ヒトラーによって、第二次世界大戦で、400万人ものユダヤ人がアウシュビッツなどの絶滅収容所で殺された。戦争中,ナチスに処刑されたユダヤ人の総数はおよそ 570万人と推計されている。
本書は、絶滅収容所に送られた中から、選別されたユダヤ人が、同胞の遺体処理をする特殊任務部隊に配属された過酷な実態が、生き残ったシュロモ・ヴェネツィアへのインタビューで明らかにされている。
本書の巻末には、「歴史のノート」の章で、アウシュビッツ専門の歴史家マルチェッロ・ペゼッティが、アウシュビッツが作られるまでの経緯を紹介している。ナチスは当初ユダヤ人の殲滅を目的に、征服した村や町,都市のユダヤ人を射殺し,近くの共同墓地に埋め、また,犠牲者を密閉したトラックなどに押し込め,排気ガスを荷台に引き込み,共同墓地に向かう途中で死にいたらしめるという方法をとっていたが、あまりにも効率が悪いために,人里離れた「絶滅収容所」で殺人と火葬を行なうという計画たて、1942年「ユダヤ人問題の最終的解決」として,ヨーロッパの占領地全体からユダヤ人を東部の収容所に組織的に移送し,「しかるべき扱い」に処するという決定をする。
「しかるべき扱い」とは、大量処刑であり、特別に建設されたガス室に消毒のためと称してシャワー室だと偽装し、移送されてきた大量のユダヤ人を押し込め殺人ガスで死に至らしめ,ガス室から運び出された遺体は隣接する火葬場で火葬し、遺骨を粉砕し、近くの川に流すというもの。
この処理をしたのが特殊任務部隊であり、シュロモがインタビューでその詳細を包み隠さず語っている。特殊任務を行っていたときの心のありようも語られながら、遺体の様子、処理される様は読み進めることも辛くなる。また、特殊任務部隊が反乱を企てるが、その顛末も証言されている。貴重な歴史的な記録だ。
「シュロモの声は、すべての強制収容者の声と同じように、いつかは消えるでしょう。忘れることなく、シュロモの声を永遠に響くようにするのは、これからは若い世代の責任です」本書の序文に寄せられたショアー記念財団会長のシモーヌ・ヴェイユのことばは重い。
私はガス室の「特殊任務」をしていた (河出文庫) (日本語) 文庫 – 2018/4/5
シュロモ・ヴェネツィア
(著),
鳥取絹子
(翻訳)
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本の長さ296ページ
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言語日本語
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出版社河出書房新社
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発売日2018/4/5
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ISBN-10430946470X
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ISBN-13978-4309464701
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
アウシュヴィッツ収容所で殺されたユダヤ人同胞たちをガス室から搬出し、焼却棟でその遺体を焼く仕事を強制された特殊任務部隊があった。奇跡的に収容所を逃れて生き残った著者が、その目で見た悪夢の惨劇を克明に語る衝撃の体験談。図版多数掲載。
著者について
シュロモ・ヴェネツィア
1923年、ギリシャのテッサロニキ生まれのイタリア系ユダヤ人。21歳のときにアウシュヴィッツ=ビルケナウに強制収容され、特殊任務部隊で同胞の遺体処理という地獄の体験をする。本来なら収容所解放前に抹殺される運命だったが、奇跡的に逃れて生き延びた数少ない生存者のひとり。1992年からこの惨劇を広く伝えるために講演活動を始め、現地へも研究者や政治家などとともに50回近く訪れている。
1923年、ギリシャのテッサロニキ生まれのイタリア系ユダヤ人。21歳のときにアウシュヴィッツ=ビルケナウに強制収容され、特殊任務部隊で同胞の遺体処理という地獄の体験をする。本来なら収容所解放前に抹殺される運命だったが、奇跡的に逃れて生き延びた数少ない生存者のひとり。1992年からこの惨劇を広く伝えるために講演活動を始め、現地へも研究者や政治家などとともに50回近く訪れている。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ヴェネツィア,シュロモ
1923‐2012年。ギリシャ生まれのイタリア系ユダヤ人。21歳でアウシュヴィッツに強制収容され、特殊任務部隊で同胞ユダヤ人の遺体処理という地獄の体験をする。奇跡的に逃れ、のちに各地での講演活動と50回の現地訪問を行う
鳥取/絹子
フランス語翻訳家、ジャーナリスト。お茶の水女子大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1923‐2012年。ギリシャ生まれのイタリア系ユダヤ人。21歳でアウシュヴィッツに強制収容され、特殊任務部隊で同胞ユダヤ人の遺体処理という地獄の体験をする。奇跡的に逃れ、のちに各地での講演活動と50回の現地訪問を行う
鳥取/絹子
フランス語翻訳家、ジャーナリスト。お茶の水女子大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2018/4/5)
- 発売日 : 2018/4/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 296ページ
- ISBN-10 : 430946470X
- ISBN-13 : 978-4309464701
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2019年2月17日に日本でレビュー済み
