設定とあらすじだけがあり、それだけを書いたという、そんな気がした。
いろいろと思いが語られるのだけれど、その思いを生み出す背景が、あまりに単純な事実のみが語られるだけで、その思いに共感と説得力を持たせられないでいる。
結論ばかりが並べられていて、何故そう思うのか、ディテールがあまりに不足しているのだ。
結果、やけに訳知り顔に述べているのだけれど、各人物に決定的にリアリティが不足して、生々しい悲しみも伝わって来ない。登場人物たちが、普通にそこに息づいていない。
悲しい出来事を大まかに設定し、最低の行数でそれをまとめ、述べ、後は「悲しい」とだけ呟いても、それでは伝わらない。
終幕前の場面が、基本、偶然の出会いによって生まれているのも、あまりに都合が良過ぎて、安易な作り物になってしまっている。
漫画は素晴らしい。エッセイも、最近ちょっと説教くさいけれど、悪くない。
でも、小説は、もっと寄り添ってくれて、大切に育ててくれる編集者と出会って、満を待して発表して欲しかった、と思った。
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