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[高山 環]の箱の中の優しい世界

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箱の中の優しい世界 Kindle版

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商品の説明

内容紹介

近未来サスペンス小説です。ラストまでスピード感を保つように心がけて書きました。最近流行りの「ブロックチェーン」をモチーフにしていますが、ITの知識がない方でも楽しんでいただけると思います。

「世界を共有化する」突如ネットに発表されたワタナベノートに従い、次世代セキュリティシステム「ボックスチェーン」の開発していた佐野は、システム完成直後ランニングをしていて車に轢かれてしまう。
事故から目覚めると世界は一変していた。動物がいない動物園、隠された美術品、PCと呼ばれる新たな概念が支配する世界。自らが開発したボックスチェーンが世界の変化に関与していた。
ライバル企業の暗躍、死んだと思っていた昔の上司の登場。欲望と裏切りが渦巻く世界をより良くするために、佐野は再び走る。

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       プロローグ

『会いたい』
 スマートフォンに届いた元恋人からのメッセージを無視して、玄関ドアに二つ目の鍵を閉めた。元セキュリティ担当の俺が不用心で空き巣に入られたら恥だ。今の姿を誰かが見たら、お前が空き巣だと突っ込みそうだが。
 全身黒ずくめのランニングウェアで、準備運動をせずにマンション前の夜道を走りはじめる。これからたっぷり運動をするのに体を事前に動かすのは時間の無駄だ。もっと明るい色の服を着た方がいい、と昔恋人に忠告されたが、LEDライトを全身につけて散歩するような真似はしたくない。
 よく知らない者は、セキュリティを保険だと思っているが、間違っている。保険は自分が怪我や死亡したときのため、つまり失敗したときのためにあり、セキュリティはそういった事態に陥らないためにある。コンドームとピルの関係と同じだと思ったが、全然違うと考えを改める。こんな暴言を会社で吐いたら、セクハラと咎められるだろう。
 街灯の明かりが丸く落ちる夜道を駆けながら、ランニング用ウォッチを見る。自分で決めたペースで走れている。フルマラソンをサブ4で走るのを目標にしている。サブ4とは四時間以内の完走のことで、一人前のランナーと認められる勲章だ。そのためには一キロ五分三十五秒で四十二キロを走り続ける必要がある。フルマラソンを完走する力はまだないので、まずは今月末に開催される十キロのチャリティマラソンにエントリーした。
『今日みたいに大きな仕事の区切りがついた日ぐらい休んでもよくないですか?』
 打ち上げの誘いを断ったら、スタッフに言われた。確かに今日は特別な日だ。だが、どんなときでも、同じペースで同じ頻度で走るのが重要だと信じる。
 シビアだが、自分で決めたことだ。なにがあってもバランスを崩さず、ルーティンを守る。リズムよく同じ角度で腕を振り、脚を回転させる。ルーティンの積み重ねが大きな結果を生む。小さなルーティンから、大きなルーティンへ。小さな輪が重なり、大きな輪ができる。小学校で作った輪飾りを思い出す。小さな輪の集まりが大きな輪となり、教室を囲む。システムづくりも同じだ。プログラミングした小さなルーティンを繋げて、大きなシステムができあがる。
 九月の風を受けながら、さきほど受信した元恋人からの短いメッセージを思い出す。今更よりを戻してもどこにもいけない。いくつかのルーティンをこなしながら、俺は先へ進んでいる。
 走り慣れてくると、心臓の鼓動でどれくらいのペースで走っているかわかる。このウォッチは心拍数も計測できるので正確な数値で把握もできる。
 黒い服で走っているからといって、安全を考えず、無謀に走っているわけではない。本番の大会じゃないのだから、車道の真ん中を走りはしない。広い歩道しか走らないし、赤信号はもちろん停止する。事故に遭遇するリスクを減らし、注意を怠らない。
 国道に出た。直線道路で走りやすい。スピードが出やすいので、腕の振りが早まらないように注意する。

 カチリ

 腕時計から音と振動が伝わる。頭を下げて画面を確認する。
『ゲームスタート。キープ、ユアペース』
 画面に英語のメッセージ。自分のペースを保て。こんなガイダンスを表示する機能はなかったはずだ。スタートって、もうとっくに走りはじめている。なんだろう、このメッセージ。

 ドン!

