まず、下巻について。下巻のやや急ぎ足の運びや唐突な終焉が不評のようですが、私見では、これでよし、というか、これ以外の書き方はなかったかと思います。資料重視の司馬遼太郎なので、義経記は完全に後日の創作と見做して、執筆資料と認めなかったのでしょう。それに、今作は義経の軍事的成功の日々を描くのを目的としていたと思われるので、悲劇の始まりのところであっさり幕引き、でOKでは?
今のところ、司馬作品でお気に入りのベスト1です! 文章に酔いますよ~~~❤
義経の成長物語と平行して、頼朝と政子のロマンスも描かれますが、これまた絶妙の面白さ! 政子が妹の夢見を買い取る場面とか(もちろん、そうした場面はフィクションです、これぞフィクション)。
今作を読んで、義経という存在の日本の歴史における重さに気づかされました。頼朝の鎌倉幕府によって、日本は花鳥風月ちゃらちゃらり~の宮廷貴族支配から脱して、武の者(基本的には農耕民)のエネルギー渦巻く島国へと変貌していき、それが徳川270年の時代を経て、現在の日本を形作るまでになったように(素人見解ですが)思えるのですが、そもそも、頼朝の成功は義経の軍事的成功あってのもの。
義経がいなかったら、鎌倉幕府も存在しえなかった。
義経って、鞍馬山での幼少期があんなふうで(笑)、平泉で乗馬三昧だったとしても、いったいどのようにして、あれほどの軍事的才覚を体得したの? と、不思議でなりません。医学的に「恐怖を感じない(感じにくい)DNA」というのがあるらしいですが、義経もそのDNA保持者だったのかな、と。俺たち鹿じゃないし、馬に乗ったまま断崖絶壁下るのかよっ!(笑)
とにかく、下巻の筆の運びもエンディングも、私には納得ですし、最高でした。
あまりにも膨大な司馬作品のうち、5作だけお勧めは、と問われたら、今作は絶対に外せません。
今作は司馬遼太郎のデビュー作ではないですが、なんとなくこの作家の執筆生活の原点、という感じがします(資料の乏しい時代をいかに鮮やかに描くか、という点などについて)。そして、源義経は日本の今を形作った原点という気もします。なので、二重の意味で、原点。
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義経(上) (文春文庫) Kindle版
みなもとのよしつね――その名はつねに悲劇的な響きで語られる。源氏の棟梁の子に生まれながら、鞍馬山に預けられ、その後、関東奥羽を転々とした暗い少年時代……幾多の輝かしい武功をたて、突如英雄の座に駆け昇りはしたものの兄の頼朝に逐われて非業の最期を迎えてしまう。数奇なその生涯を生々と描き出した傑作長篇小説。
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2004/2/10
- ファイルサイズ2936 KB
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商品の説明
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
司馬/遼太郎
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみち1”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大仏次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみち1”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大仏次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
みなもとのよしつね―その名はつねに悲劇的な響きで語られる。源氏の棟梁の子に生まれながら、鞍馬山に預けられ、その後、関東奥羽を転々とした暗い少年時代…幾多の輝かしい武功をたて、突如英雄の座に駆け昇りはしたものの兄の頼朝に逐われて非業の最期を迎えてしまう。数奇なその生涯を生々と描き出した傑作長篇小説。 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00SSQKV98
- 出版社 : 文藝春秋 (2004/2/10)
- 発売日 : 2004/2/10
