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能楽への招待 (岩波新書) 新書 – 2003/1/21

梅若猶彦 (著)

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商品の説明

内容紹介

面の中で両眼をふさいだり，「心」字形に杖をついて歩いたり，…能の演出には不思議が何と多いことか．じつはここにこそ，身体と精神の融合という能の世界独特の本質がある．「型附」という秘伝書には何が書かれているのか，世阿弥が到達した最高の美は「幽玄」なのか．基礎知識から本質論まで，演技者の眼からズバリと解説した斬新な能楽入門書．

内容（「BOOK」データベースより）

面の中で両眼をふさいだり、「心」字形に杖をついて歩いたり…。能の演出には不思議がなんと多いことか。じつはここにこそ、能の世界の本質がある。「型附」という秘伝書には何が書かれているのか、世阿弥が到達した最高の美は「幽玄」なのか。基礎知識から本質論まで、演技者の眼からズバリと解説した斬新な能楽入門書。

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登録情報

新書: 190ページ
出版社: 岩波書店 (2003/1/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4004308232
ISBN-13: 978-4004308232
発売日： 2003/1/21
梱包サイズ: 17 x 10.4 x 1 cm
おすすめ度： 5件のカスタマーレビュー
Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 81,999位 (本の売れ筋ランキングを見る)
- 45位 ─ 本 > アート・建築・デザイン > 日本の伝統文化 > 歌舞伎・文楽・能
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寂羅漢

目に見えない力

2013年10月5日

形式: 新書Amazonで購入

我々は、能楽というと「形式」や「型」といったものを真っ先に思い浮かべがちでる。
長い伝統の中で培われた、一種の「無形文化」のようなものとして。

しかし、本書の筆者が能の実践において重視するのは、「内面」だという。
ここで「内面」というのは「こころ」、つまり身体の動作や顔の表情、目線などによっては示すことのできない「内なる何か」である。

そのようなものが実在するかはさておき、それが観客に伝わるのだろうか。
筆者は、間違いなくそうだと断言する。

たとえば、筆者が所有する「型附」（相伝された、演技の指導書のようなもの）には、次のような記述があるという。

「躰ハソル心　両目ヲフサグ」

体を反らせるのではなく、反る「心もち」になる。面を着けていて顔の表情がわかるはずもないのに、目を閉じる。
そうすることによって、観客に伝わる何かがあるというのだ。

とすれば、舞台の上でただ立っている人間と、内面を高揚させつつ立っている人間とでは、観客に与える印象がまるで異なってくるのである。
そしてこうした「奥義」を窮めると、しぜん舞台での身体操作は小さく、地味なものになっていくという。
大げさな身振りや演技は不要なもの、大仰すぎるものとなるのである。

また、そのような境地の表現手段として、芸能の分野における「メタファー」は機能しているともいう。
達人がよく分からない表現を使いたがるのは、別に変な神秘主義に陥っているのではなく、
単にそれ以外では伝達できないからなのである。
（たとえば、水面に映った月を手でつかむ、とかいう禅問答のようなものを想像してほしい）

脳科学の研究が進み、あらゆる心理的事象が器質的な用語で置き換えられ、記述される現在。
筆者の主張は、そうした風潮に対するアンチテーゼとなるのだろうか。

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能と禅、世阿弥が道元から得たもの。

2015年2月1日

形式: 新書Amazonで購入

型は、仮象であり背後に内面の意志が隠されている。そして、内面と型の和音・不協和音を「気配」と云う。
言葉の裏の機能として比喩（メタファー）を使い身体的叡智を組み込んだ「気配」は内面の一つである。それは、「秘伝」と呼ばれ時代を超えて伝承が可能となった。
過去の達人たちによって獲得された「身体性」が言葉により保存され、解読を待っている。
身体的叡智の抽象性は極度に高いので説明的言葉では、身体の奥深くへは浸透出来ない。
「早キ物ハ心ヲシツメテイエル　又シツカナル物ヲバ　心をカケテ致ス」（梅若家型附）
世阿弥の「動十分心・動七部身」と原理的に同じである。
身体を意ほどに動かしては、芸術的効果はないという意味である。

美の完成品として外部に顕れる身体性は、内面性であり非常に模倣し難い内面である。
能は、発動出所が所作の純度を決定する。
もし、そうでなければ型自体が華やかでない能楽は、存在理由を失う。

