近年、メディア(新聞、テレビ、出版など)が置かれている環境が著しく悪化している。新聞の購読数の減少、視聴率の低下、広告収入の減少、出版数の低下・・・ これらとうってかわってインターネットメディアや電子書籍の存在感が強くなってきている。
こうなったのは、経済環境などの外部的原因ではなくメディアの内部的原因、すなわちメディアの本来備えているべきコミュニケーションの本質が失われたからだと指摘する。
ではコミュニケーションの本質とはなにか。それは「反対給付義務」という人間に本来内在する贈与されたものに対する将来的な返礼の気持ちであるという。贈与された時点では自分にとっての価値が不明であっても、将来他者から贈与されたときに初めて、最初にうけとった贈与物の価値が創出され、同時に贈与についての感謝の気持ちが湧くと。
ネットメディアや電子書籍を取り扱った本は比較的電子書籍に批判的な内容が多いが、この著者はそれと一線を画する。それは、電子書籍の導入により、ワンクリックで同時多発的に著述が伝播され、前述の反対給付義務の履行を実現させる機会に恵まれるからだと指摘しています。
メディアが生来的に固持すべき本質を、商取引のコンテクストで語ったが故、自縄自縛の道をたどったというのは、なるほどなと思わされた。
多くの有名な作家などの意見には、電子書籍に批判的なものが多い。肯定的な意見としてとても参考になる一冊です。
街場のメディア論 (光文社新書) (日本語) 新書 – 2010/8/17
内田 樹
(著)
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ISBN-104334035779
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ISBN-13978-4334035778
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出版社光文社
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発売日2010/8/17
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言語日本語
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本の長さ211ページ
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調―、未曾有の危機の原因はどこにあるのか?「贈与と返礼」の人類学的地平からメディアの社会的存在意義を探り、危機の本質を見極める。内田樹が贈る、マニュアルのない未来を生き抜くすべての人に必要な「知」のレッスン。神戸女学院大学の人気講義を書籍化。
著者について
内田樹(うちだたつる)
一九五〇年東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。著書に『街場のアメリカ論』『街場の現代思想』(以上、文春文庫)、『街場の教育論』『街場の中国論』(以上、ミシマ社)、共著に『現代人の祈り--呪いと祝い』(サンガ)、『若者よ、マルクスを読もう』(かもがわ出版)など。二〇〇七年『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で第六回小林秀雄賞を、『日本辺境論』(新潮新書)で新書大賞二〇一〇を受賞。
一九五〇年東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。著書に『街場のアメリカ論』『街場の現代思想』(以上、文春文庫)、『街場の教育論』『街場の中国論』(以上、ミシマ社)、共著に『現代人の祈り--呪いと祝い』(サンガ)、『若者よ、マルクスを読もう』(かもがわ出版)など。二〇〇七年『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で第六回小林秀雄賞を、『日本辺境論』(新潮新書)で新書大賞二〇一〇を受賞。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
内田/樹
1950年東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。2007年『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で第6回小林秀雄賞を、『日本辺境論』(新潮新書)で新書大賞2010を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1950年東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。2007年『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で第6回小林秀雄賞を、『日本辺境論』(新潮新書)で新書大賞2010を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 光文社 (2010/8/17)
- 発売日 : 2010/8/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 211ページ
- ISBN-10 : 4334035779
- ISBN-13 : 978-4334035778
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 22,869位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 28位メディアと社会
- - 41位ジャーナリズム (本)
- - 131位光文社新書
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2011年12月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まず、新聞やTVなどの既存のメディアは深刻な危機に瀕するとのことが、裏表紙に書かれており、
誰もがなんとな聞いたことのあるコピーであった。しかし、その詳細に入ると、
インターネットだ、電子書籍だとかのほかのメディアの勃興にあうということもありながらも、
ある種のおもてなしの精神がかけているという指摘は驚いた。
それに、レヴィ‐ストロースの考えなどを絡めてくるあたりかなり面白い。
