短編集で、いくつかの章は別の小説と関連している。
ディストピアものとなると、1984年やブレードランナーのような古典名作を
イメージしやすいが、それらよりは多少現実感がある近未来もの。
表題になっている第六ポンプという短編では、私が日頃から感じている技術の進みについていけない凡人の焦りを
代弁してもらったようで、とても気に入っている。
例えば以下のように感じたことがある人は御一読いただければと思う。
「最近の人は、世界がどんどん進化していく中で与えられた学習期間は昔と変わらずなんて状況で、
覚えなきゃいけないことが多くて大変だね」
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第六ポンプ Kindle版
-
言語日本語
-
出版社早川書房
-
発売日2013/12/5
-
ファイルサイズ1039 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
化学物質の摂取過剰のために、出生率の低下と痴呆化が進化したニューヨーク。下水ポンプ施設の職員の視点から、あり得べき近未来社会を鮮やかに描いたローカス賞受賞の表題作、石油資源が枯渇して穀物と筋肉がエネルギー源となっている、『ねじまき少女』と同設定のアメリカを描きだすスタージョン賞受賞作「カロリーマン」ほか、全10篇を収録。数多の賞に輝いた『ねじまき少女』でSF界の寵児となった著者の第一短篇集。
--このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
バチガルピ,パオロ
1972年米国コロラド州生まれ。オバーリン大学で東アジア学を専攻した。在学中に中国に渡航し、コンサルタントなどをしながら数年間を中国で暮らす。帰国後はウェブ開発者や環境分野の専門誌の編集をしながら小説を書き、1999年に“F&SF”誌に掲載された短篇「ポケットのなかの法」でデビューを果たした。同作は2013年星雲賞の海外短編部門を受賞している。2005年に発表された「カロリーマン」は、シオドア・スタージョン記念賞を受賞。2008年に発表の「第六ポンプ」(以上、本書『第六ポンプ』収録)では、ローカス賞中短篇部門を受賞している。2009年に満を持して発表された第一長篇『ねじまき少女』は、ヒューゴー賞とネビュラ賞の長篇部門、ローカス賞第一長篇部門、ジョン・W・キャンベル記念賞など、主要SF賞を総なめにするという快挙をなしとげた。『シップブレイカー』は2010年に発表された長篇第二作で、ローカス賞のYA長篇部門を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
1972年米国コロラド州生まれ。オバーリン大学で東アジア学を専攻した。在学中に中国に渡航し、コンサルタントなどをしながら数年間を中国で暮らす。帰国後はウェブ開発者や環境分野の専門誌の編集をしながら小説を書き、1999年に“F&SF”誌に掲載された短篇「ポケットのなかの法」でデビューを果たした。同作は2013年星雲賞の海外短編部門を受賞している。2005年に発表された「カロリーマン」は、シオドア・スタージョン記念賞を受賞。2008年に発表の「第六ポンプ」(以上、本書『第六ポンプ』収録)では、ローカス賞中短篇部門を受賞している。2009年に満を持して発表された第一長篇『ねじまき少女』は、ヒューゴー賞とネビュラ賞の長篇部門、ローカス賞第一長篇部門、ジョン・W・キャンベル記念賞など、主要SF賞を総なめにするという快挙をなしとげた。『シップブレイカー』は2010年に発表された長篇第二作で、ローカス賞のYA長篇部門を受賞している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者について
1972年、米国コロラド州生まれ。オバーリン大学で東アジア学を専攻。在学中に中国に渡航し、その後数年間を暮らした。2009年刊行の第一長篇『ねじまき少女』は、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞など、主要SF賞を独占するという快挙を成し遂げた。2010年代のSF界でもっとも活躍が期待される作家の一人である。
--このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00IIY0KI2
- 出版社 : 早川書房 (2013/12/5)
- 発売日 : 2013/12/5
