カンニング竹山氏は以前、営業で2回ほど福島に行ったときは、どこでやったのか記憶すらないほどだったが、ここ数年の間に何度か福島に通ううちに、飯は安くて旨いし、酒も旨く、大好きな温泉はたくさんあるし、出会う人たちは皆親切で、すっかり福島の魅力にハマってしまい、今では年に3~4回は通うほどだという。
きっかけは、1991年3月11日の東日本大震災だった。震災から1、2ヶ月後に行ったときは、悲惨な光景にただただ圧倒されるばかりだった。「何かやらなきゃ」という気になったが、「自分にできることは何だろう」と考えたときに、押し付けがましくないのがいいと思い、観光して福島の魅力を継続して発信していこうと決めたという。
そんな感じで始めた「日帰りぶらり旅」だが、一つ決めているのは嘘をつかないということ。つまらないところは「つまらない」、旨くないものは「旨くない」と正直に言う。また、一般の人が素通りするようなつまらなそうな施設も訪れた。「行ってみて何か探す」ことが旅であり、そうこうするうちに素敵な温泉とかラーメン屋に巡り合って、行くたびに福島が好きになっていったという。
大震災の1年後の2012年2月、福島の露天風呂があまりによかったため、ツイッターで紹介し、更に近くのス-パーで野菜を買ったことを報告したところ、大炎上が起きた。批判文はどれも、真実など何もないただのバッシングだった。
ツイッターで叩かれた反発もあり、このころを境に、より頻繁に通うようになった。自分で足を運んで、目で見て耳で聞いて体感したありのままの福島の”いま”を伝える。こと原発に関しては賛成、反対の感情を抜きにした現実を伝えようと、気持ちが変わったという。
とはいえ、色んな意味で「福島は大丈夫」と思えるようになったのは、震災から3年経った2014年の春ごろだった。このころから野菜を買ったとつぶやいても、そんなに批判されなくなった。福島の食べ物は一袋ごとに放射線量を検査しているから、むしろどの産地よりも安心と言える。福島駅周辺は、どこの街でも見かけるごく普通の日常といった印象である。地元の人の中にも「被災地、被災者と言ってくれるな」「俺たちは普通なんだ」「支援だとか”福島の為に”とか、もうやめてくれ」と言っている人もたくさんいる。
2016年の5月に福島第一原発内に入ったが、印象がガラリと変わった。防護服も全面マスクも必要なく、ポケット線量計を持って、ヘルメットをかぶり、普段着の上に立ち入り証を入れるベストを着るだけだった。作業員も、防塵マスクに普通の作業服のみ。除染と自然減の結果である。
農家の青年たちとも親しくなり、彼らの話をもっと聞いてみたいと思ったことも、福島に通うようになった理由のひとつだった。震災の前は同業者ばかりが集まって、同じような話をするだけだったが、震災が起きてからは、異業種が一緒になって「何かやろう」「福島の食材をアピールしよう」という感じになったという。風評とかで物が売れなくなって、取引先には手のひら返しをされて、「じゃ、自分らでなんかやってやる」と、インターネット販売を始めたり、地元の料理屋で地産地消のメニューを出して評判を呼んだりなど、「震災があったから変われた」というのもあったという。
そして竹山氏は、風評被害を起こす報道に対して怒りの声を上げる。
福島のことを「フクシマ」と言うのが一番イヤだ。原発うんぬん言っても福島の90%以上の地域はそうじゃない。なんの根拠もない話をさもありそうな顔で大真面目に語る連中や、デマを鵜呑みにする自分勝手な奴ら、福島で何かやるたびにヒステリックに噛みついてくる連中、悲劇ばかりを煽り立てるメディアの姿勢に憤りを感じる。
彼らの理論で言えば、当時原発の周りで働いていた人や福島の野菜をバクバク食べていた竹山氏などは、とうに死んでなきゃいけない、もしくは色んな病気が発症していなければいけない。だが、その人たちが思っていた通りにはなっていない。日本はダメになどなっていない。ラグビーのW杯はある。東京五輪もある。福島の子供たちは野原を走り回っているし、若者はナンパもしている。他の街と同じことをしている。機会があればぜひ見に来て下さいと述べている。
追記:この書と直接の関係はないが、甲状腺がんについて述べてみたい。
甲状腺がんは、罹った人の多くが気づかずに天寿を全うしてしまうくらい悪影響のないがんであり、甲状腺がんに罹っている自覚がないまま、普通に暮らしている。なので、ほとんどの日本人は死ぬまでに一度も甲状腺がんの検査を受けることはない。
福島の被ばく量はチェルノブイリとは比較にならないほど低く、甲状腺がんを引き起こすレベルに至っていないのに、福島の子供に甲状腺がんが多発しているのは、多くの子供たちが潜在的に持つ悪影響のない小さな甲状腺がんを超音波検査で見つけてしまっているせいとしか考えられないという。精度の高い超音波によるスクリーニング検査で、本来は診断や治療の必要のない甲状腺がんを多数発見してしまっているのである。
「若年型甲状腺がんは早期診断・早期治療してはいけないがんなのです」と甲状腺の専門家は指摘する。手術の必要のない若年者の甲状腺がんを手術した場合、手術の合併症で声がかすれたり、血中のカルシウムや甲状腺ホルモンが低下するといった悪影響が生じる。
また甲状腺がんは頸部リンパ節へ転移しても、ほとんどが途中で成長を止め、一生問題なく終わるという。「25年以上診察していますが、未成年で受診された患者で死亡した人は誰もいません」と専門家は言う。
2014年頃から早期診断・早期治療の弊害が広く認識されるようになり、超音波検査は推奨できないということは、甲状腺の専門家の間では国際的なコンセンサスになっているという。
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