☆4つにしたのは、ネットなどの面に触れていると思ったら、
そういうことをあまり言いたいのではなく、そもそもメディアの存在とはこうあるべきなのではないか
ということだった点で、予想外だったということです。
誰もがなんとな聞いたことのあるコピーであった。しかし、その詳細に入ると、
インターネットだ、電子書籍だとかのほかのメディアの勃興にあうということもありながらも、
ある種のおもてなしの精神がかけているという指摘は驚いた。
それに、レヴィ‐ストロースの考えなどを絡めてくるあたりかなり面白い。
☆4つにしたのは、ネットなどの面に触れていると思ったら、
そういうことをあまり言いたいのではなく、そもそもメディアの存在とはこうあるべきなのではないか
ということだった点で、予想外だったということです。
2010年11月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新聞・テレビ・出版業界などの既成メディアの危機が騒がれる中、
その原因の本質がどこにあるのかを探りだそうと試みた、
著者の講義が元にして書籍化した作品です。
20歳そこそこを対象とした講義なのでと著者も言っているが、
わかりやすく、また知的探究心をくすぐる知識もちりばめられています。
キャリア教育目的の本講義の最初にまずキャリア教育は
間違っていると喝破するところから始まります。
競争至上主義が才能を花開かせるのでは無く、
「その能力が必要とされたときにはじめて潜在能力は発動する。」
という著者の人間観からはじまるのですが著者の価値観の根底
にあるものを垣間見れるでしょう。
前書きで「メディアの不調はそのままわれわれの知性の不調である」
−これは真摯に受け止めなければならない前提と思います−
としつつもメディア自身の構造的な病理も指摘します。
また、医療崩壊と教育崩壊に与えた影響とその考察も行っています。
−以下抜粋(部分改)−
「その能力が必要とされたときにはじめて潜在能力は発動する。」
「『危機耐性』と『手作り可能性』はメディアの有用性を考慮する場合のかなり重要な指標。」
「情報を評価する時の最優先の基準は『世界の成り立ち』についての理解が深まるか。」
「メディアが好んで採用する『演技的無垢』は、それを模倣する人々に間に社会的態度として広く流布した。」
「『被害者=政治的に正しい立場』というのはもともと左翼の政治思想に固有のもの。」
「『資源の分配のときに有利になるかもしれないから』とりあえず被害者のような顔をしてみせる
というマナーが『普通の市民』にまで蔓延した。」
「『推定正義』が事実によって反証されたら、メディアの威信が低下すると思っている。」
「メディアは『常に正しいことだけを選択的に報道している』という
ありえない夢を追います。この態度は僕は病的だと思います。」
「最終的な責任を引き受ける生身の個人がいない。」
「僕たちが今読まされている、聴かされている文章のほとんどは、
血の通った個人ではなく、定型が語っている。定型が書いている。」
「教育制度が『一寸先は闇』になることは巨大な情報市場を創出します。」
他にも、電子書籍・読書人に対する言及、
また、著作権・贈与経済を文化人類学的に考察などによって、
メディアの本質と生き延びる道に関する考察を多角的に行っています。
その原因の本質がどこにあるのかを探りだそうと試みた、
著者の講義が元にして書籍化した作品です。
20歳そこそこを対象とした講義なのでと著者も言っているが、
わかりやすく、また知的探究心をくすぐる知識もちりばめられています。
キャリア教育目的の本講義の最初にまずキャリア教育は
間違っていると喝破するところから始まります。
競争至上主義が才能を花開かせるのでは無く、
「その能力が必要とされたときにはじめて潜在能力は発動する。」
という著者の人間観からはじまるのですが著者の価値観の根底
にあるものを垣間見れるでしょう。
前書きで「メディアの不調はそのままわれわれの知性の不調である」
−これは真摯に受け止めなければならない前提と思います−
としつつもメディア自身の構造的な病理も指摘します。
また、医療崩壊と教育崩壊に与えた影響とその考察も行っています。
−以下抜粋(部分改)−
「その能力が必要とされたときにはじめて潜在能力は発動する。」
「『危機耐性』と『手作り可能性』はメディアの有用性を考慮する場合のかなり重要な指標。」
「情報を評価する時の最優先の基準は『世界の成り立ち』についての理解が深まるか。」
「メディアが好んで採用する『演技的無垢』は、それを模倣する人々に間に社会的態度として広く流布した。」
「『被害者=政治的に正しい立場』というのはもともと左翼の政治思想に固有のもの。」
「『資源の分配のときに有利になるかもしれないから』とりあえず被害者のような顔をしてみせる
というマナーが『普通の市民』にまで蔓延した。」
「『推定正義』が事実によって反証されたら、メディアの威信が低下すると思っている。」
「メディアは『常に正しいことだけを選択的に報道している』という
ありえない夢を追います。この態度は僕は病的だと思います。」
「最終的な責任を引き受ける生身の個人がいない。」
「僕たちが今読まされている、聴かされている文章のほとんどは、
血の通った個人ではなく、定型が語っている。定型が書いている。」
「教育制度が『一寸先は闇』になることは巨大な情報市場を創出します。」
他にも、電子書籍・読書人に対する言及、
また、著作権・贈与経済を文化人類学的に考察などによって、
メディアの本質と生き延びる道に関する考察を多角的に行っています。
2013年11月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
マスメディアに対しての内田さんの批判的な本。あんまり、マスメディアに対していいことは言ってません。新聞、テレビに対しては特に厳しい。ラジオ、出版に対してはどちらかというといいイメージ。この本を読めば、テレビの言っていることや、新聞の書いていることに対して、批判的に考えることができるはずです。
1章のキャリア教育についての話も面白いです。メディアとはあまり関係ないけど、とても参考になります。就職を控えている人にもいいかもしれないです。一番心に残っている言葉は、「メディアの不調はそのまま私たちの知の不調になる」でした。
1章のキャリア教育についての話も面白いです。メディアとはあまり関係ないけど、とても参考になります。就職を控えている人にもいいかもしれないです。一番心に残っている言葉は、「メディアの不調はそのまま私たちの知の不調になる」でした。