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1039 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 404ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 43,491位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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2019年7月10日に日本でレビュー済み
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2014年4月12日に日本でレビュー済み
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携帯電話が普及する前は、みんな電話番号の何桁かを覚えていたが、普及して覚える能力がなくなったというのがたまに言われる。スマホやWebの普及で、また変わった部分も色々とあるかなというのは思う。
いくつかの短編は、不老不死の実現など何らかのテクノロジーの発達に対して、人間が劣化しているというのが主題になっていると思われる。先祖返りというか、未来の世界というのは、逆に前近代のような社会になっているというのが、この作家に見られる共通したヴィジョンだ。
そういった世界観を味わうというところでは、面白い短編集だと思う。ただ、そういう設定部分は面白いが、キャラクターが弱いのとストーリーが性急かな、というのがちょっと思った。
「ねじまき」の色々な登場人物が交差していく興奮と比べると弱いかなと思ったが、スプリングライフ社など、共通している世界観の物語が見られてよかった。
いくつかの短編は、不老不死の実現など何らかのテクノロジーの発達に対して、人間が劣化しているというのが主題になっていると思われる。先祖返りというか、未来の世界というのは、逆に前近代のような社会になっているというのが、この作家に見られる共通したヴィジョンだ。
そういった世界観を味わうというところでは、面白い短編集だと思う。ただ、そういう設定部分は面白いが、キャラクターが弱いのとストーリーが性急かな、というのがちょっと思った。
「ねじまき」の色々な登場人物が交差していく興奮と比べると弱いかなと思ったが、スプリングライフ社など、共通している世界観の物語が見られてよかった。
VINEメンバー
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その体をフルートに改造された姉妹が絡み合い、互いの体を使って演奏する。全裸で、求め合う如く。……なんと淫靡で魅力的な画か。
早川の銀背、第二弾は 『ねじまき少女』 で長編デビューしたパオロ・バチガルピの短編集。十編中初訳が五編。
消費文明が崩壊しても大企業は世界を支配し、人類が自然界の様相を一変させても一個の人間は地ベタを這いずりながら生きていく。重厚な世界観を背景にしながら、個々の人間(遺伝子改造によりもはやポスト・ヒューマンと化した魅力的な少女たちも含めて)の生き様にあくまでスポットを浴びせるのがこの作家。
『ねじまき』と世界を同じくする「カロリーマン」と「イエローカードマン」。
化石資源が枯渇し、遺伝子改造された大型獣メゴドントの筋力が巻き上げるゼンマイが動力となり、遺伝子組み替え作物の知的所有権を握るバイオ企業が支配する世界。遺伝学者“カロリーマン”と『ねじまき』の舞台バンコクに生きるマレー半島からの生き残り華僑の難民“イエローカードマン”。もと富豪の難民チャンは『ねじまき』のホク・センの原型となったキャラだろう。ねじまき世界へ更に耽溺するためには必読の一篇、いや二篇。
人類の痴呆化と文明の衰退がゆっくり進行する様子が垣間みえる表題作「第六ポンプ」は、かなりダークで社会批評の利いたSF。
新訳では「ポップ隊」がいい。不老不死のかわりに生殖を放棄した人類は何を手に入れ、何を失うか。犯罪である出産と育児をする母を摘発し、有無を言わさず子供を殺す警察官が主人公。にもかかわらず、読後感はなぜかわるくない。
ねじまき少女。フルーテッド・ガールズ。いいなあ。誰か立体化してくれないかなあ。
早川の銀背、第二弾は 『ねじまき少女』 で長編デビューしたパオロ・バチガルピの短編集。十編中初訳が五編。
消費文明が崩壊しても大企業は世界を支配し、人類が自然界の様相を一変させても一個の人間は地ベタを這いずりながら生きていく。重厚な世界観を背景にしながら、個々の人間(遺伝子改造によりもはやポスト・ヒューマンと化した魅力的な少女たちも含めて)の生き様にあくまでスポットを浴びせるのがこの作家。
