チリの元大統領サルバドールアジェンデが軍事クーデターにより命を落とした後、ベネズエラに亡命したその姪イザベルアジェンデが著した本書。
私自身当初は百年の孤独を頭に思い浮かべながら本書を読み進めていた。
百年の孤独を家長ホセ・アルカディオを中心とした男系社会の一族史であるとすれば、精霊たちの家は千里眼のクラーラを中心に据えた女系社会の一族史と呼べるものではないかと。
しかしながら本書の後半、三世代目のアルバの代が進むにつれ紹介文などで繰り返し語られる著者イザベルアジェンデの生活史が本書に大きな意味を持つものとなる。精霊たちの加護が失われた第三世代に至り、祖国を襲うクーデターの嵐、そして時代に流される国家。その中で時代と因果の波に翻弄されながらも女性が自らの愛と信念のために生き抜く様はどこまでがフィクションなのかと考えてしまうほどとてつもないリアリティがある。
クーデターという国家の一大事と幾世代にもわたる因果の波に翻弄ながらも自身の信念を貫く女性たちの物語。
百年の孤独とはまた違う、間違いのない傑作です。海外小説好きなら読んで損はない一作です。
※追記ですが、アジェンデ、マルケス両名の作品にみられる「マジックリアリズム的表現」は、両名とも自身の体験に基づくものであり、その時代ラテンアメリカでは日常的に見られていた光景であるとのこと。日本にもそうした時代があったのでしょうか?
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