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 2936 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 452ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 14,609位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒。「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞、『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』『坂 の上の雲』『空海の風景』『翔ぶが如く』など構想の雄大さ、自在で明晰な視座による作品を多数発表。この他『街道をゆく』『風塵抄』『この国のかたち』な どの紀行、エッセイも多数。’96年逝去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 司馬遼太郎と寺社を歩く (ISBN-13: 978-4334747213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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ベスト1000レビュアー
講談語りのような面白さを期待して読んだが、ちょっと期待外れ。作者は、義経の伝説的ヒーロー像は描きたくないようである。武蔵坊弁慶が他の郎党とさしてかわらない扱いで描かれるのが象徴的(橋の上での出会いもないし、出番が少ない。有名過ぎる話なので、少しくらい触れてもいいのではと思った。小説に取り込まないまでも、こんな伝説が知られているが・・・みたいに。)。この調子だと、下巻には壇ノ浦の八艘とびや勧進帳もないのか?(下巻まで読んだらなかった)。作者はどうも義経のキャラクターに面白みを感じていないような、義経があまり好きでないようにみえる。上巻は、京で乱暴狼藉の木曽義仲討伐に向かうところまでが描かれる。頼朝、木曽義仲が登場してくると、さすがに面白く盛り上がってくる。また、頼朝、木曽義仲が実に生き生きと描かれていて、物語に引き込まれる。それにくらべて、掴みどころのない義経のキャラクターは存在感が希薄で魅力薄。筆者は、講談調でない新たな義経像をつくろうとしているのかもしれないが、あまり成功していないように思う。「街道を行く」のようなルポルタージュ的に義経を取り上げる方が、司馬さんには合っているのではないか。きっと、もう書かれているとは思うので、そっちの方を探してみよう。
ベスト1000レビュアー
最近でこそあまり目立って取り上げられることはなくなっているようだが、源義経と言えば、日本史に
おいて半ば神格化され、兄の頼朝に徹底的に虐められた美貌の軍事の天才とされている。
歌舞伎や古典でも悲劇の将軍として非常に人気のある人物である。司馬はこの軍事の天才と
兄の頼朝との葛藤をこの物語の中心に描く。軍事の天才であることは認めながらも、余りにも政治的
センスが欠落したこの好色な若い小柄な武士に対しては、随所に厳しい表現が出てくる。さらに
この物語を面白くしているのが、義経をめぐる人物像の個性の強さであろう。兄頼朝は、自分の
政治体制を確立するために、人気者の義経を亡き者にする必要があり、腹違いの弟とは違って
政治的センスは優れているものの、妻の政子の実家北条家に頭が上がらない男として描かれる。
何とか頼朝の権力を貶めることで、朝廷の権威を維持したいと考える後白河法皇は、冷徹に
義経を利用しようとする。他にも叔父の新宮十郎行家、義経の軍監でありながら彼を嫌悪する
梶原景時等々、多種多様な人物が登場する。後に武士の世となり、江戸時代に完成する
武士の規律が出来る前の時代が背景だけに、ある意味人物像も皆自由で奔放である。
間違っているかも知れぬが、司馬が小説として取り上げた最も古い時代の物語であろう。
義経自身の生涯は後の時代から見ても悲劇ではあっただろうが、司馬のこの作品では決して
悲劇的に描かれていないことがいい。いずれにせよ、一気読み出来る極めて面白い作品である。
おいて半ば神格化され、兄の頼朝に徹底的に虐められた美貌の軍事の天才とされている。
歌舞伎や古典でも悲劇の将軍として非常に人気のある人物である。司馬はこの軍事の天才と
兄の頼朝との葛藤をこの物語の中心に描く。軍事の天才であることは認めながらも、余りにも政治的
センスが欠落したこの好色な若い小柄な武士に対しては、随所に厳しい表現が出てくる。さらに
この物語を面白くしているのが、義経をめぐる人物像の個性の強さであろう。兄頼朝は、自分の
政治体制を確立するために、人気者の義経を亡き者にする必要があり、腹違いの弟とは違って
政治的センスは優れているものの、妻の政子の実家北条家に頭が上がらない男として描かれる。
何とか頼朝の権力を貶めることで、朝廷の権威を維持したいと考える後白河法皇は、冷徹に
義経を利用しようとする。他にも叔父の新宮十郎行家、義経の軍監でありながら彼を嫌悪する
梶原景時等々、多種多様な人物が登場する。後に武士の世となり、江戸時代に完成する