『ねじまき』と世界を同じくする「カロリーマン」と「イエローカードマン」。
化石資源が枯渇し、遺伝子改造された大型獣メゴドントの筋力が巻き上げるゼンマイが動力となり、遺伝子組み替え作物の知的所有権を握るバイオ企業が支配する世界。遺伝学者“カロリーマン”と『ねじまき』の舞台バンコクに生きるマレー半島からの生き残り華僑の難民“イエローカードマン”。もと富豪の難民チャンは『ねじまき』のホク・センの原型となったキャラだろう。ねじまき世界へ更に耽溺するためには必読の一篇、いや二篇。
人類の痴呆化と文明の衰退がゆっくり進行する様子が垣間みえる表題作「第六ポンプ」は、かなりダークで社会批評の利いたSF。
新訳では「ポップ隊」がいい。不老不死のかわりに生殖を放棄した人類は何を手に入れ、何を失うか。犯罪である出産と育児をする母を摘発し、有無を言わさず子供を殺す警察官が主人公。にもかかわらず、読後感はなぜかわるくない。
ねじまき少女。フルーテッド・ガールズ。いいなあ。誰か立体化してくれないかなあ。
2014年3月16日に日本でレビュー済み
当たりかハズレか、というと当たり。
本物かまがい物かで言えば、本物。
いかがわしく、猥雑で、強烈な「SFらしさ」を全身にまとったまばゆさに目がくらむ。
「ポケットの中の法(ダルマ)」
ダライ・ラマの人格をダビングしたキューブにまつわる話。ゴーストを
不揮発性メモリに封入することで転生できない、ってのは新しいと思った。
しかしそのワンアイデアよりは、その物語が展開される背景にこそ目が行く。
「まもなく、成長しつつある核は、雨に濡れている瓦屋根の旧市街を飲みこむだろう。
そうしたら、生きている構造物である活建築は、成都そのものになる。」
活建築は鉱物の結晶構造状に成長していた。まず骨格がのび、それをセルロースの
皮膚がおおっていた。太くて強い基礎構造は成長し、枝分かれしていた。四川盆地の
肥沃な緑色の土壌に根が深く張っていた。土壌と太陽から栄養とミネラルを得ていた。」
いつかあの生きた巨大建築の中で暮らしたい、と思うストリートチルドレン。
そのポケットに転がり込んだダライ・ラマ。
徹頭徹尾「サイバーパンク!」という感じ。きらびやかで、汚れていて、暴力的で、
人があっという間に死ぬ世界。バイオな建築とか、うう、シロマサ!と叫びたくなる。
とにかく設定、背景世界そのものに酔える。本書の幕開けに相応しい。
「フルーテッド・ガールズ」
悪趣味な話。人体を楽器に改造されたアイドルの悲哀。
現在のアイドル業界への単純な皮肉と読めなくはない。
演奏シーンをどれだけエロエロしく想像できるか、が読み手に要求される。
映像化するときはここがキモになるだろうなーとか。
「砂と灰の人々」
うーわー。これも悪趣味だ!そして期待通りに悪くて面白い!
砂を食べても生きていける様になった人類の前に、絶滅したはずの
かつての相棒、野良犬が現れる。面白半分に世話をして……みたいな。
すぐに病気になり、怪我をして、簡単に弱ってしまう、脆い生き物を前に
人ならざる精神に「進化」しちゃってる登場人物たちの中にわずかに
芽生える「人」がましさ。それはしかし、オチを予測させる。
「まぁ、そうなるわな」、というオチ。きっついわー。でも、うーん、
動物を飼うの面倒になる時あるよね……
「パショ」
これも読み進めるうちに見えてくる「設定」(登場人物たちの独特な行動様式の
裏に見える歴史、なぜこの世界がこうなっているのか、何があったのか)に
うわー!と背筋がぞくぞくする感じ。その「世界の秘密」を知りたくて、ページを
捲る手が止まらない。とても上手い。
文明崩壊後に、その崩壊の理由(精神性に伴わない科学技術)を踏まえて、
過去の知識を管理し、精神性の成長を見つつ提供していく、ゆっくりと……
というのが果たしてうまくいくのか(その辺のソリューションはあまり
明確で無い)っていうのは気になったけど、いやー、これも傑作。「SF」を
味わったぜ。
「カロリーマン」
冒頭からぐっとくる描写、例えば
「建物はウェザーオールのチップをプレス成形したもので、酒に酔ったように
隣同士よりかかっている。雨染みだらけで日焼けしてひび割れているが、
商標どおりの耐久性は維持している」
とかにもうSF心を感じてキュンキュンしてしまう。
このディティール、この言葉遣いこそSFよ!(伝わらないのは百も承知の上)。
物語そのものはややご都合主義的でありきたりと言えるかもしれない、が、
それらは圧倒的なSF的ディティール(秘密の花園が維持できる理由とか)を
美味しく味わうための「枠組み」でしかない、という感じ。ああ!SFだ!
