楽曲の多くは1970年代の集大成「心のうた ダークダックス愛唱歌全集」(キングレコード)に収録されているものと同一曲目だが、
これは結成40周年を記念して収録された1991年発売の新録音。1970年代に比べて演奏も洗練され、録音技術も向上しているが、
70年代の佐々木行氏のソロを前面に出した歌い方から、メンバー4人のハーモニーをより重視した歌い方になっている。
当時還暦前後だったメンバーの歌唱力も円熟期を迎えていて見事なハーモニーをかもし出している。
2枚組アルバム「吟遊詩人」(廃盤)とどちらを購入するか迷い、「吟遊詩人」にこのアルバムの大半の楽曲が収録されているが、
「里の秋」だけが入っておらず、「吟遊詩人」には手持ちの「ダークダックスの叙情歌 山の歌編」の楽曲も重複して収録されていたためこちらを購入。
このダークダックスの叙情歌シリーズは全部で「童謡編」「唱歌編」「山の歌編」「水の歌編」と4枚あるので、4枚をそろえて買うことにした。
うち「水の歌編」だけはこれを書いている現在廃盤で入手が難しい。
シリーズ4枚とも歌詞カードには歌詞だけでなく、その曲が発表された年月やエピソードなどが詳しく書かれているため、資料としても重宝する。
「思いでのアルバム」は、1960年代半ばの生まれの自分の世代には知られていなかった歌であり、10歳近く下の身内に聞くと「幼稚園の定番卒園ソングだった」と皆知っている。
この曲が収録されているのを不思議に思ったが、意外にも自分の生前である昭和36年に作られた古い歌であることを知った。
なお、楽曲の「月の沙漠」は「沙」が正しい漢字であり、CDにはきちんと正しい漢字が記載されている。
長く活動して2011年に高見澤氏が亡くなり活動に終止符をうったグループだが、新しい時代の録音を聞くたびに新しい魅力がある。
グループの長い活動の歴史は急速な録音技術や演奏の進化と共に、各メンバーが歌い手として自らの可能性を模索し続けた月日の蓄積だったのだと知らされる。
人は歳を重ねると皮膚にしわを生じ、声も若い時ほどのびなくなるのかもしれないが、若い歌手が澄んだ声できれいに人生の苦しみや悲しみを歌っても心に響かない。
年齢を重ねるのも悪くない。歳をとるという行為は何かを失う代わりに別のものを得ることではないだろうか。
ダークダックスというグループの音楽に接するたびに自分はそう思わされる。還暦前後のメンバーが歌う童謡は、70年代よりもあたたかな包容力に満ちている。
唯一の不満は、収録楽曲の間にもう数秒ずつ「間」が欲しかったこと。一曲終わるごとにもう少し沈黙があって余韻に浸りたかった。