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福岡伸一、西田哲学を読む――生命をめぐる思索の旅 動的平衡と絶対矛盾的自己同一 (日本語) 単行本 – 2017/7/7

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商品の説明

メディア掲載レビューほか

生命科学と哲学

意味不明の図形に1本の線を引くことで、隠れていたものが浮かび上がってくる。福岡伸一と池田善昭の共著『福岡伸一、西田哲学を読む』は、そんな知的興奮を味わえる本だ。『生物と無生物のあいだ』で知られる生物学者と哲学者の対談である。

西田幾多郎といえば、西洋の翻案ではないオリジナルな哲学をつくり出したことで知られる。とくに「絶対矛盾的自己同一」は、ヘーゲル流の弁証法とは違う概念として評価されてきた。

だが、これが難解だ。なんだかよくわからない。宗教の呪文のような意味不明のもの、と批判する人もいる。ところが、福岡が唱える生命観「動的平衡」と照らし合わせると、両者は驚くほど似ていることがわかる。

生物は変わらないように見えて、細胞レベル、分子レベルでは常に入れ替わっている、というのが動的平衡。絶えず変化しているが、平衡を保っているので止まって見える。鴨長明が観察した川の流れのように。

生物の内部では、分解と合成を同時に進行している。外部から食べ物を取り込んで分解し、タンパク質を合成する。肝心なのは「作る」ことよりもむしろ「壊す」こと。壊すことによって作っている。この生命のメカニズムが、「絶対矛盾的自己同一」とそっくりだというのである。なるほど、そういうことだったんだ。

福岡の生命科学をとおして西田哲学を見ることで「絶対矛盾的自己同一」が理解でき、西田哲学によって福岡生命科学を読むことで「動的平衡」がより深くわかる。一挙両得というか、なんだかすごくトクした気分だ。暑さも吹き飛ぶ面白さである。

評者:永江朗

(週刊朝日 掲載)

出版社からのコメント

西田哲学と福岡生命科学――一見すると両者は遠い存在のように思われるかもしれませんが、実は直接の接点があります。2013年1月放送のNHK・Eテレ「日本人は何を考えてきたのか:近代を超えて~西田幾多郎と京都学派~」で、福岡先生はナビゲーターとして西田幾多郎の足跡を辿り、その哲学にも触れています。番組の中で先生が「動的平衡と西田哲学には響き合うものがある」とコメントされていたことがこの本の出発点です(先生は広い意味での「京都学派」の生物学者です)。一方、上記番組の放送より前に、西田哲学の正統的継承者である池田善昭先生は、福岡先生の生命観と西田哲学のそれとに通底するものを感じておられました。「統合学」の研究仲間でもあった2人が西田哲学と福岡生命科学を題材に、約1年半にわたって、生命とは何かという問題をめぐって真摯に、かつ真剣に対話した、その記録が本書です。

福岡先生によれば、対談の前までは「西田をまともに読んだことはなかった」とのことで、難解で知られる西田哲学ですから、対話は必ずしもスラスラとは進みません。先生は所々で足を止め、汗をかき、躓いてもいます(読者のためにあえて躓いてみせてくださったのかもしれません)。読者の方は、福岡先生と一緒に考えながら読み進める気分が味わえると思います。福岡先生が一歩一歩着実に歩みを進めるように西田哲学に向かうその姿勢はとても感動的で、一方、池田先生が言葉を探して、言葉を尽くして懸命に説明される姿にも強く胸を打たれます。

対談では、まず、西田哲学が全体として何を目指した学問だったのかという見取り図を描きます(第1章)。次に、それに沿って西田の難解な術語群を丁寧に解きほぐします(第2~3章)。そして準備が整ったところで、福岡先生が実際に西田の論文を読み解いていきます(第4章)。そこでは、西田哲学と福岡生命科学が見事なまでに響き合っていることが次々に明らかになるのですが(福岡先生の訳文も収録)、対談はただ両者を重ね合わせただけでは終わらず、第5章ではそこから「時間とは何か」という大命題に挑み、西田哲学を経由することで生命の定義に関して「1つの到達点」に行き着く過程が描かれます(この考察は理論編に引き継がれます)。西田哲学はそれ自体が統合学と呼べる学問でもありました。第6章ではその現代的意義について議論が展開されます。知が分断されているように見える今、西洋科学・哲学の限界を超克する可能性をもつ学としての側面に光を当てて対談の幕は閉じられます。

書き下ろしや往復メールの一部も加わった実に贅沢な内容で、西田哲学、池田哲学、福岡動的平衡論の格好の入門書となっているだけでなく、生命や自然について思考を深められる一冊です。生命のすばらしさ、尊さ、かけがえなさとともに学問の楽しさ(や厳しさ)をきっと感じていただけるものと思います。

本書が伝えたいメッセージの一つ、「大切なことは隠されている」――その大切なことを探しに、ぜひ本書を開いてみてください。

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