人間はチンパンジーと同じ祖先から派生し、遺伝子の違いもわずかであるにも関わらず、なぜこれほどの違いがあるのかという疑問から人間の探求が始まる。NHKのEテレで放送された「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”」という番組で紹介されていたので購入してみた。
最後の解説文にあるように、現在のサイエンスではそれぞれの専門分野の研究は熱心にされているが、それを繋ぐ学問がない。ダイアモンド博士は長い研究生活の中で複数の分野を渡り歩いているために、それらの研究成果を結び付けて大きな視点から語ることができる。
序盤では私たちの祖先と最後の隣人ネアンデルタール人との交代劇の起きた6万年前を“大躍進”と呼び、滅んでいった隣人たちとホモサピエンスとの違いを見つけ出そうとする。
そのあとはヒトの性について、人種の起源、言葉の成立、芸術、狩猟採集と農業、宇宙と人間、よそ者を嫌う人間、失われる民族の多様性、地理が文明の発達にあたえる影響、ジェノサイド、森林を消費することで居場所を失ってきた人間、加速度的に進行する種の絶滅について。どれも歴史に残っている具体例を挙げて説明している。
僕が意外で面白いと思ったのは農業がもたらした問題の大きさについて。また宇宙人を見つけ出すことに夢を見ている人々に、宇宙人がそんなに親切なわけがない、人間が今までしてきたように、宇宙人は自分より能力の劣る人間たちの命と土地を奪うに違いないと現実的に語っている。宇宙人好きのアメリカ人にしては冷静である。生物地理学の話も面白かった。どの話も短めにまとめられているが、歴史を俯瞰してみた時に人間の特徴をよく掴んでいると感じた。
ダイアモンド博士の語り口は淡々としていて、あらかじめ問いを発してからそれには〇通りの答えがある、と自身の考えを述べていくパターンが多いようだ。そこでは自身の研究内容を含んでいて具体的だ。断定的な文体も多く、長い研究生活で培った自信が随所に現れている。僕が子供のころと比べていろいろなことが分かってきているのだなと感心した。後半では人間の抱えている全地球的な問題などに言及しているが、学者がこれだけの危うい未来を予想していても、実際に世の中を動かしているのは商売とそれに結び付いた公的権力だから、解決は難しいだろうと思った。
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