 肩が何かにぶつかった。左肩が撃たれたみたいに痛い。息が一瞬止まる。上半身がよろめき、片足飛びの格好になる。驚いて顔を上げて振り向くと、コートを纏った年老いた男性の背中が肩越しに見えた。背丈からすると彼の頭が肩に当たったようだ。いつのまに前を歩いていたんだ。走ってくる俺の姿が見えなかったのか。時計をのぞきながら走っていた自分にも非があるから、人のことは言えないが。
 再び腕時計から振動が響く。ハートマークが黄色に変化し、ペースが落ちたことを警告している。こんな機能があると初めて知った。元のペースに戻そうと腕の振りを早め、車道が遠く、極めて安全な幅広の歩道を走る。
 歩幅を広げた左足がアスファルトを踏む瞬間、体がぐらっと揺らいだ。地震? 後ろから押されたように左足の膝が崩れ、バランスを欠いた体幹が傾き、倒れる体を支えようと右足を斜め前に突き出すが、右の膝もあっさり折れて、よろけた体の上に乗る頭も揺らぐ。高い場所から落ちたみたいに頭の中がふらつく。脱水症状? いや、まだ一キロも走っていない。ありえない……。
 ふらついた体は意図せず蛇行し、安心安全の歩道から車が行き交う危険な車道に落ちる。路肩から落ちる衝撃を受けとめることもできず、アスファルトの車道へうつ伏せに倒れる。眼の前に眩いヘッドライト。歩道に戻らないと……。掌を突こうとするが力が入らず、アスファルトに顔を埋める。体の動きと共に意識も停止した。

 目が開く。
 眩しい光と激しい振動。
 倒れたままだが、アスファルトの路上ではない。
 屋外ではない。ここはどこだ?
 聞き慣れない音と見知らぬ人の切迫した声。
 視界がぼやけている。
 体が揺れている……。車の中?
 息が苦しい……。
 空気を求め口を開けるが、体に酸素が入らない。息を吸っても、苦しいままだ。穴の開いた風船をいつまでも膨らませているみたいだ。心臓が鼓動を早める。
「息が……、息が、できない!」
 周りの人間に必死で伝える。
「大丈夫です、落ち着いて」
 周りの看護師が俺を宥めて、酸素マスクを顔につけてくれる。
 看護師? ここは救急車の中か。
 俺は一体……、と思ったところで意識が再び落ちる。


 目が開く。
 息ができる。
 目も見える。
 天井が動く。
 横になったまま自分の体が進んでいる。緑色の天井。ここは病院か。心電図モニターの電子音が聞こえる。布でできた帯で体が固定されているから自由に動けない。口には酸素吸入器。どうなったんだ? 何が起きたんだ? 疑問符ばかり浮かぶ。ランニングをしていて、体がふらついて……。そこから覚えていない。
 自由に動く首を横に向けると、光沢のある白衣のパンツが目に入る。俺が乗るストレッチャーを看護師たちが押す。車輪が段差を越えて振動が伝わると腰のあたりに痛みが走る。足や腕や胴体や体のあちこちが軋む。皮がむけたのか顔もヒリヒリする。身体のどこが怪我して、どこが正常なのか見当がつかない。
 ストレッチャーが左に曲がり、天井も回る。寝たまま動かされるのは、はじめての体験だ。目が回る。寝た状態の移動は、こんなに気持ちが悪いものなのか。それだけじゃない。身体が自分の自由にならないのが不快なのだ。
 自動ドアを通過し、広い部屋に出る。さまざまな医療機器が並ぶ。手術室だ。ドラマで見たとおりだ。
 天井の手術灯が点灯する。強い光が毒であるかのように眼が痛む。周りで大勢の看護師がせわしなく動く。カチャカチャと金属の当たる音がする。看護師のひとりが時間を読み上げる。
 ラテックスの手袋をした女性の医師が酸素吸入器を俺の口から外す。おかしなことだが酸素吸入器をとった方が楽に息ができる。
「俺はどうなったのですか?」
 声を絞り出す。部屋の反響なのか、自分の声質が変わったのか、別人の声に聞こえる。
 意識がもどりました、と看護師が告げる。俺は首を動かし、この場の責任者を探す。
 横にいた青いマスクと手術帽をした男が顔を近づけてきた。日常の生活ではありえない距離に顔を近づけて、男がマスクを取る。
 現れたのは鋭く切れ長の眼光、高い鼻。かなり端正な顔立ちの医師だ。
「大丈夫です。必ずわたしが助けますから」
 イケメンの医師が微笑みながら、俺の手をぐっと握る。逞しい手だ。
 彼が執刀医か。彼なら信頼できそうだが、俺の体のどこを手術するのだ。疑問を口にしようとしたとき、新たな酸素吸入器が女医によって顔につけられる。
「大きく息を三回吸ってください」
 なにかの気体が器具に充填され、俺は息を吸う。これは麻酔かと思ったときに再び意識が切れた。


登録情報

  • フォーマット: Kindle版
  • ファイルサイズ: 1017 KB
  • 紙の本の長さ: 239 ページ
  • 同時に利用できる端末数: 無制限
  • 販売: Amazon Services International, Inc.
  • 言語: 日本語
  • ASIN: B07JQJK6D6
  • Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能): 有効
  • X-Ray:
  • Word Wise: 有効にされていません
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0 1 件のカスタマーレビュー
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2018年11月13日
形式: Kindle版
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