「タマリスク・ハンター」
小休止的な一本。水の優先利用権を抑えられた流域住民の乾き。なんか椎名誠みたい。
他のディストピア的描写と異なり、乾いていて、荒涼とした感じがいい。
「ポップ隊」
永遠の若さが手に入った時代、違法に生まれてくる赤ん坊をサーチ&デストロイ
(ポップ)してまわる話。設定の乱暴さがガン=カタっぽい。悪趣味だな、と
思うのと同時に、完璧な「若い」女性の肉体に慣れた男の目に映る「たるんだ」
母親に痛いほど感じるエロスとかすげーフェチっぽくていい。「子供」というものの
何気ない行動の愛らしさとかも、こういう世界を背景に描かれると、たまらない
ものがある。
「イエローカードマン」
サイバーパンクっぽい。ディストピア、の一言で片付けてしまうにはあまりにも
芳醇な闇、痛み、苦悩。その苦痛にどっぷりと浸る。生きるということの痛みと旨味。
「やわらかく」
うわー。これは安易に同意しないほうがいいんだろうけど、うーん、あるよね。
そういう朝が。
「第六ポンプ」
なんか最後すごいのが入ってた。この絶望感。超「あるある、あるわー」と思える
絶望感がそこに。
別に人類全体が痴呆化してなかったとしても、はるか昔から受け継がれてきた
レガシーなシステムを前にこんな風に苦闘(社会正義みたいなものに背中を
押されてはいるけど、もうどうしようもない)してる人は今もいるはず。
開発時の設計が素晴らしかったから今も動いてはいるけど、もうコードの中身を
読み解ける奴がいなくて、当時のマニュアルに沿って対応するのが関の山、
開発会社はとっくに解散してて、当時のエンジニアも連絡がつかず……みたいな
ことってありますよねー。おええぇぇぇ。
環境ホルモンとかあんまり騒がなくなったけど、実際のところ近頃どうなんだろう。
という感じで、読書メモをいちいちつけたくなるくらいには気に入ったのだった
本物かまがい物かで言えば、本物。
いかがわしく、猥雑で、強烈な「SFらしさ」を全身にまとったまばゆさに目がくらむ。
「ポケットの中の法(ダルマ)」
ダライ・ラマの人格をダビングしたキューブにまつわる話。ゴーストを
不揮発性メモリに封入することで転生できない、ってのは新しいと思った。
しかしそのワンアイデアよりは、その物語が展開される背景にこそ目が行く。
「まもなく、成長しつつある核は、雨に濡れている瓦屋根の旧市街を飲みこむだろう。
そうしたら、生きている構造物である活建築は、成都そのものになる。」
活建築は鉱物の結晶構造状に成長していた。まず骨格がのび、それをセルロースの
皮膚がおおっていた。太くて強い基礎構造は成長し、枝分かれしていた。四川盆地の
肥沃な緑色の土壌に根が深く張っていた。土壌と太陽から栄養とミネラルを得ていた。」
いつかあの生きた巨大建築の中で暮らしたい、と思うストリートチルドレン。
そのポケットに転がり込んだダライ・ラマ。
徹頭徹尾「サイバーパンク!」という感じ。きらびやかで、汚れていて、暴力的で、
人があっという間に死ぬ世界。バイオな建築とか、うう、シロマサ!と叫びたくなる。
とにかく設定、背景世界そのものに酔える。本書の幕開けに相応しい。
「フルーテッド・ガールズ」
悪趣味な話。人体を楽器に改造されたアイドルの悲哀。
現在のアイドル業界への単純な皮肉と読めなくはない。
演奏シーンをどれだけエロエロしく想像できるか、が読み手に要求される。
映像化するときはここがキモになるだろうなーとか。
「砂と灰の人々」
うーわー。これも悪趣味だ!そして期待通りに悪くて面白い!
砂を食べても生きていける様になった人類の前に、絶滅したはずの
かつての相棒、野良犬が現れる。面白半分に世話をして……みたいな。
すぐに病気になり、怪我をして、簡単に弱ってしまう、脆い生き物を前に
人ならざる精神に「進化」しちゃってる登場人物たちの中にわずかに
芽生える「人」がましさ。それはしかし、オチを予測させる。
「まぁ、そうなるわな」、というオチ。きっついわー。でも、うーん、
動物を飼うの面倒になる時あるよね……
「パショ」
これも読み進めるうちに見えてくる「設定」(登場人物たちの独特な行動様式の
裏に見える歴史、なぜこの世界がこうなっているのか、何があったのか)に
うわー!と背筋がぞくぞくする感じ。その「世界の秘密」を知りたくて、ページを
捲る手が止まらない。とても上手い。
文明崩壊後に、その崩壊の理由(精神性に伴わない科学技術)を踏まえて、
過去の知識を管理し、精神性の成長を見つつ提供していく、ゆっくりと……
というのが果たしてうまくいくのか(その辺のソリューションはあまり
明確で無い)っていうのは気になったけど、いやー、これも傑作。「SF」を
味わったぜ。
「カロリーマン」
冒頭からぐっとくる描写、例えば
「建物はウェザーオールのチップをプレス成形したもので、酒に酔ったように
隣同士よりかかっている。雨染みだらけで日焼けしてひび割れているが、
商標どおりの耐久性は維持している」
とかにもうSF心を感じてキュンキュンしてしまう。
このディティール、この言葉遣いこそSFよ!(伝わらないのは百も承知の上)。
物語そのものはややご都合主義的でありきたりと言えるかもしれない、が、
それらは圧倒的なSF的ディティール(秘密の花園が維持できる理由とか)を
美味しく味わうための「枠組み」でしかない、という感じ。ああ!SFだ!