武士の規律が出来る前の時代が背景だけに、ある意味人物像も皆自由で奔放である。
間違っているかも知れぬが、司馬が小説として取り上げた最も古い時代の物語であろう。
義経自身の生涯は後の時代から見ても悲劇ではあっただろうが、司馬のこの作品では決して
悲劇的に描かれていないことがいい。いずれにせよ、一気読み出来る極めて面白い作品である。
ベスト500レビュアー
『義経』は、司馬遼太郎が源義経を一人の人間としてとらえた傑作ではないか。
司馬は、源義経を軍事的には優れた才能を持った天才であるも人間としては何かが欠けている人物として描く。幼いころの経験が義経を歪な人物としてしまったのだ。情にあつく人を疑うことを知らない性格、政治的痴呆という欠点は最終的に彼自身の首を絞めていくことになる。
「判官びいき」という言葉がある。その語源は源義経である。彼の官職が判官であった。その義経が悲劇的な最期を遂げた。人々は死後も敗者であるはずの彼を慕うようになっていった。そのことをあらわすように「判官びいき」という言葉が広く定着していったのだ。
まさに、源義経は日本人にとって昔から悲劇のヒーローである。
しかし、司馬遼太郎が優れているのは、従来のような知勇を兼ね備えた名将であり、美男子だったという義経像を破壊していることだ。単なる悲運の武将として描くのではなく、人間として描かれていることが本作の最大の魅力である。
それをよく表しているのが幼いころの牛若丸(義経)の姿を描いているこの上巻である。
「司馬は、個と個のぶつかり合いだった合戦を集団戦に変え、騎兵を使った戦術を編み出したのは義経であるとし、その武将としての能力を高く評価している。
その一方で司馬は、土地の所有にこだわる武士の願望をかなえる形で、朝廷の影響力を排した封建制という、新たな枠組みを作ろうとした頼朝の理想を理解できない義経は、後白河法皇に籠絡され、頼朝の怒りを買うなど、政治的な能力は皆無だったとしている」(歴史街道2022年4月号52頁)。
ともすれば、義経ファンが激怒しそうな設定ではあるが、個人的には人間としての義経像というものをあますことなく描かれているように思う。この上巻ですでにそのあやうさは描かれている。
鎌田正近は幼い義経に次のように語る。
「復讐者の資質は」
と正近はいうのである。
──この濁世の栄達をのぞむな。栄華にあこがれるな。
正近の言葉は、少年の心につぎつぎと滲みこんでゆく。
ここに後の悲劇が垣間見えるのだ。
この上巻では、義経誕生から義仲を追討しようとするところまでしか描かれていない。
義仲追討、平家滅亡、義経追討を描かれた下巻にもこうご期待!
(2022.3.31記)
司馬は、源義経を軍事的には優れた才能を持った天才であるも人間としては何かが欠けている人物として描く。幼いころの経験が義経を歪な人物としてしまったのだ。情にあつく人を疑うことを知らない性格、政治的痴呆という欠点は最終的に彼自身の首を絞めていくことになる。
「判官びいき」という言葉がある。その語源は源義経である。彼の官職が判官であった。その義経が悲劇的な最期を遂げた。人々は死後も敗者であるはずの彼を慕うようになっていった。そのことをあらわすように「判官びいき」という言葉が広く定着していったのだ。
まさに、源義経は日本人にとって昔から悲劇のヒーローである。
しかし、司馬遼太郎が優れているのは、従来のような知勇を兼ね備えた名将であり、美男子だったという義経像を破壊していることだ。単なる悲運の武将として描くのではなく、人間として描かれていることが本作の最大の魅力である。
それをよく表しているのが幼いころの牛若丸(義経)の姿を描いているこの上巻である。
「司馬は、個と個のぶつかり合いだった合戦を集団戦に変え、騎兵を使った戦術を編み出したのは義経であるとし、その武将としての能力を高く評価している。
その一方で司馬は、土地の所有にこだわる武士の願望をかなえる形で、朝廷の影響力を排した封建制という、新たな枠組みを作ろうとした頼朝の理想を理解できない義経は、後白河法皇に籠絡され、頼朝の怒りを買うなど、政治的な能力は皆無だったとしている」(歴史街道2022年4月号52頁)。
ともすれば、義経ファンが激怒しそうな設定ではあるが、個人的には人間としての義経像というものをあますことなく描かれているように思う。この上巻ですでにそのあやうさは描かれている。
鎌田正近は幼い義経に次のように語る。
「復讐者の資質は」
と正近はいうのである。
──この濁世の栄達をのぞむな。栄華にあこがれるな。
正近の言葉は、少年の心につぎつぎと滲みこんでゆく。
ここに後の悲劇が垣間見えるのだ。
この上巻では、義経誕生から義仲を追討しようとするところまでしか描かれていない。
義仲追討、平家滅亡、義経追討を描かれた下巻にもこうご期待!
(2022.3.31記)