禅は、脳の身体性の伝承に大きく貢献した。
世阿弥は、道元の多くの教えを受けている。
道元も身体の修行者であった。比喩は、禅のお家芸でもある。
形成期の能の根幹に決定的影響を与えたことは間違いない。
「秘伝」とは、その顕われである。
禅で云う「無」とは、何も無いのではなく、充実した「無」でありそれは獲得した修行者にしか理解できない別格の「無」である。
そして、「無」は、一文字で、注釈は必要としないことを過去の賢人は教えている。
そして、全身全霊を込めて努力を要求するが、報酬は未知である。

世阿弥の能に於ける最高の美的位は、「妙」である。それが果して「美」であるかは？であるが。
「新羅（しんら）、夜半、日頭明なり。妙と云ば、言語道断、心行所滅なり。夜半の日頭、是又言語の及ぶべき処か。如何、然ば、当道の堪能の幽風、褒美も及ばず、無心の感、無位の位風の離見こそ、妙花にや有べき」（九位）
禅の公案が入っているが、夜半の太陽とは、それ自体矛盾であり比喩であることが分かるであろう。
もう一つ。
「心はなくて面白とうけがうは何者ぞ」（捨王、得花）
？である。
「妙」は、主・客を超える。そしてそれが、「無」である。
「幽玄」が鑑賞者のものに対し「妙」は、表現者の内的原理であり且つ鑑賞者にも跨るものである。
そして、内的原理とは純度が高いものしか存在できない。
その、最高のものが「無」である。
無心とは、フワフワと飛んでいる蝶が巌にくい込むことだってあるのだ。

結論は、内面操作の秘密を獲得した表現者は、日常生活の全ての動きを非日常に変換出来る能力を持つという事である。
著者は、背中から腕にかけて鳥肌が立つ状態に出入り出来る。
それは、脳の検査によると特に左半球の前頭葉の前頭前野（前頭極）の血液が急激に低下し、その後方の運動野や触覚を支配する体性感覚野の血流が増加したのであった。座禅も、同様の状態となる。
前頭極というのは、思考・企画・判断を司るが日本の精神文化の伝統は必ずしもそれを無条件に歓迎しない。
能も又、前頭極を使わない内部モデルを稽古によって構築し純化してきたのではないだろうか。
「身心一如」である。
ヘビー級の内容であった。

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2004年3月1日

形式: 新書

　「能楽への招待」というぐらいですから入門書です。しかし良くあるストーリーや見どころを解説したような本ではありません。観世流シテ方梅若家の一員としての実際の舞台上での演技、または練習を通して考え込まれた能の本質論に関しての入門書です。
　例えば『翁』に関して。舞台上で面をつけた翁は舞に入るところで、梅若家に伝わる型附（振付を記した本）にはこう書かれているそうです。
「体ハソル心、両眼ヲフサグ」
　実際に体を反らせるわけではなくて体を反らせる「気持ち」なって、そして面の中に隠された外からは見えない目を閉じる。演技的に何らかの意味があるのか不思議に思います。しかしその内面の動きを体現することこそ観客に何かを伝えるきっかけになる。そう、この書は説きます。
　能舞台や装束、面、役柄、歴史といった基礎知識に関しての記述ももちろんあります。しかしそれ以上に能の演技とは、能の型とは、能の最高の境地とは、とそういったことを解き明かそうとされた名著だと思います。
　…後半になると一読ではちょっと理解しきれなかった部分も多いです。しかし、一応読んでおくことでいつかふと分かる日もあるかもしれない。そう感じました。

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秘伝書としての型附

2010年10月9日

形式: 新書

秘伝書としての型附についての説明がある。
秘伝書の写真があるのが嬉しい。

能楽が好きではなかったが、
勉強の対象として、日本の文化を理解するのによいことが分かった。

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2006年8月20日

形式: 新書

　筆者が、禅語録をメタファーと把握している点に疑問を感じる。メタファーであれば、それなりの意味が読み取れるはずであるが、それでは禅にはならない。新羅夜半（夜半の太陽）とは、メタファーではなくそう表現せざるを得ない問いであり、意味を問いかけているのではないのだ。（P154）「風姿花伝」はメタファーによる言説であることから、禅の公案もそうであろうと断ずるのでは、筆者の理解も野孤レベルにとどまるだろう。内面に踏み込む勇気には、喝采を送りたいが、その危険性も承知すべきである。

　

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