8章や12章にも出てきますが、相当なインテリジェンスと交友関係を有し、なおかつ文字通り身一つからの長い在住経験と、東洋文化に深い見識を持つアレックス氏が、惜しげも無くこれまでの話や考え方を伝えてくれます。受賞時に司馬氏も評していますが、自ら価値を見出す眼識も併せ持ちます。
外国人の現代日本観としては、著名なアトキンソン氏はデータや国際比較から論理的かつトップダウン的に提言するのに対し、アレックス氏は本当に深い精神世界からじわじわと静かにボトムアップしてきます。そこから滲み出る感覚は、単なる憧景ではなく、失わず大切に繋ぐ努力が求められていることを強く感じます。
発刊はやや古いですが、時代を超えて伝わるものですので、今でも読むに値します。著者はその後、東洋美術はもとより、景観論(本文中にもたびたび出てきますね)と古民家プロデュースで名を成しています。
本書と直接は関係ないですが、最近の話題では千葉県小湊鉄道の養老渓谷駅の取り組みを思い出しました。かつてより先代社長の理念から沿線風景の美化に力を注いでいたようですが、駅前のコンクリートをひっぺがし、渓谷までの道を森に返したという<逆開発>をやってのけたという。
今必要なのはこういうものなんじゃないかな。室生寺、まだ行けてないです。行くのが楽しみです。
<追記>室生寺を訪れました!なかなか遠かった・・・氏の言わんとするところを感じ取ることはできましたが、残念ながら何か所も工事中。鉄骨の足場で固められ、あちこちに資材が散乱し。。。神社仏閣名所の工事は長いからこそ、ああいったの何とかなりませんかね。工事中でも美しさを感じられる、もしくは醜さを打ち消せる工夫。
さらに追記。
本書を気に入った方にお勧めは、ブルーノタウト氏の日本雑記。アレックス氏のもう一つ前、1930年代の日本の美しさを追っています。
当時の端々に見られた美しさ、アレックスは祖谷に見出し、そして今や。。
ブルーノ氏は、いかもの という的を得た表現をとっています。
さらにさらに追記。
よっぽど本書が気に入り、氏の著作を全作読みました。京都建築のディテールに古民家の眺め方、看板に砂防、最近だと観光亡国論のオーバーツーリズム問題。色々学ばせていただきましたが、なんのかんので本書が一番です。著述群すべてに通じる、氏の持つ真の美意識、そして氏が好んで使う「醜悪」の意味について、一番饒舌に語っておりますので。
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