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2021年3月18日に日本でレビュー済み
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自分は実際にアウシュビッツに行ったことがある。ツアーではなく一人で行き二日間時間制限もなく見て回った。
行く前に読めばもっと良かっただろうが、読んであの光景を思い出して深みが増した。あの焼却炉か....。そう思いながら読んだ。数ある本の中でも広く多くの人に現実として読んで欲しい。
また、Amazonプライムビデオでアウシュビッツ ナチスとホロコースト(字幕版)もオススメしたい。エピソード1~6まであるのでこの本のことがさらに分かり話がつながる。
行く前に読めばもっと良かっただろうが、読んであの光景を思い出して深みが増した。あの焼却炉か....。そう思いながら読んだ。数ある本の中でも広く多くの人に現実として読んで欲しい。
また、Amazonプライムビデオでアウシュビッツ ナチスとホロコースト(字幕版)もオススメしたい。エピソード1~6まであるのでこの本のことがさらに分かり話がつながる。
ベスト500レビュアー
アウシュビッツのガス室でユダヤ人の死体を処理していた著者の体験を綴ったインタビュー形式の体験録。
著者はギリシャ系ユダヤ人でギリシャのテッサロニキに住んでいた。
戦争が始まり、イタリア軍が攻め込んできて町は占領されてしまう。
著者は父親を幼くして失ったため、家計を支えるために働かねばならず苦労していた。
やがてユダヤ人への迫害が開始され、ドイツ軍に町は占領されてしまう。
ユダヤ人の一斉検挙が始まって一家は強制収容所へ送られてしまう。
お母さんと二人の妹は到着するなりいきなり選別でガス室送りになった。
著者やお兄さんや従兄弟は何とか選別を免れたものの、ガス室での遺体処理の仕事に回される。
ガス室で殺された犠牲者の死体から金目のものを抜いて焼却する。
誰もやりたがらない「汚れ仕事」をナチスは同じユダヤ人の囚人にやらせた。
特殊任務に従事する囚人たちはその代償として他の囚人よりも食料が多く得られ、それなりの環境と自由も与えられていた。けれど、それは所詮ナチス将校の気まぐれでいつ口封じの為の処刑があるかもしれないという期限付きのものだったのだ。
ガス室はチクロンBを投げ入れた後に毎回毎回換気をしないと遺体を処理する囚人たちも中には入れなかった。
その作業は著者によると「扇風機を回すことで換気していた」とのことだが、それで毒ガスが四散してすぐに作業に入れたとは信じ難い。将校や処理する側の囚人がガスで犠牲にならなかったのだろうか?
特殊任務に従事する囚人たちは皆「生き延びるために感情をなくしたロボット」と化して黙々と作業をこなしていた模様。それしか選択の余地はないという時、感情を持っていたら生き延びれなかったのだろう。
著者はギリシャ系ユダヤ人でギリシャのテッサロニキに住んでいた。
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著者は父親を幼くして失ったため、家計を支えるために働かねばならず苦労していた。
やがてユダヤ人への迫害が開始され、ドイツ軍に町は占領されてしまう。
ユダヤ人の一斉検挙が始まって一家は強制収容所へ送られてしまう。
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特殊任務に従事する囚人たちはその代償として他の囚人よりも食料が多く得られ、それなりの環境と自由も与えられていた。けれど、それは所詮ナチス将校の気まぐれでいつ口封じの為の処刑があるかもしれないという期限付きのものだったのだ。
ガス室はチクロンBを投げ入れた後に毎回毎回換気をしないと遺体を処理する囚人たちも中には入れなかった。
その作業は著者によると「扇風機を回すことで換気していた」とのことだが、それで毒ガスが四散してすぐに作業に入れたとは信じ難い。将校や処理する側の囚人がガスで犠牲にならなかったのだろうか?
特殊任務に従事する囚人たちは皆「生き延びるために感情をなくしたロボット」と化して黙々と作業をこなしていた模様。それしか選択の余地はないという時、感情を持っていたら生き延びれなかったのだろう。
2020年5月30日に日本でレビュー済み
映画『サウルの息子』と同じく、強制収容所内の囚人によって組織された特殊任務部隊(ゾンダーコマンド)を扱っており、こちらは主に特殊任務部隊の生存者であるシュロモ・ヴェネツィア氏へのインタビューにより構成されています。
インタビューではヴェネツィア氏の生い立ちから終戦による解放までの氏の半生が語られます。
自身にとって都合の悪い出来事も避けずに語るヴェネツィア氏の証言は、極限状態での人間がどのようなものか多くを伝えてくれます。
なかでも重点的に述べられるのはやはり焼却棟、ガス室で強制された労働に関するものです。人間の尊厳をこれ以上ないほどに踏みにじる、強制収容所での悲惨な凶行の数々が語られます。
ガス室で繰り返される10分間の阿鼻叫喚、処刑された遺体の様子、労働を放棄してしまった部隊員がSSに撃たれても倒れずにいた光景、ガス室から生存した赤ん坊、脱走して捕らえられ見せしめにされた仲間、解剖実験後にひきずられる内臓、衝撃的な情景が氏の口から克明に描写されています。
本書内には同じくゾンダーコマンドの生き残りであるダヴィッド・オレールの手による、収容所における数々の残虐なシーンを描いた絵画が随所に配されています。
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なかでも重点的に述べられるのはやはり焼却棟、ガス室で強制された労働に関するものです。人間の尊厳をこれ以上ないほどに踏みにじる、強制収容所での悲惨な凶行の数々が語られます。
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本書内には同じくゾンダーコマンドの生き残りであるダヴィッド・オレールの手による、収容所における数々の残虐なシーンを描いた絵画が随所に配されています。