森林保護活動家等から過大に評価される傾向が在る森林の治水や利水の傾向を科学的に再考察した有意義な試み。情緒的な議論が多い中で、冷静に森林が持つ能力を出来る事と出来ない事を検証し、明確にしている。また、論争も含めて著作段階での現状を明確化していると言う傾向も客観的に考察し易い。
また、仮に森林の治水・利水効果に過剰な期待をしている場合、願望に反して物足りないと感じるかもしれないが、それは本書が専門家の意見として正直に森林の持つ効果形態をそのまま提示していると言う事に他ならない。
結果的にその種の議論や考察の前に読む事をおススメしたいし、今後日本人が森林とどうつきあって行くかについて考察する意味でも本書の意味は非常に重いと言える。意見としてのバランスもよく、論理的に仕上げられており、大変秩序だった論証が完成された物を感じさせる。書籍としてみて、誠実に時間をかけて取り組まれており小気味よい良書である。
森林と河川や防災そして人工のダムの存立とのバランスの良い建設的な議論を成す為にも、森林と治水の関わりに関して興味の在る方には、プロアマを問わず必読の書籍と言える。知っておかなければ成らない大前提を知る為にはこれほど良好なアプローチは無い。
緑のダム―森林・河川・水循環・防災 (日本語) 単行本 – 2004/12/1
蔵治 光一郎
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ISBN-104806713007
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ISBN-13978-4806713005
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出版社築地書館
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発売日2004/12/1
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言語日本語
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本の長さ260ページ
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
森林、河川、水循環、防災―これまでの研究で、何がどこまでわかっているのか。今まで情緒的に語られてきた「緑のダム」を、第一線の研究者、行政担当者、住民、ジャーナリストがあらゆる角度から科学的に検証する。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
蔵治/光一郎
1965年東京都生まれ。東京大学農学部林学科卒業。同大学院博士課程在学中、青年海外協力隊員としてマレーシア・サバ州森林局森林研究所に勤務。博士(農学)。東京大学農学部附属千葉演習林、東京工業大学大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻等を経て、現在、東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林愛知演習林講師
保屋野/初子
1957年長野県生まれ。法政大学大学院修士課程政策研究プログラム修了。筑波大学卒業後、出版社、雑誌記者を経てフリージャーナリスト。水、公共事業、河川、森林など自然と人間社会とのかかわりを主なテーマに執筆および編集活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1965年東京都生まれ。東京大学農学部林学科卒業。同大学院博士課程在学中、青年海外協力隊員としてマレーシア・サバ州森林局森林研究所に勤務。博士(農学)。東京大学農学部附属千葉演習林、東京工業大学大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻等を経て、現在、東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林愛知演習林講師
保屋野/初子
1957年長野県生まれ。法政大学大学院修士課程政策研究プログラム修了。筑波大学卒業後、出版社、雑誌記者を経てフリージャーナリスト。水、公共事業、河川、森林など自然と人間社会とのかかわりを主なテーマに執筆および編集活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 築地書館 (2004/12/1)
- 発売日 : 2004/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 260ページ
- ISBN-10 : 4806713007
- ISBN-13 : 978-4806713005
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カスタマーレビュー
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2010年6月22日に日本でレビュー済み
ダム建設に反対する市民団体が喧伝する「緑のダム」。
本書は「『緑のダム』がどれだけの効果を発揮するのか」という疑問を科学的に解明することに挑戦した意欲作です。
第1章では「緑のダム」の効果を様々な立場の専門家が論じています。
中には相反する主張が展開されており、「緑のダム」の効果を定量的に把握することがいかに難しいかが伝わってきます。
例えば、森林生態学が専門の中根教授の研究成果(pp.104-117)について、水文・水資源工学の吉谷研究員が異を唱えていたり
(p.125後ろから4行目)、吉谷研究員の主張(p.125)を森林水文学の蔵治講師が否定したり(p.137)と、専門家でさえ見解は一致していません。
不確実なことが多いため、河川計画に「緑のダム」の効果を織り込むのは現時点では難しいという印象を受けました。
第2章では「緑のダム」が議論になった事例が紹介されています。
特筆すべきは高知県梼原(ゆすはら)町の事例紹介です。当町では風力発電の収益をもとに基金を設立し、その財源で森林整備を行っています。
荒廃した森林を整備するための仕組みづくりは急務であり、この事例は大いに参考になるものと思われます。
手入れが行き届いている森林とそうでない森林で「緑のダム」の効果に差があるかは、現時点では明確に言うことができません。(p.149)
しかし、だからといって何もしないのではなく、とにかく行動してみることが大事なのでしょう。
本書は「『緑のダム』がどれだけの効果を発揮するのか」という疑問を科学的に解明することに挑戦した意欲作です。
第1章では「緑のダム」の効果を様々な立場の専門家が論じています。
中には相反する主張が展開されており、「緑のダム」の効果を定量的に把握することがいかに難しいかが伝わってきます。
例えば、森林生態学が専門の中根教授の研究成果(pp.104-117)について、水文・水資源工学の吉谷研究員が異を唱えていたり
(p.125後ろから4行目)、吉谷研究員の主張(p.125)を森林水文学の蔵治講師が否定したり(p.137)と、専門家でさえ見解は一致していません。
不確実なことが多いため、河川計画に「緑のダム」の効果を織り込むのは現時点では難しいという印象を受けました。
第2章では「緑のダム」が議論になった事例が紹介されています。
特筆すべきは高知県梼原(ゆすはら)町の事例紹介です。当町では風力発電の収益をもとに基金を設立し、その財源で森林整備を行っています。
荒廃した森林を整備するための仕組みづくりは急務であり、この事例は大いに参考になるものと思われます。
手入れが行き届いている森林とそうでない森林で「緑のダム」の効果に差があるかは、現時点では明確に言うことができません。(p.149)
しかし、だからといって何もしないのではなく、とにかく行動してみることが大事なのでしょう。
2005年2月8日に日本でレビュー済み
長良川河口堰・吉野川第十堰・川内川ダムそして長野県の脱ダム宣言.
