古代メソポタミア、古代ユダヤ社会、イスラーム、ビザンツ社会の出版状況、書店、書籍の価格、識字率、人口、写本、印刷、蔵書数など、上記各社会の「情報流通の社会史」を描いた点で得がたい書籍となっています。また、多くの場合、各時代・社会毎に資料不足があり、均一の情報を揃えられないことが多いのですが、本書は、断片的な情報からできる限り均一の情報を揃えるように努力しており、社会史に必要なデータのフレームワークを示した点が◎。上記2点だけでも本書の価値は大いにあると思うのですが、注釈が少なく根拠の無い記述が多い点が残念です。
以下の2点は出典が無いものの例
・ビザンツの文官率26%は、井上浩一氏の出典が記載されているが、ローマ帝国の文官率11%
・アッシュール=バニパル時代のニネヴェの人口12万人
・ビザンツの文盲率は90%
以下は一応出典があるものの、引用箇所や推定根拠が不明なので確認が困難な例
・ヘロドトスにあるとする、「アケメネス時代のバビロンには市場がひとつも無い」との記載
・最古のパリンプセプトは5世紀
・ビザンツが紙の存在を知ったのは1100年
・ビザンツの写本に925年以前のものは存在していない
・「フィフリスト」に記載された書籍のタイトル1000点
・ビザンツ帝国の人口推定(1000年には2000万、1100年には1000万)
藤原佐世が891年に編した1590の書籍を掲載した「日本国見在書目録」や、バチカン蔵書75000冊のうち3万がビザンツ由来など、興味深い記載にあふれ、特に後半他書であまり類を見ないビザンツ社会の教育や古典保存の実情など、ビザンツ社会の情報流通・再生産・知識人の記載がされていて得がたい情報が多く有用な書籍なのですが、出典の注釈が非常に少なく、記事が筆者の筆のすさびと思える箇所が多々あり、信憑性は読物として楽しむ新書レベルに留まってしまっている点が残念。
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