思えてくるほどである。
この本が書かれたのは約40年前であり、ソ連邦は崩壊しモンゴルは社会主義を捨てるなど、大きな変化があった。現在のモンゴルが、司馬遼太郎の経験したような、文字通りの意味で牧歌的な国かは疑問だ。しかし、そうした点を割り引いても、読者をモンゴルへいざなる強烈な魅力が本書にはある。いつか、家族を連れて行ってみたい。
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街道をゆく 5 モンゴル紀行 Kindle版
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言語日本語
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出版社朝日新聞出版
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発売日2008/9/30
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ファイルサイズ1599 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
1973年、著者は新潟からソ連を経てモンゴルへ飛んだ。まだ旅行が不自由な時代で、入国査証を得て、「わがモンゴルよ」と、心の中で叫ぶ思いがあったという。少年の頃から中国周辺の少数民族にあこがれ、大学時代にモンゴル語を学んだ著者にとって、念願のかなった旅となる。満天の星空に圧倒され、須田剋太画伯とゴビ草原の夜をさまよい歩く場面が心に残る。
--このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
司馬/遼太郎
1923年、大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪外国語大学)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年、死去。主な作品に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
1923年、大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪外国語大学)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年、死去。主な作品に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00M3V49GU
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2008/9/30)
- 発売日 : 2008/9/30
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1599 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 188ページ
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2014年11月3日に日本でレビュー済み
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15人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2005年12月5日に日本でレビュー済み
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著者司馬遼太郎氏のモンゴル訪問は生涯に二度。本著はそのうち、今はひと昔三十二年前に遡る一九七三年の最初の訪蒙紀行です。その時から今日に至る途上、モンゴルは社会主義から市場経済導入へ、という大転換を経験しました。ロシアと中国が外交上の最重要二ヵ国であることが不変とはいえ、昨今の歴代米大統領の初訪蒙、三万人とも言われる在韓の留学・出稼ぎ蒙人に象徴されるように、モンゴルを取り巻く諸環境は大きく変化しています。貧富の差も拡大し、在蒙の小生からみて残念ながら、とくに全人口の三分の一が集中して都市化した首都ウランバートルでは、当時は無かったと書かれる「泥棒」も横行、物質文明の大波は確実にモンゴルの“良き”伝統に襲いかかっています。一方「家庭への客人の接待」「素朴でおおらかな性格」「人の顔を忘れない天性」「薫る大地と匂う草原」「満天の星と長大な天の川」「故郷を詠った詩」「学問への積極性」は今日も健在です。人為に侵されない“守られた”広大な自然と、血統に染み込んだ自尊の遊牧文化に根ざす、モンゴル人固有の貴重な生活文化遺産を本書は映し出しています。彼らが中国人を嫌う国民感情についても、農耕と遊牧の文化的差異にも注目しながら、漢・蒙両民族が相容れなかった歴史を紐解きながら解説されています。
2013年3月29日に日本でレビュー済み
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ハバロフスク、イルクーツク、ウランバートル、ゴビ
新潟から/偉大なる逆説/アムール川の靺鞨/通訳長/ボストーク・ホテル/イルクーツクへ/光太夫/モンゴル領事館/ブリャートの娘/匈奴/飛行機の中で/ウランバートル/ノモンハンの悪夢/丘の上から/逆縁/代理大使の冬/若者たち/人民たち/故郷とは/ゴビへ/ゴビ草原/チミドの詩/星の草原/ジンギス汗の平和/流砂/ラクダたち/騎馬について/騎馬の場面/アルタン・トプチ/ゴビン・ハタン
週刊朝日1973年11月2日号〜1974年6月14日号
モンゴル民族は、日本人の起源に近いせいか、親近感がわく。
正確にいえば日本人はツングース系で、中国東北部を起源とする民族でモンゴル人とは少し違う
そのモンゴルへの旅である
今や成田ウランバートル間は、約5時間の直行便があるが、1973年当時は新潟から空路ハバロフスク―イルクーツク-ウランバートルと3泊の旅である
しかしその旅は社会主義国家の中の旅であり、不遜な態度の接遇、不正確な時間観念との戦いである
この戦いはゴビ砂漠に放り出されるかもしれないという危機感よりも強い場合がある
モンゴルの草原といえばゲル(中国語ではパオ)を用いた移住放牧生活であり、鞍無でのる馬術である
かれらと草原の中偶然出会えば馬乳酒での大いなる歓待、またある時は一夜の歓待さえもあるという
大らかで、暖かい民族である
有名なチンギスハーンは彼らにとっては英雄ではあるが、中国はじめ周囲の国々にとっては侵略者でしかないがために、胸を張って英雄と称えられないと言っていたが、いまやモンゴル チンギスハーン空港と名付けられている
草原を裸馬にまたがりながら、隣に見える草山までわずか100kmトレッキングをしたいものだと感じた
司馬作品は、凡庸な紀行文ではなく、歴史文化についての情報収集は莫大であり初めて聞くことそして、初めて見る単語もおおく、前頭葉を刺激する
深い知識に裏打ちされた文章は時として、凡人の理解の届かないこともあり、3,4回文字を負っても呑み込めないときがある
須田剋太画伯との同行が多いが、彼の視点の奔放さとマクロさが、司馬の表現と対比するとより面白く
街道をゆくの魅力となっている
新潟から/偉大なる逆説/アムール川の靺鞨/通訳長/ボストーク・ホテル/イルクーツクへ/光太夫/モンゴル領事館/ブリャートの娘/匈奴/飛行機の中で/ウランバートル/ノモンハンの悪夢/丘の上から/逆縁/代理大使の冬/若者たち/人民たち/故郷とは/ゴビへ/ゴビ草原/チミドの詩/星の草原/ジンギス汗の平和/流砂/ラクダたち/騎馬について/騎馬の場面/アルタン・トプチ/ゴビン・ハタン
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正確にいえば日本人はツングース系で、中国東北部を起源とする民族でモンゴル人とは少し違う
そのモンゴルへの旅である
今や成田ウランバートル間は、約5時間の直行便があるが、1973年当時は新潟から空路ハバロフスク―イルクーツク-ウランバートルと3泊の旅である
しかしその旅は社会主義国家の中の旅であり、不遜な態度の接遇、不正確な時間観念との戦いである
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かれらと草原の中偶然出会えば馬乳酒での大いなる歓待、またある時は一夜の歓待さえもあるという
大らかで、暖かい民族である
有名なチンギスハーンは彼らにとっては英雄ではあるが、中国はじめ周囲の国々にとっては侵略者でしかないがために、胸を張って英雄と称えられないと言っていたが、いまやモンゴル チンギスハーン空港と名付けられている
草原を裸馬にまたがりながら、隣に見える草山までわずか100kmトレッキングをしたいものだと感じた
司馬作品は、凡庸な紀行文ではなく、歴史文化についての情報収集は莫大であり初めて聞くことそして、初めて見る単語もおおく、前頭葉を刺激する
深い知識に裏打ちされた文章は時として、凡人の理解の届かないこともあり、3,4回文字を負っても呑み込めないときがある
須田剋太画伯との同行が多いが、彼の視点の奔放さとマクロさが、司馬の表現と対比するとより面白く
街道をゆくの魅力となっている