川をとりまく環境問題(むしろ,公共事業問題?)がクローズアップされるとよく出てくるのがこの”緑のダム”という言葉.
昔に比べて洪水が増えたのは,山が荒れているせいだ・・・なんていうのはよく出てくるはなし.
山をきちんと手入れすれば,山(森林)が水を蓄えて,ダムのような役割を果たしてくれる.
そんな風によく言われるが本当にそうなのか?
本書では,さまざまな立場の人が,その問いに迫っている.
しかし,見えてくる答えは,二つの壁.
「緑のダム」に対する世の中の過剰な期待と,現実の狭間で森林水文学者達が苦悩する.
それでも,なんとか緑のダムと呼べるような働きを示してみせるものの,やはりそれにも限界はある.
必要なのは,山(森林)に「できること」,「できないこと」を現実としてとらえなければならないということ.
その上で,何を捨てて,何を残し,何を作っていくのかをそれぞれの場所で考えなければいけないということ.
それは,そこに住む人たち自身で考えなければならないこと.
そして,私たち学者は,わからないなりにその問いに答える努力をしていくこと.
当たり前のことだけど,そういうことの大切さを確認させられた本でした.
川をとりまく環境問題(むしろ,公共事業問題?)がクローズアップされるとよく出てくるのがこの”緑のダム”という言葉.
昔に比べて洪水が増えたのは,山が荒れているせいだ・・・なんていうのはよく出てくるはなし.
山をきちんと手入れすれば,山(森林)が水を蓄えて,ダムのような役割を果たしてくれる.
そんな風によく言われるが本当にそうなのか?
本書では,さまざまな立場の人が,その問いに迫っている.
しかし,見えてくる答えは,二つの壁.
「緑のダム」に対する世の中の過剰な期待と,現実の狭間で森林水文学者達が苦悩する.
それでも,なんとか緑のダムと呼べるような働きを示してみせるものの,やはりそれにも限界はある.
必要なのは,山(森林)に「できること」,「できないこと」を現実としてとらえなければならないということ.
その上で,何を捨てて,何を残し,何を作っていくのかをそれぞれの場所で考えなければいけないということ.
それは,そこに住む人たち自身で考えなければならないこと.
そして,私たち学者は,わからないなりにその問いに答える努力をしていくこと.
当たり前のことだけど,そういうことの大切さを確認させられた本でした.
2005年5月30日に日本でレビュー済み
緑のダムには限界があります。山の谷間をすべて水タンクにする人工ダムと比べ、山のわずかな地層でしか、水を貯めることができません。
また、人工ダムと同じように、雨が降りすぎれば決壊します。蓄積雨量が限界を超えた後は降雨量がそのまま下流に流れます。
手入れも必要です。手入れを怠ると、地表の間隙率が下がり、固くなった土壌は水を浸透させることなく地表流を生み出します。
さらに、木々が水を必要とするため、地層の保水力が増すものの、渇水時には水を吸い取ります。世界各地で干ばつを悪化させている樹種さえあります。
緑のダムを生かすには、現存する森林の能力を正確に把握した上で、人工物と組み合わせ、最適な治水方式を選択しなければなりません。
本書は間違いなく良書ですが、マスコミ受けするような緑のダム礼賛論を一蹴していますので、覚悟してください。
森林の能力に関しても、賛否両論。節ごとに異なる結論が出ている場合もあります。
そして、最適な治水方式を選択するための試みは始まったばかりです。吉野川流域での討論会が紹介されていますが、未だ道半ばです。
水と山と森に関わる多くの方に読んでいただきたい。緑のダムを生かすか殺すか。本書を読んでいるかどうかが決め手になるでしょう。
また、人工ダムと同じように、雨が降りすぎれば決壊します。蓄積雨量が限界を超えた後は降雨量がそのまま下流に流れます。
手入れも必要です。手入れを怠ると、地表の間隙率が下がり、固くなった土壌は水を浸透させることなく地表流を生み出します。
さらに、木々が水を必要とするため、地層の保水力が増すものの、渇水時には水を吸い取ります。世界各地で干ばつを悪化させている樹種さえあります。
緑のダムを生かすには、現存する森林の能力を正確に把握した上で、人工物と組み合わせ、最適な治水方式を選択しなければなりません。
本書は間違いなく良書ですが、マスコミ受けするような緑のダム礼賛論を一蹴していますので、覚悟してください。
森林の能力に関しても、賛否両論。節ごとに異なる結論が出ている場合もあります。
そして、最適な治水方式を選択するための試みは始まったばかりです。吉野川流域での討論会が紹介されていますが、未だ道半ばです。
水と山と森に関わる多くの方に読んでいただきたい。緑のダムを生かすか殺すか。本書を読んでいるかどうかが決め手になるでしょう。
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