「タマリスク・ハンター」
小休止的な一本。水の優先利用権を抑えられた流域住民の乾き。なんか椎名誠みたい。
他のディストピア的描写と異なり、乾いていて、荒涼とした感じがいい。
「ポップ隊」
永遠の若さが手に入った時代、違法に生まれてくる赤ん坊をサーチ&デストロイ
(ポップ)してまわる話。設定の乱暴さがガン=カタっぽい。悪趣味だな、と
思うのと同時に、完璧な「若い」女性の肉体に慣れた男の目に映る「たるんだ」
母親に痛いほど感じるエロスとかすげーフェチっぽくていい。「子供」というものの
何気ない行動の愛らしさとかも、こういう世界を背景に描かれると、たまらない
ものがある。
「イエローカードマン」
サイバーパンクっぽい。ディストピア、の一言で片付けてしまうにはあまりにも
芳醇な闇、痛み、苦悩。その苦痛にどっぷりと浸る。生きるということの痛みと旨味。
「やわらかく」
うわー。これは安易に同意しないほうがいいんだろうけど、うーん、あるよね。
そういう朝が。
「第六ポンプ」
なんか最後すごいのが入ってた。この絶望感。超「あるある、あるわー」と思える
絶望感がそこに。
別に人類全体が痴呆化してなかったとしても、はるか昔から受け継がれてきた
レガシーなシステムを前にこんな風に苦闘(社会正義みたいなものに背中を
押されてはいるけど、もうどうしようもない)してる人は今もいるはず。
開発時の設計が素晴らしかったから今も動いてはいるけど、もうコードの中身を
読み解ける奴がいなくて、当時のマニュアルに沿って対応するのが関の山、
開発会社はとっくに解散してて、当時のエンジニアも連絡がつかず……みたいな
ことってありますよねー。おええぇぇぇ。
環境ホルモンとかあんまり騒がなくなったけど、実際のところ近頃どうなんだろう。
という感じで、読書メモをいちいちつけたくなるくらいには気に入ったのだった
ベスト500レビュアー
「ねじまき少女」で一世を風靡した著者の第一短編集で、それぞれ独立した短編が十篇入っている短編集。
一篇いっぺん詳述しているスペースがないので全体を総括的に読んだ感想を述べると、全てがアジア的なものと欧米的なものの折衷や混淆が作品世界に横溢している印象を受けました。このあたりは個人的にこの著者と年齢が近いの勝手に察するとでおそらく映画「ブレードランナー」やギブスンのサイバーパンク以降の未来観が反映しているのではないかと思いました。
全体的に昏めでネガティヴな感じの作品が多いように感じましたが、あまり後味の悪い感じはしないで爽快さなどはないですが、不思議と読み応えのある良質な短編集に思えたのは私だけでしょうか。それと作品舞台の近未来的イメージがやはり暗い感じでしたが、その映像的な視覚的イメージはなかなのもので、圧倒されるものもありました。私見ですが、SFの短編集としては近年稀にみる出色の出来に思えました。
この人の代表作とされる「ねじまき少女はまだ読んでないのでこれから読むのを楽しみにしています。SFに興味のない方も是非、挑戦して頂きたい傑作短編集でした。お勧め。
一篇いっぺん詳述しているスペースがないので全体を総括的に読んだ感想を述べると、全てがアジア的なものと欧米的なものの折衷や混淆が作品世界に横溢している印象を受けました。このあたりは個人的にこの著者と年齢が近いの勝手に察するとでおそらく映画「ブレードランナー」やギブスンのサイバーパンク以降の未来観が反映しているのではないかと思いました。
全体的に昏めでネガティヴな感じの作品が多いように感じましたが、あまり後味の悪い感じはしないで爽快さなどはないですが、不思議と読み応えのある良質な短編集に思えたのは私だけでしょうか。それと作品舞台の近未来的イメージがやはり暗い感じでしたが、その映像的な視覚的イメージはなかなのもので、圧倒されるものもありました。私見ですが、SFの短編集としては近年稀にみる出色の出来に思えました。
この人の代表作とされる「ねじまき少女はまだ読んでないのでこれから読むのを楽しみにしています。SFに興味のない方も是非、挑戦して頂きたい傑作短編集でした。お勧め。
