クリスティーン・ボーデン
1995年 46歳でアルツハイマー病の診断を受ける。
1996年 オーストラリア政府の首相・内閣省、第一次官補を退職。
1997年 著しい症状の回復がみられるようになる。
1998年 前頭側頭型痴呆症と再診断される。8月、本書を出版。
1999年 ポール・ブライデン氏と再婚。クリスティーン・ボーデンからブライデンとなる。
2003年 『私は誰になっていくの?─アルツハイマー病者からみた世界』日本語訳出版。市民グループの招きで来日、岡山・松江で講演。その様子がNHKクローズアップ現代などで報道され大きな話題となる。痴呆症を持って生きる本人として初めて国際アルツハイマー病協会理事となる。
2004年 10月、京都での「国際アルツハイマー病協会国際会議」に出席のために再来日、神戸・広島・東京で講演、『私は私になっていく──痴呆とダンスを』(クリエイツかもがわ)書き下ろし・日本先行発刊。
本書が非常に衝撃的なのは、認知症患者本人が記したものということではないだろうか。日本国内はもちろん世界的にみても認知症患者本人が記した著書というのは当時も今もそうはない。
だからこそ、本書に記されていること一つひとつが貴重であり、その価値は、出版から20年以上経った現在でも変わらないのではないでしょうか。
むしろ、高齢化が異常な速度で進行しているわが国こそ、あらためて認知症患者本人が記した著書である『私は誰になっていくの?』を読み直す必要があると私は思います。
日本でも最近、高齢者ドライバーの問題が騒がれておりますが、本書にもそのことが認知症患者本人の言葉として記録されています。本書からそのまま引用いたします。
「1996年中ごろ、運転しようと車に乗ると、困ったことが起こり始めた。どのペダルが何なのか、足をどこへ置けばよいのか、思い出せなかったのだ。」(106頁)
これが、認知症患者に起こっていることである。
認知症の高齢者ドライバーによる事故でも同じようなことが起こっているはずだ。日常的にこのようなことが起こっている中で運転を続けていればどうなるかは自ずから明らかだろう。
また、本書が特徴的なのは認知症患者本人がその経過を詳細に本人自身が記録しているということである。
だからこそ、どのように認知症が進行していくのか、そして本人がどのように感じているのかを本人自身の言葉で知ることが出来るのだ。
本書を読む意義は、まさにそこにこそあるのではないだろうか。
認知症患者のケアに携わるものも家族に認知症患者がいる方もあらためて本書に目を通すことで認知症患者本人の言葉を聞くことが出来るのだ。本書を通して認知症患者に必要なこととは何かをあらためて考え直す必要があるのではないだろうか。
本書で、著者は「信仰にすがることができて本当によかった。それがなくては、どうしてやっていけるだろう?」(116頁)と書いています。他にも、クリスチャンとしての信仰の深さがみてとれる箇所が随所にあります。
同時に著者は、認知症になっても最後まで「魂」はなくならないということを述べています。
著者にとってはクリスチャンとしての信仰が最後まで魂を確立する術になっているわけです。
しかし、クリスチャンではない多くの日本人はどのようにすれば著者のようになれるのか?
というのは普通に読んでいて感じる疑問のひとつでした。本書では、それについての回答も出ております。
「精神性とは宗教に限らない」(220頁)とはっきり語られています。日本人も宗教に変わる心の平和につながる何かを見つけることが大切なのではないでしょうか。
あるいは、ケアする立場にある者はそれを提供していくことが認知症ケアにおいてもっとも求められていることではないかと強く感じました。
最後に、ひとつだけ記しておくとアルツハイマー病と前頭側頭型認知症とは異なっているということを明記しておきたいと思います。認知症ケアにおいてもアルツハイマー病と前頭側頭型認知症とではケアの方法は当然変わってきます。
本書を通して私を含めたひとりでも多くの方が認知症についての理解を深めることが出来れば幸いです。
(2019.12.9記)
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