2014年4月6日に日本でレビュー済み
SF的な小道具・大道具には、うならされるものがありました。
例えば「ポケットの中の法」の、有機的に成長する建物・都市の風景と、その足元で必死で暮らす貧困層…という舞台設定。
あるいは、エネルギー資源が枯渇し、遺伝子組み換え作物とそれを食べて働く遺伝子組み換えゾウがエネルギー源となった社会……。
なかなかわくわくさせられます。
しかしながら、物語的には、まあ、普通というか。
「ポケットの中の法」にしても、登場人物が奪い合いをするデータキューブに何が入っているかというと、(もちろんここには書きませんが)そのアイデアは「なるほど、クールだ!」と思えます。
でも実は、中に入ってるデータが何であっても、お話には全く関わらないのですよね。
超兵器の設計図でも、医薬品の製法でも、宇宙人との通信記録でも。
それから、基本的にディストピア風味の強い作品ばかりなのですが、現代の延長としての近未来ディストピアを扱うだけに、どうも社会派ノリが鼻についてしまうところも。
穀物メジャーによる世界支配とかー、アメリカの地下水源問題&水資源争いとかー、食品添加物の危険性とかー……。
とはいえ、「来たるべき未来」としてドキッとさせられるアイデアがたくさん詰まった作品集だとは思うので、作品概要を聞いて「面白そうだな」と思った方は読んでみると良いのではないでしょうか。
例えば「ポケットの中の法」の、有機的に成長する建物・都市の風景と、その足元で必死で暮らす貧困層…という舞台設定。
あるいは、エネルギー資源が枯渇し、遺伝子組み換え作物とそれを食べて働く遺伝子組み換えゾウがエネルギー源となった社会……。
なかなかわくわくさせられます。
しかしながら、物語的には、まあ、普通というか。
「ポケットの中の法」にしても、登場人物が奪い合いをするデータキューブに何が入っているかというと、(もちろんここには書きませんが)そのアイデアは「なるほど、クールだ!」と思えます。
でも実は、中に入ってるデータが何であっても、お話には全く関わらないのですよね。
超兵器の設計図でも、医薬品の製法でも、宇宙人との通信記録でも。
それから、基本的にディストピア風味の強い作品ばかりなのですが、現代の延長としての近未来ディストピアを扱うだけに、どうも社会派ノリが鼻についてしまうところも。
穀物メジャーによる世界支配とかー、アメリカの地下水源問題&水資源争いとかー、食品添加物の危険性とかー……。
とはいえ、「来たるべき未来」としてドキッとさせられるアイデアがたくさん詰まった作品集だとは思うので、作品概要を聞いて「面白そうだな」と思った方は読んでみると良いのではないでしょうか。
2013年3月3日に日本でレビュー済み
パオロ・バチカルビの短編集。どの作品も、人間とは何かを考えさせられた。
社会が(社会の方向性が良いとか悪いとかって、相対的だけど・・)進んだら、人間性も変わるのだろうか。
短編で描かれる世界は、環境汚染、肉体改造、圧倒的な貧富の差が容赦なく存在するディストピアである。子どもは弱く、女性は逞しく、男はバカで刹那的。
「砂と灰の人々」は不死身となった人間と、犬との関係(?)を描いた話。切ない。
「フルーテッド・ガールズ」は肉体を改造された少女の復讐劇。
「ポップ隊」は子どもを抹殺する部隊の話。寿命が延びたら、出生を制限しなくてはならない。
その他。人間の描かれ方が哀れ。
社会が(社会の方向性が良いとか悪いとかって、相対的だけど・・)進んだら、人間性も変わるのだろうか。
短編で描かれる世界は、環境汚染、肉体改造、圧倒的な貧富の差が容赦なく存在するディストピアである。子どもは弱く、女性は逞しく、男はバカで刹那的。
「砂と灰の人々」は不死身となった人間と、犬との関係(?)を描いた話。切ない。
「フルーテッド・ガールズ」は肉体を改造された少女の復讐劇。
「ポップ隊」は子どもを抹殺する部隊の話。寿命が延びたら、出生を制限しなくてはならない。
その他。人間の描かれ方が哀れ。

